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「……今朝、ユウが閃いたようだ」
「余計なことを……」
ナジュミネが少し声を震わせながらそう言うと、ムツキは思わずそう呟いた。彼女は次に身体を震わせていた。
「……す、すまぬ。妾が先日、美容や健康にはフルーツと言ったばかりに、ユウがフルーツに目覚めてしまったのだ。皆にはなんと詫びればよいのか……」
ナジュミネは今にも消え入りそうな声で、掠れつつも絞り出していた。そして、ムツキは自分の言葉に大きな失敗があったことに気付き、慌てふためく。
「あー、いや、そうだったのか? それは余計なことじゃないな! 女の子にとって、美容は大事だ。ナジュは悪くないぞ。大丈夫だ。そもそも、健康や美容を気にする神ってどういうことだって話だよな! ははっ……ははは……あれ?」
「ありがとう。でも、もうやめてくれ……下手に慰められると泣きたくなる……不甲斐なさが身に染みる……むしろ、責めてくれ……その方がまだ心が……心が保てる……保てるんだ……頼む……」
「あ、いや、なんか、その、ごめん……その、知らなくて……、えっと、えっと……」
ナジュミネは涙を流さないためにか、既に流れている涙を隠すためか、膝を抱えてうずくまり、顔を誰にも見られないように伏せ始めた。
「ご主人、慰めるのが本当に苦手ニャ……」
ケットはトゲのある言い方をする。この場ではその方が誰もが傷つきにくいと気遣ったようだ。
「うぐっ……たしかに下手に慰められるよりもズバッと言ってくれた方が楽かも。いや、ナジュは元気出せ! ともかく、手分けして、フルーツを採取するぞ!」
ムツキは後でフォローすることを考えつつ、仕方なく強引に話を戻した。
「お待たせ! ルーヴァも連れて来たわ。あれ? ナジュミネ、なんでうずくまっているの?」
「今は聞かないでくれ……」
ナジュミネは立ち直るのにもう少し時間がかかりそうである。
「面倒臭そうね。もう聞かないわ。もちろん、足手まといはいらないわ。そこで勝手になんかいじけてなさいな。これから忙しくなる時に、そんなお子様はいらないのよね」
「む…………ありがとう。少し元気が出たぞ。リゥパには決して負けぬ」
「……はぁ……それはそれで面倒臭そうね」
リゥパはナジュミネをけしかけて奮起させた。お互いに笑みを浮かべる。
「なに、友情ごっこしてんのよ。ま、仲悪いよりはいいけど。ふぁー、おはよーございます。リゥパから話は聞いたわ。あーしにも手伝えることがあります?」
ルーヴァはあくびをしながら、その話を無理やりに切る。
「そうだな。リゥパとルーヴァには樹海でいくつか探してもらおう。ナジュは何匹かの犬の妖精たちと一緒に魔人族の町で買い物を頼む。俺はその他を当たる」
ムツキは各自に指示を出す。そして、【テレポーテーション】やアイテムボックスを使える自分自身はいろいろな所へ行くつもりだ。
「主様。オレも連れて行ってくれ」
「クーか。ユウはどうなんだ?」
階段の上から碧色の毛並みをしたクーが声を発する。軽快に歩くクーは終始笑顔のような表情で周りを見渡した後、ムツキの方へと向く。
「徹夜で何かをしていたようだ。今朝、ケットにデザートの件を告げて、早々に寝た。半日は起きないだろう。どうせ暇だ、オレも連れて行ってくれ。鼻が利く」
「いいぞ。むしろ、ありがたい。クーなら人族の町でもそれほど目立たないからな。ただし、人族の町にも寄るけど、その時は喋るなよ?」
「ワン! ハッ……ハッ……ハッ……」
ムツキの言葉に、クーは犬らしい鳴き声を出した後に、舌を出しながら息をする。
「……クーがついていくニャらさらに安心ニャ。フルーツの良し悪しもその鼻で分かるニャ」
そうして、各自が必要な材料を求めて動き出す。少しばかり、留守番のケットが寂しそうにしていたのだった。