二章「開戦、襲来の百鬼夜行」
東京都・新宿──深夜0時弾は静かに屋上へと歩を進めた。 ターゲットの妖怪を始末するため、巻物を確認する。
「まずは姿を消すか──」
彼の服は特殊素材で作られており、夜の闇に溶け込むように視認性を消す。 過去の任務では、この“闇装”で誰にも気づかれずにターゲットを仕留めてきた。
だが──今夜の相手は、妖怪。 油断はできない。
弾はスナイパーライフルを構え、スコープを覗いた。 その瞬間──空気が重くなった。
「……この圧……ぬらりひょんか?いや、それ以上だ」
都市全体が沈黙し、闇が濃くなる。 百鬼夜行が、姿を現した。
「チッ……予想はしてたが、数が多すぎる。だが順番に行進してる。ターゲット番号順──なら、順に始末する」
弾は唐傘お化けに照準を合わせる。 「終わりだ、雑魚妖怪──」
引き金に指をかけた瞬間、視界が歪んだ。 唐傘お化けが跳ねながら、スコープの目の前に現れた。
「……さっきまで路上にいたはずだ。どうやってここへ?」
唐傘お化けは舌を垂らし、片目で弾を睨む。
「殺し屋ってのは、俺たち妖怪の敵なんだろ?だったら──消すだけさ」
「命令か?」
「ぬらりひょん様からさ。百鬼夜行と同時に、殺し屋の排除も命じられてる。お前が俺たちを狙ってるように、俺たちもお前を狙ってる」
弾は巻物を確認しながら呟く。
「……ってことは、他のターゲットも来てるな」
唐傘お化けの背後から、次々と妖怪が現れる。
一反木綿が夜空を滑空
火車が炎を纏って突進
のっぺらぼうが水面から顔を覗かせ
小豆洗いが排水口から水を撒き
針女が廃ビルの影から針を飛ばし
影喰いが地面の影から這い出す
弾は静かにピストルを抜いた。
「串刺しにして、丸焼きにして、顔を奪って、影を喰う?──ふざけるな。俺は今から“始末令”を本気で執行する」
針女の針が飛ぶ。 弾はショットガンで撃ち落とし、閃光弾を廃ビルに発射。
「光で溶けるなら、昼にしてやる」
針女が悲鳴を上げ、崩れ落ちる。 「針女、終了」
火車が突進。 弾は冷却弾を撃ち込み、炎を封じる。 「火車、終了」
影喰いの影を断つため、街灯を撃ち壊す。 「影喰い、終了」
のっぺらぼうには鏡を突きつける。 「これが、お前の顔だ」 精神崩壊した隙に撃ち抜く。 「のっぺらぼう、終了」
小豆洗いには超音波を浴びせる。 「グアー、やめて!」
だが、小豆洗いは水をばら撒き、弾の銃と装置を水没させる。 弾は即座に防水式の予備銃を抜き、撃とうとする──が、足元が滑る。
「──っ!」
だが、落下寸前に壁を蹴り、空中で体勢を立て直す。 その瞬間──
「落空斬」
斬が空から降りてきて、弾の腕を掴みながら着地する。
「おう、助かった。ってお前は──斬!」
斬は冷静に言う。
「話は後だ。来るぞ」
傘お化けと小豆洗いが再び現れる。 だが、小豆洗いは静かに言った。
「おらの負けだ……」
斬は刀を抜く。 その刀は、摩擦で火を纏っていた。
「熱波斬」
一閃。 傘お化けが焼かれ、消滅する。
「始末完了」
弾が驚く。
「一反木綿は?」
「さっき空中で斬っといた」
「お前、カッコつけてんじゃねー!」
斬は呆れながら言う。
「弾はもう少し、恩ってものを学べ」
弾はさらにイラつく。
「お前のその冷静さが嫌いだ。やってやろうか?」
その時──地面が揺れた。
建物が崩れ、巨大な骸骨が地面から現れる。 がしゃどくろ──百鬼夜行の守護者。
弾は巻物を確認するが、記載はない。 風に乗って、一枚の依頼書が飛んできた。
ターゲット:がしゃどくろ 弱点:太陽光、供養、霊気断裂 賞金:100万円
斬が呟く。
「了解。俺がやる」
弾が叫ぶ。
「お前だけでできる訳ないだろ!」
「言え、弾。お前の身のためだ。後で俺も行く」
弾は一瞬迷い──去った。
斬は刀を握りしめる。
「妖刀・村正──血を見せろ」
邪悪なオーラが斬を包む。 がしゃどくろが歯を鳴らしながら、ゆっくりと接近する。
「血、肉、骨、魂──俺によこせやぁ!」
三章「死闘、村正と骸の王」に続く
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