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研究室には静かな午後の光が差し込み、机の上の器具や書類を淡く照らしていた。雨音が窓を叩く中、ドアがゆっくり開いた。
「くられ先生っ……!」
ツナっちは思わず声をあげ、目を見開いた。くられは肩や髪に雨粒を残し、濡れたコートの裾が床に触れている。
「え、先生……傘は……?」
くられは濡れたコートをハンガーにかけながら、肩越しにちらりと視線を送り、微かに笑った。
「傘、忘れちゃったんだ。ちょっと外まで出る用事があって……」
ツナっちは思わずぎょっとしつつ、手を伸ばしそっと濡れた髪や肩を拭きながら、小さく息をついた。
「風邪引いたらどうするんですか!」
「……大丈夫だよ」
くられは微かに笑みを浮かべ、濡れた裾や肩を気にせず、机の前にゆっくり歩み寄り、手元の書類に目を落とした。
ツナっちは慌ててタオルを手に取ったが、くられは濡れた髪や肩を気にせず、目の前の資料に視線を落としたまま、ペン先を静かに走らせている。それを見て、ツナっちはつい痺れを切らした。
「先生、このままだと本当に風邪引きますってば!」
「……大丈夫。僕、そんなに簡単には体調崩さないから」
くられは淡々と答え、肩に滴る雨粒を軽く払うだけで、すぐに作業に戻った。
「そんな……本当に……」
ツナっちは小さくため息をつき、少しもどかしそうにタオルでくられの肩と髪を拭く。
「ほら、もう!拭きますよ!」
「……こらツナっち!大丈夫だから!集中できないよ!」
「集中以前の問題です! 風邪引いたらどうするんですか!」
くられはわずかに顔を上げ、資料から目を離さずに小さく笑った。
「そんなに神経質にならなくても平気だよ。ツナっちの心配はちょっと過剰だと思うけどな」
ツナっちはタオルで拭きながら、慌てた声を少し抑えつつ言った。
「いや、過剰でも放っておけません! 本当に風邪ひいちゃいますよ!」
くられは肩越しにちらりと視線を送り、淡々とした声で答える。
「そんなに気にしなくても大丈夫だよ。僕は簡単には倒れないから」
ツナっちは小さく息をつきながら、タオルで濡れた肩や髪をしっかり拭き取る。くられはそれすら気にせず、すぐに目線を資料に戻す。その背中を見つめながら、ツナっちは心の中で思う――この人に何を言っても無駄だ、自分がしっかりしないと、と。
雨音と二人の静かなやり取りが、研究室の午後を穏やかに満たしていく。資料の間に差し込む光に濡れた髪の粒がきらりと反射し、ほんのわずかな揺れと温もりが、二人だけの穏やかな時間を優しく紡いでいた。