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町はずれに作られたゴーカートのサーキット場は、周りを森林が取り囲んでいるお蔭で、どんなにエンジン音が響いても気にならないところにあった。プレオープンということもあり、そこそこのお客様が来場していて、それなりに賑わっている様子に、橋本を含めた4人も自然と笑顔になる。
「陽さん見てください。大人と子ども別々に、サーキット場があるみたいですよ」
「助手席で事前にパンフを見ていたくせに、どうして気づかなかったのかわからないな」
「えへへ、サーキットのコーナーの難解さに見惚れてしまって、それ以外の情報を全然読んでなかったっす☆」
「クレイジーな走り屋の雅輝らしいと言えばいいのか……」
「橋本さんと宮本さん、和臣が呼んでます。ちょうど受付が終わったみたいですよ」
大きなテントで受付を終えた和臣の傍で、榊が手を振りながら大きな声をあげて、仲のいいふたりを呼び寄せる。弾んだ足取りで合流すると、受付の奥から係員が出てきて説明をはじめた。
「いらっしゃいませ! 今日はよろしくお願いします。どうぞこちらに」
誘導する係員に連れられ、小さなテントにぞろぞろ入った。中にはパイプ椅子と机がそれぞれ4つずつ置かれていて、先客でふたつ埋まっていた。
「どうぞおかけください。えっと榊さんおふたりに、橋本さんと宮本さんですね。係員の佐々木と申します」
1番左の椅子に宮本が颯爽と座り、その隣を橋本が陣取ると、榊、和臣の順で席が自然と決まった。
「ここで使用するカートは、大人用と子供用で分かれておりまして、大人用には200ccエンジンを搭載しています」
「へぇ。結構馬力が出るんじゃないですか?」
身を乗り出すように嬉々として宮本が訊ねると、佐々木は瞳を輝かせながら声を弾ませて答える。
「そうなんですよ! ゴーカートは路面と近いので、自動車とはまた違った迫力がありますし、体感速度は120キロくらいあるんです」
「120キロか、ワクワクします! それだけスピードが出るなら、コーナリングも難しくなっちゃいますね」
(雅輝のヤツめ、120キロくらいじゃワクワクしないクセに、よくもまぁそんなに楽しげに話せるもんだな)
「恭ちゃん、120キロも体感速度があるんだって。大丈夫?」
「う〜ん。あまり感じないように、アクセルを思いっきり踏まなきゃいいだけの話だろ……」
上がりまくる宮本のテンションを他所に、榊と和臣はどんよりしながら話し込む。
「ペーパードライバーの恭介はとりあえず、安全運転で走行すればいいって。絶対に無理はするなよ」
「それよりも宮本さんって、全然人見知りしないんですね。さっきから佐々木さんと盛り上がって楽しそうです」
「俺との出逢いのときもそうだけど、やっぱ人懐っこいにもほどがあるよな」