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「よし、じゃあ寝るか。」
寝支度を全て済ませて、
俺はベッドへ向かう。
シューも、敷布団に向かっているだろう。
いつも通り。
いつも通り、ベッドにダイブ仕掛けたその時、
腕を掴まれた。
いつも通りじゃない。
動けないくらいには強いけど、
振り切ろうと思えば振り切れるような幼馴染の手が、俺の腕を行かせまいと掴んでいた。
「ねぇ、レン。」
「どうした?」
「1個、お願いがあって…」
「おん。」
「きょ、今日はさ、一緒に寝てくれん…?」
「え?」
シューがそんな可愛らしいお願いをしてきたのは、
初めてだった。
少し、少しだけ、俺の気持ちが緩んでしまいそうになった。
「さ、最近さ、ずっと怖い夢見てて、」
「そういう事か。いいけど、狭いかもよ。」
「そ、それは…大丈夫、だと思う…」
彼女はあからさまに顔を赤くしていた。
だから、俺はなんとなく余裕なフリをしていた。
本当は、俺も凄い緊張してたけど。
いくら幼馴染とはいえ、
いくらイケメンとはいえ、
シューは女性だ。
小さかった頃のあのシューは、
もう居ない。
「おやすみ。」
「うん。」
いつぶりだろう。
こうやってシューと肩を並べて寝たのは。
お互いに背中を見せて寝ているものの、
やっぱり気まずい。
「あのさ、」
「ん?」
突然、彼女が口を開けた。
「恋って、なんだろう。」
「シュー恋バナ好きすぎなw」
「好きじゃないし」
顔を見なくても、
あのムッとした表情が思い浮かんだ。
「私、昼間告られた。」
「まじ?」
この報告は、初めてじゃなかった。
中学の1年の夏、2年の春あたりでも、
シューは告られていたから。
「え、もしかして丸木?」
「うん。」
「やっぱりかぁwで、返事は?」
「待ってもらってる。」
「え。じゃあどっちにするん。」
「…まだ、考え中。」
「珍しいじゃん。
いつも無理って言ってすぐ断ってたくせに。」
どうして、断らないんだろうって思った。
「レン的には、その、どうしたらいいと思う?」
「え、俺?自分で決めなよ。」
本当は、断って欲しいけど。
だって俺だけのシューが取られるのは御免だ。
「レンは、私に恋人作って欲しい?」
「俺は…」
「うん。」
「別に、作って欲しいとは思わないけど…」
「じゃあ、作って欲しくないんだw」
「うるさい。自分で決めろ。」
「んふw」
シューには、どうしても本音を言ってしまう。
昔からある俺の悪い癖だ。
「じゃあ、明日断ろ。」
「そうか。」
最大限素っ気なく返した。
「嬉しいくせにw」
「うるさい。」
「レンはさ、裏切られるのが怖いんだよね。」
「急にどうした?w怖くないけど。」
「嘘つき。本当は、震えるくらい怖い癖に。」
うん、君の言う通り、怖いよ。本当はすごく。
人間の弱さを知っているから、怖い。
「だから、恋しないんだよね。」
「そういうシューこそ、なんで恋しないんだ?」
「…してるよ。」