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「萩原さーさっきの最後のとこ意味わかんなかったんだけどさー教えてくんないかな」
移動授業から戻る途中、萩原にせがんだ。
「時間があれば」
「またそれかよ、普通に教えてくれればいいじゃねーか、よっ、おおっ」
角を曲がった時、萩原が誰かとぶつかった。酒井だ。
「大丈夫か萩原、酒井も」
二人とも何も言わずに、何もなかったかのようにそのまますれ違おうとした。
「あっ、なんか踏んだかも今」
近くを通った生徒が、酒井が落としたパスケースを踏んだようだった。
「おい」
それを拾った萩原は酒井を呼び止めて、パスケースの汚れを払って酒井に渡した。
酒井はまた何も言わず受け取ってポケットにしまい、去っていこうとした。
「おい酒井、それは無いだろ」
私がそう言うと、酒井は小さい声で「あざっす」と言った。
「感じ悪っ」
「萩原さ、酒井のことなんか思わないの」
「別に」
「いろいろ言われてんのに?」
「俺が嫌悪したところで何も生まれないだろ」
私は、自分に理不尽なことを言ってくる人に、さっき萩原がしたようなことができるだろうか。
汚れを払うどころか、拾いもしないと思う。
萩原はすごいよ。