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──まもなく訪れた、日曜日
私は抑えがたい緊張に駆られて、彼の運転する車の助手席に座っていた。
まだ結婚式の本番でもないのに、どうしよう、すごくドキドキする……。
あれかな……、貴仁さんとの結婚がいよいよ現実的になってきたからかな……。
運転席の彼の横顔を、こっそりと盗み見る。
だってこんなに素敵な人と一緒になるだなんて、未だになんだか信じられなくて……。
膝に置いた両手をぐっと拳に握り締めて、込み上げる緊張をこらえていると、
「どうした? もう着いたが」
彼からそう声がかけられて、ふと見るといつの間にかホテル前に車が停まっていた。
「あっ……と、はい」
降りようとすると、すかさず彼が助手席側に回って、自然なエスコートでドアを開けてくれた。
「いらっしゃいませ、お客様。お車の方は、こちらで駐車場に入れさせていただいても、よろしいでしょうか?」
「ああ、頼んだ」と、彼が待機していたドアマンにキーを手渡す。
「では、行こうか?」
レセプションパーティーの際と同じように片腕が差し出されて、あの時とはまた違ったときめく想いで、フォーマルな装いでスーツをきっちりと着こなした彼の腕に、おずおずと自分の手を差し入れた。
ブライダルフェアの受付で、彼が予約の旨を告げると、
「久我様、お待ちしておりました」
現れたフェアのプランナーらしい男性が、恭しく頭を垂れた。
「ああ、今日の主役は彼女の方なので、どうか充分にもてなしてほしい」
背中に当てられた手で、少しだけ前へ押し出されて、「よろしくお願いします」と、緊張しつつ頭を下げた。
「ええ、承知致しております。こちらこそ、フェアを十二分に楽しんでいただければと思っていますので」
笑顔のその男性に数人のスタッフが加わり、ブライダルフェアのガイドをしてもらいながら、今も尚ドキドキと高鳴る胸を抱え貴仁さんと共に会場に向かった。