祐希Side
 
 はぁはぁ‥と乱れる呼吸を整えつつ、部屋の前に到着する。
 太志と藍の部屋。
 
 藍と話をしよう。
 そう思い駆けつけたが、いざとなると躊躇ってしまう。
 
 もし‥今2人が‥
 
 そんな状況に陥っていたら‥
 
 
 そう思うと‥
 
 
 いや‥よそう‥。ちゃんと向き合うためにここに来たんだ。
 
 覚悟を決めて扉に手を伸ばす‥、
 
 
 
 
 
 ガチャ。
 
 
 「うわっ!?!?」
 
 
 
 手を伸ばすのと同時に扉が開き、思わず前のめりになってしまった。
 
 「えっ、祐希!?」
 俺を見て驚いてるのは‥
 太志だった。なんだろう‥心なしか余裕のない表情に見える。
 
 「何しに来たわけ?」
 「‥藍と‥話を‥しようと思って来たんだよ‥お前はどこ行くんだよ?」
 
 「藍と?‥はぁ‥だから言ったろ?話聞けって‥お前が素直に言わねぇから‥」
 
 「それは‥悪かった、冷静になれなかった自分に非がある‥ごめん」
 
 頭を下げると太志は頭をくしゃくしゃと掻き上げた。仕方ねぇな‥とボソッと呟きながら‥
 「ほら?藍に会いに来たんだろ?藍なら居るよ‥寝てるけど‥じゃ、俺は行くから‥」
 
 「えっ、どこ行くんだよ?」
 
 「どこ行くって‥俺がいたら話しにくいだろ?元々出るつもりだったから。そうだな‥お前の部屋にでも行くかな。そのかわり、しっかり藍と話し合えよ!分かったな!」
 
 そう言うと、足早に太志は出ていった。ありがとなと背中に伝えると‥応えるように小さく手を振りながら‥。
 
 
 
 
 
 「すやすや‥」
 ベッドを覗き込むと太志が言うように、眠りにつく藍がそこには居た。
 柔らかな前髪がまぶたにかかり、規則正しい寝息が聞こえる。
 
 
 あまりにもよく寝ているので起こす気になれず‥横に腰掛けゆっくりと寝顔を堪能する。
 
 普段はコロコロと変わる表情に振り回されるが、こうやって静かに眠っていると改めて綺麗だな‥と思う。見惚れてしまう。
 
 「藍‥話し聞かずにごめんな‥」
 
 眠っている藍に話しかけ、まぶたにかかる髪をそっと撫でた。よく藍が催促していたから‥。猫のように擦り寄り‥頭を撫でてと甘える姿が好きだった。あらわになったおでこにキスをする。
愛しい想いを込めて。
 
 
 「‥‥‥ん‥‥‥‥‥」
 
 
 その刺激で藍の瞳がゆっくりと開く。おぼろげな瞳の行方が空を彷徨うが‥次第に覚醒すると同時に俺の視線と対峙する‥
 「ゆ‥うきさん?」
 「‥ん、ごめん、起こしちゃった?‥藍と話ししたくて来た‥」
 
 「‥‥‥‥‥して?、」
 
 「えっ?」
 
 「‥‥もっかいして‥‥キス‥‥さっき‥してくれたやろ?もっかいして‥‥」
 
 「キス?」
 
 何のことだろう。キスはおでこにしたが‥それを言ってるとは思えない。
藍は寝惚けているのだろうか‥。寝惚けているから、もう一回して欲しいと言うのだろうか‥
 
 「くすっ‥夢の中で俺キスしてた?」
 
 からかうように言うと、藍の顔が不満げに膨らむ。ごめん、ごめん‥そう呟きながらキスを送る。包み込むように唇を塞ぐと、珍しく藍の方から舌が差し込まれてきた。情熱を含んだそれは何かを探し求めるかのように口腔内を撫で回す。
 
 時折、唇が離れまた吸い付くと‥リップ音が静寂な部屋に響き渡る。
 藍の口の端から透明な唾液が零れ落ちる。それでも、もっと‥と可愛い舌を見せるものだから‥理性が飛びそうだ。
 
 堪らない。
 止められない。
 
 唇を味わい尽くすと、夢中で耳にも舌を差し込みぢゅると吸い上げた。
 
 「やっ‥んん‥」
 身震いするように藍の身体が震える。耳が弱いのを知ってるから。息を吐きながら時折甘噛みして刺激を繰り返す。
 
 「ちょ‥やら‥まっ‥て‥」
 
 身体をくねらせながら逃れようとする身体を掴まえる。一度火照ってしまった欲望は簡単には鎮まらない。
 味わうように耳から首元へと唇を移す。
 「ひゃっ‥‥あっ‥‥‥あ’’あ’’‥」
 唇が動く度に切ない吐息が漏れ、俺の耳を甘く刺激する。
 「ん‥らぁん‥」
 感じてくれている事に気分が高揚し、そのままするりとズボン越しに藍の中心部分を握り締める。
既に脈打つそれを愛しそうに包み込み撫でると‥
 
 「やぁ‥‥さわら‥んで‥‥‥も‥‥む‥りや‥‥あっ、、 」
 一際高い嬌声が発せられ、俺の手を跳ね除けた藍の身体がビクンと大きく跳ねる。
 ‥あれ?もしかして‥‥
 
 
 その様子に‥確かめようと再度、刺激を与えていた藍のズボンを触ろうとするが‥
 
 バシッ!!!
 
 と大きく藍に手の甲を打たれ動きを制止される。
よく見ると藍の大きな瞳に涙が浮かび上がっていた。
 
 
 
 「嫌やって‥待ってって言うたのに‥」
 
 「えっ‥ちょっと、待って、何が嫌だったの?感じてたじゃん、だってほら‥」
 ズボンの湿る部分を指差し伝える。達した証なのだからと‥。
 
 
 なのに‥‥
 
 
 「祐希さんなんか嫌いや!!」
 
 
 顔を真っ赤にして叫ぶ藍の目からは大粒の涙が零れ落ちる。
 
 
 
 
 話をしに来たのに‥
 
 
 
 仲直りをしようと‥。
 
 
 
 
 俺はまた藍を傷付けてしまったのだろうか‥
 
 
 
 
 
コメント
11件
最高すぎです! 続き気になります!
フォロー失礼します! 続きが気になりすぎる!
恋ってもどかしい!本当にもどかしい!でも、この2人に関してはそのもどかしさすら可愛く思えちゃって☺️そろそろ仲直りする?それともまた拗れちゃう?続き楽しみにしてます!