渇望

阿部の楽屋へ行き、阿部の横で眠る渡辺。

静かにしようと、楽屋には阿部と渡辺だけだ。

阿部が小さな声で言う。

阿部ー悩んでる？

渡辺ーん。

阿部ー解決できそう？

渡辺ー分からん。

阿部ー暗い翔太なんか似合わないよ。

渡辺ー仕方ない。

阿部ー翔太達2人共よく似てるな。

渡辺ー2人？

阿部ーめめも俺のとこに来るよ。

渡辺ー・・。

阿部ー喧嘩した？

渡辺ーしてない。

阿部ーめめは黙って泣くんだ。

渡辺ー・・。

阿部ー楽屋じゃないよ、家に来るんだ。

渡辺ー重症だな。

阿部ーそんなに頻繁に来ないけどね。

渡辺ーごめんね。

阿部ー翔太が動けば事は回るの？

渡辺ーそうだけど、簡単じゃない。

阿部ーもしかして、告白でもされた？

渡辺ー・・。

阿部ーめめが寝てて泣きながら翔太の名前呼んだからさ。

渡辺ーおかしいだろ？

阿部ーまぁ普通はね。

渡辺ー俺は普通だぞ。

阿部ーめめも普通だと思うよ。

渡辺ーおかしいだろ、そんなの。

阿部ー翔太、寂しいだろう？

渡辺ー・・。

渡辺は眠ってしまった。

阿部は優しく渡辺の背中を撫でている。

2人がおかしいと感じた人間がもう1人いる。

向井だ。

楽屋でよく写真を撮っているが、渡辺と目黒の2人がなんかおかしい。

あれほど2人共仲良く笑ってたのに最近はろくに話もしない。

個々に楽しそうではあるが、2人一緒というのがない。

首を傾げる向井。

だが、向井は2人に聞こうとはしなかった。

大人だし、事情が分かっても自分には解決できそうにない。

ただ、寂しいと思う。

渡辺は阿部との話を思い出していた。

目黒が泣いてる。

こんな風になっても、2人はする事が一緒だった。

阿部に頼るなんて。

優しい阿部のそばに居たい。

2人共そう思ってたなんて。

でも、どうする？

自分にはそういう恋愛は無理だと思う。

もう一度、目黒にちゃんと言おうか。

毎日届くLINEに返信しようか。

明日は撮影が休み。

飲めないビールを買って来た。

こういう日は早く寝るに限る。

渡辺は半分以上捨てて寝ることにした。

ラウーめめ、ご飯出来たよ。

目黒ーん、ありがと。

ラウーねぇ、もう諦めたら？

目黒ーその話はしない。

ラウー俺がこんなに好きなのに。

目黒ーそれ以上言うと、もう家に入れない。

ラウーごめんなさい。

ラウールと目黒もどこかギクシャクしている。

目黒が渡辺を思っているのが、ラウールには気に入らない。

自分は一度，振られているが諦めない。

これがラウールの若さだろう。

ラウーモデルの仕事来ないかなぁ。

目黒ー来たらいいな。

ラウーそしたら、また見に来てくれる？

目黒ーん、行く。

ラウーやったー！

目黒ーホントに仕事が来ればいいな。

ラウーうん。

目黒が明日も撮影だから、早めに帰ってきた。

ラウールはマネージャーにモデルの仕事をさせて欲しいと伝える。

マネージャーも声をかけてみますとのことだった。