雪山修行が始まる少し前、鳴海はとある人物に会いに本島を訪れていた。
 「お待ちしておりました。斑鳩様」
「朝早くからごめんね〜。みんないる?」
「はい。皆様首を長くしてお待ちになられてますよ。それと何名かはリモート参加すると」
「りょりょりょ〜👌」
 ルンルン気分で地下への階段を降りていく鳴海。
今回の集まりは約1年ぶりとなるためこの日を待ちわびていた
 「おっ、揃ってるね〜」
「「隊長!!」」
 扉を開けると簡易的な机を囲むように座っていた数名が声を上げ立ち上がった。
 「お元気そうですね斑鳩隊長…いや、無陀野隊長とお呼びした方が?」
「仕事やってる時は旧姓だよ。今まで通りで大丈夫」
「隊長〜〜〜〜〜っっ♡♡♡♡」
「うーん。相変わらずフルスロットルだね。星羅ちゃん」
 挨拶もそこそこに席につき来ていないメンバーの確認を取る
 「京都は玄葉が代表で来てるからいいとして、練馬は…リモートか。動けないのかな」
「先日の一件で忙しいみたいですよ」
「練馬配属の隊は大変だろーねー」
「ほかは後から参加するだろうし先に始めよっか」
 栃木から1人、 杉並地区からは2人、 京都からは1人、 そして……
 「遅れました」
「菊華」
 鳴海の腹違いの弟【桃原菊華】
 「きぃちゃんだ!」
「お久しぶりです天乃分隊長」
「んもぉ〜!星麗って呼んでよ!」
「嫌です。元芸能人を呼び捨てするほど廃れてません」
「昔のことなのにぃ…」
「…”ある日突然暗闇の世界から現れた1つの星”」
「!」
 その言葉を聞いた瞬間天乃は決めポーズをしながら常套句を言った。
 「”私は織姫!彦星様に会いに来ました!!みーんな、私に恋してね♡!”」
「おー👏」
「さすが元アイドル。決めポーズも決めゼリフも完璧だ」
「えへへっ」
「はいはい。茶番はそこまで。菊華、報告を」
 鳳舞の言葉に頷き、菊華はここ最近の情報を読み上げ始めた。
 「まず、京都襲撃の件から。これは皆さん知ってますね?」
「唾切の事だよね?」
「そうです。あれから復興が進み今では以前と変わらないそうです」
「この一件からまた狙われる羽目になるとはね…」
「唾切殿が亡くなるとは…」
「なぁにぃー?真下ちゃん寂しーのー?」
「あの方とは価値観が多少似ていましたから」
「あのサイコパスと価値観似てるとか終わってんなお前」
「……」
「ネガティブにするなっっっ!!」
「どうせ…吾輩なんて…はは…」
「あーあ、ネガになっちゃった」
「能力使ってる時はいいんだけど…」
「次に練馬」
「本格的に大隊長が狙われ始めた原因…」
「この時は桃太郎側で亡くなったのが隊長クラスの桃巌深夜ただ1人と報告が上がってます。斑鳩隊長、血のサンプルはここにありますので持ち帰ってください」
「はいよー」
 淡々と直近の出来事を読み上げていく桃原だったが、ある1枚の紙を見て顔を顰めた。
 「どったの?」
「いえ…桃太郎機関で我々の部隊の懸賞金が上がりました」
「元はいくらだっけ?」
「鳴海大隊長だけで2億ほど」
「ねね、私は?」
「天乃小隊長は…元が2400万でしたがそこから50万upですね」
「たった50万…」
「我々基準だと “たった” のですが桃太郎からしたら大金ですよ」
「アイドルやってる時より少ない!!!!」
「あ、そこ?」
「賞金は各自で見てください。次に彼等が動き出してます」
「彼等?」
「鬼國隊です。」
「あー…」
 鳴海も短期間であるが所属していた事がある鬼機関に属しない小規模のグループ【鬼國隊】
短期間とはいえ仕事で彼等と一緒に行動していただけなので正直あんまり覚えてない。
 「会うことがあったら穏便にお願いします。これで報告は以上です。何かありますか?」
 すると天乃が手を挙げた。
 「最近華厳の滝周辺の村に住む住民が何人も消えてるんだよねー」
「一般人か?」
「いや、鬼だよ」
「華厳の滝…あそこ…何かあった?」
「古い建物が一棟。でも最近人が出入りしてるって報告が上がってる」
「華厳の滝…行方不明の住民…人の出入りがある古い建物…嫌な予感…」
 怯えるように漆真上が今の言葉を復唱していた。
 「あそこは見回り区域から外れてますし…もしかしたら…」
「桃太郎機関の可能性、か…」
「分からないことを考えてても何も進まないからこの件は星羅ちゃん指揮の元で調査を進めて」
「星羅了解」
「人員をそっちに割きたいけど人手不足だからな…うん。羅刹の事が落ち着いたら俺が行く」
「ホントっ!!?わぁい!美味しい茶菓子用意しなきゃ!!」
 きゃーと言って飛び跳ねてる天乃を抑え込みながら一途は鳴海にある事を尋ねた
 「菊華のことはどうするつもりなの?」
「菊華には引き続き潜入してもらう。菊華」
「はい」
「近日中に所属を華厳に移せる?」
「多分大丈夫です。」
「そういえば菊華の今の上司って?」
「月詠さんです。」
「「うわ〜……」」
「なんですか。うわ〜って」
「いや…あの占い中毒かと思うと」
「”ミリン先生最高!” とか言いながら迫ってきそう」
「ミョリンパです。いい人ですよ。倫理観無いですけど」
「上げて落とすじゃん…」
「華厳の隊長って誰だっけ?」
「えーっと…あの…マッドサイエンティストの…」
「楔ちゃんかな多分。」
「一応上司に当たるんだから覚えようよ」
「本籍はこっちですので」
 それでは、と言って部屋を出ようとした桃原を止めた鳴海
 「何か言い忘れでもあったんですか?」
「んや、再確認」
「?」
「…各自各々がそれぞれの目的があると思う。その目的を忘れないように」
 全員その言葉を聞いた瞬間声を揃えて《了解》と言った
 「そろそろ時間なので僕はこれで」
「きぃちゃんまたね〜」
 こうして久々の報告は幕を閉じた
「(あー全力で帰りたい…)」
 練馬に戻ろうとした矢先、実家からの召集命令が出たのでわざわざ飛行機に乗り沖縄までやってきた菊華
 「だーかーらー!輝くんはそこがいいって言ってるんじゃん!!」
「あんな顔面交通事故のどこがいいんだよ!?」
「交通事故なのはおにぃの方でしょ!!?」
 目の前で繰り広げられる兄妹喧嘩をぼーっと見ていた菊華は重いため息をついた。
 「(なんでこう仲良く出来ないのかな力一兄さんも結莉乃姉さんも)」
「ちょっときぃ!あんたはどうなのよ!?」
 いきなりそう言われ間抜けな声が出そうになった瞬間母親が現れた。
 「喧嘩を今すぐやめなさい。力一、結莉乃」
「だって…」
「だってもへったくれもありません。お父様が呼んでますよ。今後のことについて話があると」
 そう言われ菊華達は嫌そうな顔をしたが家長が呼んでいるのだ行かねばならない。
 「なぜ醜男の懸賞金を下げたのだ!?上はアイツの利用価値を分かって言っているのか!?」
「上が分かってないから今こうして私たちが呼ばれているんでしょう?パパ」
「お前がこんなとこで隊長なんぞしているからこうなるんだぞ!!!」
「それ関係ないでしょ!?」
 父はそこそこの立場で現在は療養期間で沖縄に帰ってきている(怪我した原因は鳴海関係)
 「懸賞金取り下げならこっちから出せばいいじゃん。見つけたら桃原家に引渡しと同時に金を渡すんだよ」
「それなら上にとやかく言われる筋合いは無くなるわ!」
 母は兄さんを売ったことを後悔しているとかしていないとか聞いた。
 「今さら、売った子どもを連れてきてどうするつもり?」
「アイツを上手く使えば桃原家から医療系の能力を持った子が生まれてくるはずだ」
 まさかの繁殖犬扱いに菊華の顔が凍りついた。
 「地下牢にでも繋いで必要があれば種を出させる。それで全てが上手くいく」
「あ、私は嫌よ。あんな雑種の子種なんか欲しくないもの」
 父の言い分からしてきっと家系内の誰かを代わる代わる当て性行為をさせるつもりだろうなと菊華は思う。
昔からの因果なのか何なのかは知らないがどうも桃原家は女が多い。
菊華の上には結莉乃含めた5人姉がいることがそれを示しているだろう。
 「(というか元は鬼の家系なんだから隔世遺伝とかのことを考えないと意味ないんじゃ…)」
「私は輝くんと結婚して可愛いくてイケメンな子どもを産んで寿退社するの!!」
「「(2人とも整形してるから可愛くてイケメンな子どもはまず無理だと思う)」」
「あら、結莉乃ったらいつの間に好きな子が出来たの?ママにも教えてちょうだい」
「ママ寝とりそうだから嫌」
くったくたで帰ってきてその足でそのまま仮眠室に入ったあとの記憶が無い菊華。
 「ぉ……………か…………ぃ…………ろ」
「んぅ…兄さ…やめ…………ッッッ!!!?」
「あ、起きた。おはよう」
「おっ、はようございます…月詠隊長…」
 いつの間にか眠っていたらしく起こされた菊華は目の前の人物に驚いてベッドから転げ落ちてしまった。
 「君、疲れ溜まってるんじゃない?もうお昼だよ」
「えっ」
「今日休みで良かったね」
「うわぁぁぁ…寝すぎた…」
「あ、はいコレ」
「?」
「異動届けの紙。申請降りたから明後日から華厳の滝配属だよ。」
「ありがとうございます…」
「いきなり異動したいって言うから何事かと思ったけど色んな所で実戦経験積みたいとはね」
「合う合わないもありますから気が済んだら練馬に戻ってきますよ」
「そうして。君がいないと桜介が寂しがるからね」
「そんなことありますかね?」
今後出てくるかもしれない人達の紹介
 頼玄(父)→地位と名誉命のクソ親父
紗代子(母)→銭ゲバ
結莉乃(姉)→結婚願望強めの面食い女(華厳の滝編登場予定)
力一(兄)→正真正銘のカスでクズでバカ
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