集会所では町内会の新年の顔合わせが行われていた。
「ちびっこ集まれ〜」
湊の掛け声に子供たちが湊の周りに集まってきた。
「英。なにが始まるんだ?」
湊と一緒に参加していたシンが隣に座る明日香に尋ねた。
「そっか。シンは知らないのか?」
明日香の言葉にシンが頷く。
「晃さんが子供たちにお年玉配るんだよ!」
目を輝かせて明日香が答える。その瞳には『金』の文字が浮かんでみえた気がしてシンは呆れてしまう。
「まさかお前…18にもなってまだお年玉もらう気なのか?」
「あったり前だろっ!もらえるもんは何でももらうのっ。じゃあ、シンはいらないんだなっ?」
「湊さんからお年玉をもらうとかありえない…」
「当たり付きだぞ」すかさずそう言って明日香はニヤッとする。
「え……?」
固まるシン。
「これは明日香と…シンの分な」
子供たちに配り終わった湊が明日香とシンの近くに来て2人にもお年玉を配る。
「サンキュー晃さんっ!」
「あ…ありがとうございます……」
謙遜しながらシンはそれを受け取った。
早速中身を確認しようとしている明日香を肘でつき
「当たり付きって、なんだよ……?」
「当たりが出ると晃さんが…なんでも好きな……」
「なんでもっ?!」
「んっ?……やったっ!!当たりだっ!!」
明日香は『当たり』と書かれた紙を取り出し手に持って喜んでいた。
すかさず「よこせっ」とシンがその当たりの紙を明日香に要求する。
「やだよっ!」
「タダでとは言わない…これと交換で…」
そう言ってもらったばかりのお年玉を差し出した。
「いいの?シンちゃんっ!」
殊の外喜ぶ明日香は、サッと当たりの紙とシンの差し出したお年玉を交換した。
当たりの紙を手に入れたシンはニヤけながらそれを見つめている。
シンから交換したお年玉を開けて中身を取り出した明日香は、ふっ、と笑い湊を見るとそれをそのまま袋に戻しシンに突き返した。
「やっぱり交換はなしっ!返して!」
「ふざけんなっ」
「もう…いいからっ!黙ってシンはこっちを受け取れって!!」
半ば強引に交換不成立にされてしまった。
「当たりは、晃さんがなんでも好きなもの買える商店街の商品券くれんの。でも…シンのは…」
「なんだよ…」
「中、ちゃんと見てから交換してくんないとさ…俺が恥ずいわ……って事で当たりの商品券は俺が頂きます。とりあえずシンは自分のお年玉の中身を確認しろっ」
明日香にほらっ、と言われ戻されたお年玉を開けると中身を取り出す。
すると、お札の間に『特別賞』と書かれた紙が挟まっていた。
「英…特別賞って……」
「しらねぇよ。今までそんな賞無かったし、そのままの意味なんじゃないのっ!」
「特別……」
その言葉が嬉しくて、子供たちと楽しそうに笑う湊を見つめる。
シンの視線に気がついた湊は少し照れくさそうに笑ってシンを見た。
「イチャイチャするのは家だけにしろよな…」
その光景を見ていた明日香が呆れて呟く。
そして、立ち上がると
「晃さーん!シンちゃん具合悪いみたいだからお家に連れて帰ってあげて〜!」
シンと湊は日が落ちかけた夕暮れの道を2人並んで歩いていた。
「身体大丈夫か…?」
心配そうに話かけてくれる湊の優しさが嬉しかった。
「ウソですよ。あれは…英なりの気遣いだと思います」
「そっか…なら、良かった…」
自然と繋ぐ手が温かい。
「あの…湊さん…」
「ん?」
「特別賞って……?」
シンの問に少しだけ間が空いたあと
「特別な賞って事だなっ」
照れくさそうに湊が答えた。
「それじゃわかりません…」
「だからっ!」
「だから?」
湊は目をそらし
「……お前は……特別って事だよっ!」
真っ赤になって答えた。
「賞って事は、何か貰えるんですよね?」
湊の顔を下から覗き込んで意地悪くシンが聞く。
「はあ?なに強欲全開にしてんだよっ!」
シンを睨みつける。そんな事は気にもせず
「どうしようかな〜」
シンの頭の中は特別賞の景品の事でいっぱいだった。
「何かあげるなんてひと言も言ってねぇだろっ!」
湊の言葉も耳には入らない。
「あんな事とか…こんな事とか…」
シンの頭の中は妄想が膨らんでいた。
「……ったく、1つだけだかんなっ!」
「それじゃ……」
そう言って湊を抱きしめる。
「……湊晃の永久専属権をください」
真面目な顔でシンは湊にねだった。
冷たい風がコートの裾を揺らす。
木々が枝を揺らす音が微かに聞こえる。
少しの間があった後、
「違うものにしろ……」
湊の声色はなんだか冷たく聞こえて
「すみません…調子に乗りすぎました…」
思わず湊から一歩離れ謝った。
うなだれるシンのコートの襟を掴み
「っんなもんとっくに手に入ってんだろっ!…だから……」
くっと口を結び「他にねぇのかよ…」そう小さく呟いた。
「…ないです」
シンは湊の腕を掴む。
「それ以外も…それ以上もそれ以下も………。湊晃の他はないです…」
シンの顔があまりに真剣な顔をしているものだから、「本当にお前は……」湊はシンの胸にコツンと頭を付ける。
「有効期限は1年だ…良く考えろ…」
「……はい」
この日貰った特別賞は、お年玉と一緒にシンの宝箱の中に大切に保管され使う時を待っていたーーー。
【あとがき】
あけましておめでとうございます。
2025年も、シンみなワールド全開で行きます!
それでは、また…。
2025.1.2
月乃水萌
コメント
7件
すごい…新年1発目からもろくらってしまった…天才です😍😍😍
月乃水萌さんあけましておめでとうございます🎍 2025年もしんみなワールド全開で頑張ってください♡♡また楽しみにしてますね(⁎˃ᴗ˂⁎)
あけおめです!!今年物語見てテンション上げて来ます🤯