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最初に連れて来られたのは、披露宴の模様を再現した広間だった。
──テーブルクロスや食器も総て白で統一された席には、真っ白な大輪の百合の花が飾られ華やかな雰囲気を醸し出していて、「うわー……」と、思わず感嘆の声が漏れた。
「こちらは、ご招待をされるお客様が百人程のコーディネートになります。飾り付けの演出等はオプションで増やすことも可能ですので、ご希望があればお申し付けください」
「君は、何か増やしたいものはあるだろうか?」
スタッフの話に頷いた彼から、そう問いかけられて、
「……いえその、もう素敵すぎて、ホントもったいないくらいだと……」
否が応でも本番を意識してしまうあまり、ややうつむき加減で答えた。
「では何か思いついたら、教えてくれればいいから」
彼が話した後、私だけに聴こえるトーンで、
「君の望みを叶えたいんだ。だから私に何でも言ってほしい」
そう一言が添えられて、「はい……」と、耳を赤く染め小さく頷いた。
「久我様、こちらでは実際のおもてなしのコース料理をご試食できますので、どうぞお掛けになってください」
スタッフの方に促されてテーブル席の一つヘ並んで腰かけると、次々にお料理が運ばれてきた。
それは、前菜のサーモンのカルパッチョのオレンジソース添えから始まり、濁りなく澄んだコンソメスープに、メインの和牛サーロインの厚切りステーキにと、盛り沢山な内容だった。
そうしてデザートの、バニラとストロベリーの紅白のシャーベットを終えると、
「こちらは基本のコースになりますので、お料理のお品数はお選びのものをプラスすることもできます」
料理のラインナップをカタログで紹介され、そう告げられた。
「私は、好みもあるので肉料理だけではなく魚料理もあった方がいいと思うが、この真鯛のローストを加えるのは、どうだろう?」
「いいですね、私はもうちょっとデザートがあってもいいかなって」
どれもとても美味しかったこともあり、スイーツ好きも相まってデザートは別腹的な理屈で、写真に掲載された様々なケーキにも興味が湧いた。
「でしたら、デザートビュッフェスタイルはいかがでしょう? より多くのケーキがお試しいただけます」
その提案に、「それは、いいですね!」と、がぜん気持ちが盛り上がる。
「なら、それにしようか」
私に応えて笑顔で頷く彼を見つめていると、結婚の現実味がいよいよ胸に迫るのを感じるようだった。