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なぜか、米子氏はここでも微笑んでいる。

「もしも嫌々やるなら、ポリシーに忠実ではないことになるだろうね」

「じゃないんですか?」

「愚問だよ」

「なら、答えてください。米子さんにとって、ポップスって何ですか」

雑誌記者なら、ここからを大文字にするだろう。

「俺にとっては、自分を救い、成長させてくれた恩人だよ。聴いてくれる人への、感謝の気持ちでもある」

社長は、自分の胸に手をあてた。

「僕とは、解釈が大分違いますね」

「君が正直な人なのは、よくわかる。でも、まだ自分のことしか見えていない。それじゃあ、他のメンバーとの、アンサンブルは難しいだろうな」

「その通りです」と英治が言った。

米子社長は続けた。

「君は純粋で透明なんだけど、怒りの目をしてる。長いものに巻かれまいとして、いつも国境線に兵隊を置いている」

米子氏はその、あなたの言うところの国境警備隊から逃げようとはしないのか。変だ。それどころか、俺にグラスを差し出してくる。手元のビンビールを、社長に注ぐ。

「僕の考え、少し話してみてもいいですか」

社長はうなずいた。

俺はビールをあおった。

空いたグラスに、社長がビールを注いだ。

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