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書き終えた今でも、相沢蒼という男の背中を思い出す。
彼は決して“完璧な探偵”ではなかった。
むしろ、不器用で、過去に囚われ、何度も間違える人間だった。
けれど――彼が最後まで信じたのは、「人の記憶」だった。
それが、たとえ偽りや改ざんの上に築かれたものだとしても。
霧島家の罪、香坂真理の幻、そして弟・涼の声。
すべてが“消えていく記憶”の中で、
それでも彼は一つだけ確かなものを見つけた。
「真実とは、正しさではなく、信じる力で形づくられる。」
この物語を書いている間、私は何度もこの言葉に立ち返った。
真実を暴くことは、誰かの嘘を壊すこと。
けれど同時に、誰かの“祈り”を守ることでもある。
霧に包まれた世界の中で、
相沢が最後に選んだ「truth(真実)」というコード。
それは“システムの停止”であり、同時に“心の再起動”でもあった。
彼の中で再び動き始めたのは、
兄として、探偵として、人としての“記憶”だったのだろう。
霧島翔へ。
あなたの芝居は、決して終わらない。
真理が言ったように、“真実は舞台の上で生き続ける”。
香坂真理へ。
あなたの名が“MARI”という計画に残っていること。
それは偶然ではなく、希望の象徴だったと思っています。
相沢涼へ。
兄への想いを、誰よりも静かに、誰よりも強く貫いたあなた。
その優しさが、物語の中心にあった。
そして、相沢蒼へ。
君の歩みは、まだ終わらない。
霧の先に、新しい“幕”が待っている。
「霧の館」シリーズをここまで読んでくれたあなたへ。
この物語の霧は、謎を隠すためのものではなく、
“人が抱える曖昧さ”を象徴するためのものでした。
正しいか間違いかではなく、
愛したか、守ったか、信じたか。
その曖昧さこそが、人を人たらしめる“真実”だと、
そう信じています。
霧の向こうにまだ見ぬ物語があるなら、
相沢はまた、歩き出すだろう。
次の舞台は――
『霧の館Ⅲ ― 真理の残響 ―』。
そこでは、「記憶を失った相沢蒼」が再び“真理”と出会う物語が始まる。
どうか、その霧の続きを見届けてほしい。
――2025年 秋、霧の夜にて
作者より
𝓕𝒾𝓃