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翌日のサークル活動。優希は昨日の居酒屋の出来事を引きずったまま、部屋に向かっていた。頭の中では、「やっぱり別れるべきだったのか」「それともこのまま続けるべきか」と、ぐるぐると考えが巡る。胸の奥には、昨日のお酒と別れ話でざわついた感情がまだ残っていた。
教室に入ると、先輩はいつも通りの天真爛漫な笑顔で俺を見つけた。
「お疲れ、優希くん!クリスマスどうだった?」
優希は思わず苦笑する。
実は、彼女とクリスマスに別れ話をしてくると先輩には宣言していたのだ。
「その…別れられませんでした」
「ええ!?」
先輩は大きな声で驚き、周囲の目がこちらに向いた。
「声大きいです……とりあえず、別の部屋行きませんか」
俺は先輩に話を聞いてもらうため、隣の部屋に移動した。先輩は、俺の目の前に座った。その自然な距離感に、少し動揺しながらも、昨日のことを順を追って話し始める。
「彼女とは遠距離で、会えないことが多くて…LINEや電話のタイミングも合わなくて…正直、このまま続ける意味があるのか分からなくなって…」
先輩は興味津々に耳を傾け、時折頷く。その表情は無邪気で、まるで楽しそうに話を聞いているだけのように見えた。俺は、自然に自分の本音を少しずつ吐き出していく。
「……先輩も、彼氏さんと別れ話とかしたことあります?」
俺はつい口にしてしまった。
先輩はふっと笑い、軽く肩をすくめる。
「あるよー。私も別れようかと思って話を切り出したことはある。でも結局、思い出が忘れられなくて、ずっと付き合ってるんだよね。でもやっぱりこの人でいいのかなーって悩むこともあるし。……実は、他の恋愛もしてみたいと思ったり」
その話に、俺は少しだけ息を飲む。先輩も、迷いながら恋愛をしているんだと知って、どこか安心すると同時に、なぜか心の奥がざわついた。
「なるほど……そういうこともあるんですね……」
優希は答えるが、心臓の奥が少し高鳴るのを感じる。まだ先輩に特別な感情はないはずなのに、何か胸の奥が動揺している。
すると、先輩は冗談めかして、突然言った。
「ねぇ、浮気しちゃう?」
俺は咄嗟に目を見開く。まさか相談の流れでそんなことを言われるとは思わなかった。理性では「冗談だ」と分かっているのに、胸の奥がざわざわと揺れ、動揺を隠せない。
「え、え…?」
答えに詰まる俺を見て、先輩はにやりと笑い、軽く肩を揺らした。
「うそだよー、本気にしないで!」
天真爛漫に笑う先輩の姿に、優希の心はさらに混乱する。まだ特別な感情じゃない。でも、冗談の一言で心が乱される自分に、戸惑いを覚えた。
この時、優希は初めて、自分の理性と背徳心がほんの少しだけ揺れ動いたことを自覚するのだった。