東京都・新宿──朝7時
殺し屋・百獣弾は、徹夜明けの体を引きずりながらベッドへ向かっていた。 目の下には深い隈。手には巻物。 「昨日は依頼書とターゲット情報を頭に叩き込んだ。少しだけ眠るか…」
だが、ベッドには見知らぬ老人が座っていた。
空気が凍りつく。 弾は即座に銃に手をかけ、叫ぶ。
「誰だ。名を名乗れ」
老人は静かに答えた。 「わしは──ぬらりひょんじゃ。今日はお主に“宣戦布告”をしに来たのじゃ」
その名を聞いた瞬間、弾の表情が強張る。 「ぬらりひょん…妖怪の王…なぜ俺の名前を…?」
老人は落ち着いた口調で語り始める。 「百発百中の殺し屋──百獣弾。年齢19。弟のために殺し屋になった男。だが、今はその記憶すらない」
弾の手が震える。 「……弟?……俺に弟なんて──」
だが、胸の奥が妙にざわついた。 (なんだ……この感覚……)
パン! 銃声が鳴る。 「始末完了──」
だが、ぬらりひょんは無傷だった。 「そんな弾道、止まって見えるわ」
弾は信じられなかった。 (俺が外した?…いや、違う。あいつが速すぎる)
再び引き金を引く──パン! だが、ぬらりひょんは余裕の表情で避ける。
「これが殺し屋か?案外、大したことないのう」
「ぬらりひょん…調子に乗るな。次は──」
「待て」
ぬらりひょんが手をかざすと、弾の体が硬直する。 (動かねぇ…なんだこの圧…)
「今夜、この都市から“百鬼夜行”を始める。99体の妖怪が復活し、最後にわしが立つ。お主は、まずその99体を始末してみせよ」
「百鬼夜行…?妖怪100体全員、撃ち抜いてやる…!」
「その言葉、楽しみにしておるぞ。今こそ、怨念が満ちた。百鬼夜行を再び起こす時じゃ」
ぬらりひょんが消えると、空気が元に戻った。 弾は床に手をつきながら、静かに立ち上がる。
「ぬらりひょん…必ず始末する。今度こそ、撃ち漏らさない」
その夜──日本のとある場所
ぬらりひょんは百鬼夜行の儀式を始めていた。
「儀式には人々の怨念と負の感情が必要なのじゃ。さて、1000年の眠りの間にどれほど溜まったかのう?」
武士の怒り、戦争の悲しみ、事故の絶望── 日本中の怨念がぬらりひょんの手に集まった。
「これは…想像以上じゃ。よし、これでできる」
地面を叩きつける。
「降臨せよ、百鬼夜行よ!」
その瞬間、99体の妖怪が復活した。 ──百鬼夜行、始動。
弾の部屋──巻物の確認
弾は静かに巻物を広げていた。
妖怪始末令・第三章 発令者:陰陽庁・特務課「黒印」 任務:百鬼夜行の構成妖怪99体の始末 最後の一体は、ぬらりひょん──
弾は巻物を見つめた。 「黒印……あいつ、こんな筆跡だったか?」 一瞬、違和感が走ったが、すぐに流した。
ターゲット001:唐傘お化け 弱点:火 賞金:10万円 古びた傘が妖怪化した存在。片目と長い舌を持ち、雨の日の路地裏に跳ねながら現れる。人間を驚かせて転ばせ、傘の骨で突き刺す攻撃を仕掛ける。
ターゲット002:一反木綿 弱点:切断 賞金:15万円 白い布状の妖怪。夜空を滑空しながら人間の首に巻きつき、窒息させる。屋上や高層ビルの間を飛び回るため、遠距離攻撃が有効。
ターゲット003:火車 弱点:水 賞金:30万円 炎を纏った車輪型の妖怪。死者の魂を奪うとされ、火葬場や車道に出現する。高速で突進しながら炎を撒き散らすため、冷却系の攻撃が必要。
ターゲット004:のっぺらぼう 弱点:鏡 賞金:20万円 顔のない人間の姿をした妖怪。鏡や水面から現れ、精神を撹乱する囁きを使う。自分の姿を鏡で見せると消滅するという伝承がある。
ターゲット005:小豆洗い 弱点:音 賞金:12万円 川辺や排水口で小豆を洗う音を立てる妖怪。歌声で人間を誘導し、足を滑らせて溺れさせる。強い音波や騒音で行動を妨害できる。
ターゲット006:針女 弱点:光 賞金:25万円 全身に針を刺した女性型の妖怪。廃ビルや暗所に潜み、針を飛ばして攻撃する。強い光を浴びると針が溶けて消える性質を持つ。
ターゲット007:影喰い 弱点:影断ち 賞金:35万円 人間の影に潜んで生命力を吸収する妖怪。街灯の下やビルの隙間など、影のある場所に出現。光源を破壊して影を断つことで無力化できる。
弾は巻物を閉じ、静かに呟いた。 「これで覚えた。覚悟しろ──全員撃ち抜く。ぬらりひょん、最後はお前だ」
弾の目に、かすかな炎が灯った。
そして弾は、夜の街へと歩き出した。 だが、妖怪の恐ろしさを──弾はまだ知らない。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!