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アスファルトを叩く激しい雨音が、静まり返ったアパートの部屋に絶えず響いていた。濡れた黒髪から一雫の冷たい水滴が頬を伝い、床へと落ちる。
「……悪いな、こんな遅くに」
申し訳なさそうに濡れたコートの裾を絞る彼の姿は、数日前からこの場所に居座っている「厄介者」であり、同時に、いつの間にか私の退屈な日常の景色を鮮やかに塗り替えてしまう唯一の存在だった。どこから来て、なぜ身一つでここに転がり込んできたのか。その問いに彼が本当の意味で答えたことは一度もない。ただ、外の激しい雨が止むまでのあいだ、こうして奇妙な同居生活が続いているだけだ。
濡れたスニーカーを脱ぎ捨てる足音が妙に大きく響く。私は濡れたタオルを黙って彼に投げ渡し、湯を沸かすためにキッチンへと足音を向けた。背後でガタリと椅子を引く音がして、彼はいつもと同じ、どこか諦めたような、それでいて深い安堵を帯びた声で呟いた。
「この雨が止んだら、ちゃんと出ていくよ」
その言葉を耳にするたび、胸の奥で何かがかすかに波打つ。本当にそうしてほしいはずなのに、心のどこかでは、明日もこの雨が降り続いていてほしいと願っている自分がいる。冷めかけた部屋の空気を温めるように、ヤカンの底から小さな気泡が立ち上り始めた。
コメント
1件
ああ、この空気感めっちゃ好きだわ……。雨音と水滴の描写が静かに効いてて、心に染みた。特に「雨が止んだら出ていく」って言う彼に対して、心のどこかで明日も雨が降ってほしいって願う主人公の感情がすごくリアルで、胸がぎゅっとなった。退屈な日常を塗り替える存在って、そういう切なさと依存がセットなんだよな。短いけど、じんわり温かくなるエピソードだった。続き読みたい🔥