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「ね?山根歩美さん?」
彼は歩美の方を睨みつけたようにして言った。
「先ほど君の近くにいた男の子、景音は、サジェスの仲間なのですが、もう一人、サジェスのメンバーなのが、秋原雪。彼女のコードネームと職業は明らかになっていないが、裏の世界に行った今も、ブラックスノーという異名で呼ばれているというのは聞いたな」
「敬語とタメ口が混ざって気持ち悪い。一体何が言いたいのか、はっきりしてくれない?」
「CIAでのコードネームがブラックスノーだったんです。サジェスでの新たなコードネームはまだ明らかになっていないが、我々は、先ほどその女と協力関係にあったんだ。しかし、サジェスに加入している者は、全員ラトレイアーに狙われているのだ。そんな奴と協力関係になるなんて、俺たちにとっても危険なんだ。だから、探偵であるお前らに協力してもらおうと思ったんだよ」
彼はゆっくり眼鏡をかけなおすと、彼は静かに口を開いた。
「協力、してくれるか?」
彼は歩美の方へ手を伸ばした。
歩美は一つ大きなため息を吐くと、言った。
「分かったよ。ただし、交換条件がある」
「何?」
歩美がそう言うと、彼は伸ばした手を下した。
歩美は人差し指を立てると言った。
「ラトレイアーについて、捜査はする。けど、今ある情報だけじゃ、足りない。だから、CIAが調べて、分かった情報を私達にくれるなら協力する」
歩美は秀人の方に手を伸ばした。
秀人はその手を長い間見つめた後、こらえきれなくなったように小さく笑った。
「あ~ハイハイ。なるほどね。じゃあ良いよ。俺は君たちに協力してもらわなくても大丈夫だ」
「え」
彼はそのまま、三人の横を通った。
「それじゃ」
彼は小さく手を振った。
CIAの本部。
「なあ、ブラックスノーの話、聞いたかよ。今サジェスの仲間らしいじゃん。大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけねえだろ。てか、そんな事より、早く爆弾解除しようぜ」
「解除するって言っても、こんな小さいの解除なんて、難しすぎるだろ。ああ、夏畑先輩がいればな~」
「拳銃で殺されたんだろ?だいぶ惨いよな……」
そんな会話を小耳に挟んだ。
雪は自分のヘアゴムを撫でた。
「ッチ……手間かけさせやがって。また貧血で倒れたのかよ……」
長い廊下の端の階段に、景音は寝かせられていた。
カチ……カチ……。
雪の耳には、不吉な会話とともに妙な音が聞こえてきた。
「爆弾‼どこにある?」
景音の身体を起こすと、すぐに廊下へ出た。
「まさか、あそこか?」
廊下の向こうにはさっき会話していた二人だった。
2人はペンチか、はさみのようなものを持っており、おそらく、技術室から拝借してきたものだろう。
「おい‼お前ら‼」
雪が叫ぶと、二人は雪の方を見た。
「秋原先輩‼」
雪が二人に聞く。
「あと何秒⁉」
「え⁉」
雪が爆弾に目を凝らすと、さっきまで青かったライトが黄色に変わって点滅している。
「二人とも、爆弾から離れろ‼」
雪は廊下を走って二人の方へ向かい、二人を横に押した。
「ううっ……」
とんでもない爆発音が後ろから聞こえてきたと同時に、背中が熱く感じた。我に返り、ジャケットを見ると焦げていて、元から黒かったジャケットは茶色く変色していた。
首に巻いていた青いリボンも先が茶色く焦げていた。
「せ、先輩……」
「大丈夫か?二人とも」
「は、はい」
爆弾が二つとも爆発したようだ。
しかし、見つかった爆弾は五つ。残り三つも残っている。
「残りの爆弾は?」
「残りは中で発見されたので、すぐに解除しています」
「それはよかった。保健室で手当てしてもらえ」
雪はそう言って向きを変えた。廊下の端にいる景音を背負うと、階段の前に立った。
景音の身体は軽かった。
「ほんと、しっかりしろよ」
雪は自分の影に向かって吐き捨てた。
背負ったまま階段を下りていると、耳元で声が聞こえた。
「よくやったブラックスノー」
驚いて振り返ると、階段の上には、秀斗が居た。
「チッ……」
「雪ちゃん‼」
舌打ちをした途端、声が聞こえてきた。階段の下を見ると、歩美が立っていた。
「景音くん、雪ちゃん。無事だった?」
「危なかったよ。爆弾がまだ残ってて、解除する前に爆発したけど。さ、早く帰って保健室で手当てしてもらおう」
「秋原。話がある」
松村にそう言われ、雪は顔を上げた。
「妃について、詳細を教えてくれないか?」
「……帰って、マスターのところで一緒に飲もう。今日の任務達成祝いにな。もちろん景音も」
雪は背中にいる景音を見て言った。
「私達も帰ろう」
「そうだね」
紗季がそう言うと、歩美は笑顔で答えた。
窓の外には六羽の鴉が飛んでいた。
カランカラン。
ドアの開く音が聞こえてきた。
「いらっしゃいま……」
マスターがそう言おうとした時、目を見開いた。
「秋原、お前どうした?」
「ああ、ちょっと怪我しただけだ」
「妃は?」
「私もちょっと、いろいろあって」
マスターは二人を見て目を丸くしていたが、冴香の隣にいた松村を見て言った。
「お前は、なんで来たんだ?」
「マスター。シンガポールスリングと、アメール・ピコン・ハイボール」
「また、珍しいものを」
マスターは文句を言いながら冷蔵庫の中から取り出した。
薄暗い店の時計の針はてっぺんを短い方が7を指していた。