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戦争がつい先程終わった。
どの国と戦っても、多少は苦戦するのだが、今回はそれは最初だけだった。
長距離部隊は兎も角として、短距離部隊、中距離部隊は血みどろ。会議をする前に、綺麗にさせた。
今回集まったのは、総統・書記長・各部隊の隊長・外交官・軍医・司令官・情報班・暗殺部隊。
まぁ、要するに幹部達と暗殺部隊の隊長が集まっている。
「隻(セキ)が言っていたものと、何か違うよねぇ」
輝(ヒカリ)がそう言った。他の者も納得していて、「そうだよな」なんて呟いている人もいた。
別に、セキの事を疑っているわけではない。そう、ただ単純に不思議なだけだ。決して、疑ってない。
セキの話には、武器は沢山揃っており、訓練もこの国に劣らないくらい厳しいと。
一番不思議に思っているのは、この国に劣らないほど厳しい訓練なのにも関わらず、弱すぎた点だ。
武器は兎も角、厳しい訓練なのならば兵士達は強いはず。最初は強かったのに段々弱くなっていく為、体力がなくなっているからかとも考えてみた。だが、厳しいなら体力も自然につくはずだから、その考えは除外した。
その他もいろいろと考えてはみたものの、決定点は全くなかった。考えても、「でも…」なんて出てくるもんだから、出ないのは当たり前と言っても過言ではない。
頭のいい幹部達がどれだけ考えても出てこなかったので、一度考えるのは放棄した。
次に、実際にアウスト国の総統・書記長と会った暗殺部隊隊長、麗音(レオン)に話を聞いた。
「…結論を先に言う。あいつらは弱かった。」
そうやって言ったあと、動きは鈍くて遅いと詳しく言った。
レオンは着眼点がいい。そして、隊長と言うだけあって相手の事をよく見ている。
だから、レオンは幹部に入らないかと言われ続けていたのだ。それは全て断られているが、それは別として。
「軍のリーダーが弱いと、下っ端達も弱いのは当たり前だよねぇ…」
指揮をする人間が弱いと、下の者共もそれにつられて弱くなる。それがヒカリの考えだ。
アウスト国の者共が皆が皆、弱いのはわかったとして。最初に兵士達が強いと感じたのは、何故だろう?
「…魔法とかって、有り得ますかね?」
皆が悩んで黙っている中、沈黙を破ったのは司令官の月希(ルイ)だった。
司令官は、要はこれをやれあれをやれと命令だのをする人物だ。勿論、総統とは違って探してこいだのの命令だが。
この国の中で、偉い人物ではある彼。光石国トップ3に入っている彼が質問をした。
魔法。よく見るファンタジーや異世界系のアニメ、漫画などで見る魔法とよく似ている。
この世界には「先天的」と「後天的」の二種類がいて、先天的は生まれた時から魔法が使える、生まれながらにして魔法使いの事。
後天的は手術を施したり、魔法具を使って初めて、魔法が出せる魔法使いの事だ。
後天的魔法使いは、詠唱したり杖を持っているのならば杖を出して魔法を使うのだが、先天的は違う。
先天的魔法使いは、生まれながらに魔法を生み出す事ができるコアのようなものがある為、詠唱せずとも、杖を使わずとも魔法が出せる。
勿論、先天的魔法使いでも向き不向きがある為、先天的でも詠唱する者もいる。
向いている者であれば、指先から魔法を出す事も可能だし、魔法陣を発動させる事も可能だ。
「…簡単に言うけど、難しいんじゃないかな」
この世界で魔法は流通していない。メインは武具で、物理攻撃を得意とする人ばかりいる。
先天的魔法使いは百人に一人、いるかいないかの確率で、先天的なんて人生で見る事はほとんどない。
後天的は、手術をしているもの以外は力を強くする、なんてチート級魔法なんて使えないし、手術であればそんな魔法は使えるがリスクが高すぎる。
それが、難しい理由なのだ。
先程は「先天的なんて人生で見る事はほとんどない」とは言ったが、光石国の、特に幹部なんかは毎日のように見る事ができるのだが。
「僕でもあの人数を身体強化とかするなんて、気力も体力もいるから難しいよ」
光石国の総統、ヒカリはその百人に一人いるかいないかの「先天的」魔法使いなのだ。
ヒカリは世界で最強と言っても過言ではない人物。温和な性格な反面、恐怖で満ち満ちている彼。
「最強」と謳われる彼であっても、一国の兵士全員にチート級魔法を長々と付与する事は難しいのだ。
もし、アウスト国に魔法使いがいるとしたら。ヒカリでもないやつがそんな魔法を全員に付与できるわけがない。
「でも、途中で弱くなってたわよね? その魔法使いの力が尽きたとかで魔法の効果がなくなったとかの可能性、あるんじゃないかしら」
何度も言うが、最初はかなり強かった。勿論アウスト国の兵士もだが、我々の兵士達は血汗を流して、必死に戦っていた。
魔法使いが魔法を付与していると考えて話を進めるが、戦い初めに強いと感じたのは、チート級魔法を付与していたからだと予想する。
中距離部隊をすぎたあたりから弱く感じたのは、魔法使いの力が尽きて魔法の維持ができなかったからではないかと。
「魔法使いなんて見なかったし、気配も感じなかったからいないと考えるのが妥当だが、理由聞いたらその可能性もあるよな。」
レオンは話し方こそ男性のようだが、レオンは彼女でも彼でもなく、「中性」だ。
無性ではない。男でも女でも似合うのがレオン。そんなレオンを不思議がったりはしても、誰も虐める人はいなかった。
光石国は、全てを受け入れるから。光石国に入隊する際、条件のひとつに「全てを受け入れ、虐めない」と書いてあった。
それを理解し、承諾して、数々の入隊試験を受けて兵士になったのが、ここの、光石国の兵士なのだ。
閑話休題。
光石国とアウスト国は交易などしておらず、関わりが一切ないに等しかった。
その為、アウスト国の情報は知らない。セキも、ヒカリが頼まなければ外交官として視察に行かないのだから、知らないのは当然だ。
今から調べようにも、アウスト国はおかしいがトップ10の中の国なので、情報班が調べても出そうにない。
かと言って、国に出向くのもよくはない。我々は先程までアウスト国と戦って我々が勝ったのだから。
アウスト国の総統と書記長は、レオンによって首を掻っ切られた為、もうすぐ情勢は崩れ始めるだろう。
今更、ではあるのだが。
「魔法使いが生きてるかもしれない。多少は、俺らが調べてみる」
よくルイと一緒にいる、情報班リーダーの洸(コウ)。タチバナやセキとは真反対で、物静か。更には毒舌。
そんな彼が、難しい事をやろうとしていた。トップ10の国の、もうすぐ情勢が崩れ始める国の事を調べようとしているのだ。
更に難しいのは、そんなアウスト国の裏方であろう、実際にいるかもわからない「魔法使い」について調べるのだ。
光石国は情報屋というくらい情報に強いのだが、それでも尚、希少な「魔法使い」について探そうとしている。それは、とても難しい。
「…見つからないと思ったら切り上げてもらってもいいからね。できる限りは宜しく頼むよ」
「承知。」
先程、レオンが総統共国のトップを殺した為、何れ国は潰れる。
その為、特に調べる必要はないのだが、総統や他の者達が好奇心旺盛だったから調べる事になった。
好奇心旺盛ではない柊(ヒイラギ)達は、何故そこまでする、と不思議そうに、また、面倒くさい事をすると呆れていた。
「うん、一旦会議は終わり。次、兵士の生死者を教えてくれ」
アウスト国の謎の魔法使いの話は終わらせ、次に自分の国の話に入った。
短距離部隊は七割が生き残り、中距離部隊は九割が生き残った。更に長距離部隊は十割、全員が生き残った。
とは言っても生者は無傷というわけではなく、切り傷などの軽い傷はあった。その為カナタは大忙しだったという。
最初は強かった、という事だった為、短距離部隊が一番死者が出ている。
「それでも、生き残ったやつ多い方じゃない?」
と、ヒイラギが褒めるように言った。
たしかに、これまでの戦争と比べれば死者は少ないと言えよう。成長、ではないと思うが、それでも凄いだろう。
やはり、アウスト国だから生き残りが多いのだろう。長距離部隊なんから全員生き残ったわけだし、最後が弱くなったと言えるのはそうだ。
何かある、というのは誰もが思う事だろうが、今は深く考えない事にした一同。
考えすぎてもよくない。これ以上考えても何も起こらないし、何もないだろうから。
「それじゃあ、解散しようか。皆、お疲れ様。」
ヒカリの言葉で皆が会議室から出ていった。戦争の後だから睡眠を摂る者も多いと考え、いつもより会議は短かった。
会議室に集まった幹部達は出ていったが、一人、まだ出ていっていない者がいた。
「…? レオン、どうした?」
それは、レオンだった。
解散の言葉で出ていったのにも関わらず、座ったままのレオンに不思議がるヒイラギ。
「……あのさ」
ヒイラギから言葉がかかるまで黙ったままだったレオンだったが、漸く口が開いた。
「俺、幹部になりたい」
ヒカリとヒイラギは目を見開いた。
ヒカリ達がどれだけ幹部にならないかと誘っても、きっぱり断っていたレオンだったのに自分から志願するとは思わなかったからだ。
「理由を聞いてもいいかな?」
いくら幹部達が誘い続けても、自分から志願したのだから理由くらいは聞きたい。
「…俺は綺麗事は嫌いだ。だが、皆を少しでも助けたいと、そう思ったんだ」
レオンは綺麗事が嫌い。でも、助けたいと思うのは本心で、決して綺麗事ではない。
先程までの会議、今までの訓練などの幹部達を見て、流石だと、素敵だと思ったのだ。
幹部の仕事は資料をまとめたりするのが基本だ。「幹部」の仕事に加え、「隊長」などのそれぞれの仕事がある。それを文句は言うもののこなす姿がかっこいいと思ったレオン。
レオンが光石国に所属したのは、助けたいと思ったから。幹部になれば今より一層助けられると思った。
「…こんな理由で、幹部になれるか?」
なりたいと志願して、沢山自分の本心を語っても、幹部になれるかは総統であるヒカリ次第。
どれだけ本心を語っても心配するのはするのだ。
なりたいと言った頃より、少し弱ってる気がする。
「ふふ、勿論幹部になれるよ。」
笑顔でそう言ったヒカリ。ヒイラギも受け入れている様子だ。
「こちらから誘っていたし、何より理由が素晴らしくてね。受け入れないわけにはいかないよ」
「助けたい」と思うのは、善人でないと思わないだろう。それを思うレオンは、きっと、善人。
他の幹部達はどのような思いで幹部に志願したのかは今は知らないが、きっと幹部達も善人なのだ。
もしかしたら、一番の善人は総統なのかもしれない。
レオンが幹部になった。その報告はまだしないとして。
どの仕事も忙しいだろうが、暗殺部隊なんかは一番生死がはっきりしていると言ってもいい。
たしかに他の部隊だって死ぬかもしれない戦いがあるが、暗殺部隊の場合、敵国の城内に侵入するのだから一番死ぬ確率が多いだろう。
生きるか死ぬか、はっきりとしているのが暗殺部隊。
だからといって、レオンが幹部の仕事をやらなくていいというわけではないが、今はいいだろうという事になった。
皆に言うのは明後日だ。明後日報告してから、そこから幹部の仕事をしてもらおう。
幹部の仕事は、もうしたかもしれないが、主に書類をまとめる。各国の情勢を調べる仕事だったりもあるのだが、それとはまた違う。
印を押す書類だったり、報告書だったり。一応、書類と言っても何種類かはある。
レオンは結構、要領がいいと思うので、暗殺部隊の仕事と同時進行で出来そうだ。
今日は戦争だった為、幹部達には書類整理などの仕事はやらせていない。
「僕、優しいでしょ」
そうやって自惚れるヒカリ。そんなヒカリを呆れた目で見据えたヒイラギだった。
そして、突き放すように言う。
「結構当たり前の事だと思うけどな」
相手に優しくするのは当たり前。総統であるヒカリならば、尚更である。だが、一体何が当たり前であり、何が当たり前じゃないのか。
「当たり前ってなんだろうねぇ」
人によってその「当たり前」は異なるのだ。人の考えは魔法であってもわからない。
だから、人に「当たり前」を押し付けてはならない。
ヒカリのその言葉で、ヒイラギはたしかに、と少々言葉を間違えたと思った。
考えも、「当たり前」の価値観も、人それぞれである。
兎も角。
ヒカリは、レオンを幹部として引き入れ、手に入れた。
だが、ヒカリはまだひとり、手に入れたい人物がいた。その人物は、まだ言えない。
profileープロフィールー
name 麗音(レオン)
gender 中性
first person 俺
character オラオラ系・怖い系
affiliation 暗殺部隊
rank 幹部・暗殺部隊 隊長