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次で最終話です。それでは4話どうぞ
楽屋は静かだった。
収録終わりの夜。
仁人はソファに座って、ぼんやりと天井を見ている。
太智は少し離れたところで荷物をまとめている。
空気は悪くない。
でも、どこか落ち着かない。
太智が先に口を開く。
「今日はミスなかったな」
「……うん」
「ちゃんと確認しとったやろ」
仁人は小さく笑う。
「当たり前」
少しの沈黙。
太智がふと真面目な声になる。
「なあ、仁人」
「なに」
「最近、なんか無理してへん?」
その一言で、胸がざわつく。
「別に」
即答。
けれど声は少しだけ弱い。
太智は近づく。
隣に座る。
「俺には分かるで」
「分かんないよ」
仁人は俯く。
数秒の沈黙。
「……なんでさ」
ぽつり。
「なんで、あんたはそうやって気付くの」
太智は少し驚いた顔をする。
「気付くやろ。隣におるんやから」
その言葉が、胸の奥に落ちる。
仁人は唇を噛む。
ずっと、言えなかった。
でも今日は、もう誤魔化せない。
「……俺」
声が小さく震える。
「本当は、あの時も」
喧嘩の日のことがよぎる。
「怒りたかったわけじゃない」
太智は黙って聞いている。
「ただ……」
息を吸う。
「甘えたいだけだった」
空気が止まる。
言ってしまった。
仁人は顔を上げられない。
「……強がってるほうが楽だから」
「弱いって思われたくないし」
声が、少しだけ掠れる。
「でもさ」
やっと顔を上げる。
「たまには……甘えたい」
静かな告白。
太智は、しばらく何も言わない。
それから、ゆっくり笑う。
「やっと言うたな」
仁人が睨む。
「笑うな」
「笑ってへん」
太智は少しだけ距離を縮める。
「甘えたいなら、最初から言えばええやん」
「言えるわけないだろ」
「俺には言えや」
その一言が、優しい。
仁人の目が揺れる。
「……バカ」
でも、逃げない。
太智はそっと肩に触れる。
「ええで」
短い言葉。
「甘えたい時は、俺のとこ来いや」
仁人は少しだけ息を吐く。
「……うん」
それは小さい返事。
でも、確かな一歩だった。
ED
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