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もう……本当に切なかったです。義一さんが「必ず助かります」と震えながら詩織さんに呼びかける場面、胸が締め付けられました。そして「守れなかった約束」というタイトルが、十五年前のあの夕暮れの重みを全部背負っているみたいで……。義一さんが自分の手についた血を見つめるラスト、何も言えなくて、ただその場に立ち尽くすしかなかったんだろうなと思うと、涙が出そうになりました。続き、気になります……。
十五年前――。
ZERO本部。
活動を終えたメンバーたちが片付けをしていた。
蓬萊は資料をまとめながら言う。
「皆さん。」
「今日もお疲れ様でした。」
「気を付けて帰ってください。」
義一は建物の外へ目を向けた。
「少し周囲を確認してきます。」
蓬萊は頷く。
「お願いします。」
-–
詩織は鞄を肩に掛ける。
義一が振り返った。
「詩織さん。」
「今日は俺が送ります。」
詩織は苦笑する。
「ありがとうございます。」
「でも、すぐ近くですから。」
「大丈夫ですよ。」
義一は少し困ったように笑う。
「最近は物騒です。」
「一人では帰らないでください。」
詩織は優しく微笑む。
「義一さん。」
「心配しすぎですよ。」
「また明日。」
軽く手を振り、歩き出した。
義一は少しだけ迷う。
だが、
建物周辺の警備確認を優先した。
「……急いで終わらせよう。」
-–
住宅街。
夕暮れ。
詩織は静かな道を歩いていた。
ふと足を止める。
「……。」
誰かの視線を感じる。
振り返る。
誰もいない。
「気のせい……かな。」
再び歩き始めた、その時。
「こんばんは。」
低い声。
20
あまね🍡💠
75
詩織は驚いて振り返る。
帽子を深く被った青年が立っていた。
穏やかな表情。
しかし、その目だけが異様に冷たい。
「あなたは……?」
青年は静かに口を開く。
「ZEROの人ですよね。」
詩織は警戒する。
「そうですが……。」
青年は少し笑った。
「能力って。」
「素晴らしいと思いませんか?」
詩織は戸惑う。
「もちろん。」
「人を助ける力にもなります。」
「でも。」
「使う人の心が何より大切です。」
青年の笑みが消える。
「また、その話か。」
「あなたたちは。」
「能力を危険なものとして広めている。」
詩織は静かに首を振った。
「違います。」
「私たちは。」
「能力を否定しているんじゃありません。」
「能力を持つ人も。」
「持たない人も。」
「安心して暮らせる社会を作りたいだけです。」
青年の表情が険しくなる。
「綺麗事だ。」
「能力を否定する人間に。」
「未来なんて語る資格はない。」
詩織は一歩前へ出た。
「あなたは間違っています。」
「能力は。」
「人を傷付けるためのものじゃありません。」
その一言だった。
青年の感情が爆発する。
「黙れッ!!」
青年が右手を振る。
ヒュンッ!!
目には見えない風の刃。
詩織は咄嗟に身をかわす。
しかし。
鋭い一撃が肩から胸元を切り裂いた。
「きゃあっ!!」
詩織は地面へ倒れる。
鮮やかな赤が広がっていく。
青年――中村一徳は静かに見下ろした。
「俺は。」
「間違ってない。」
「能力社会こそ。」
「人類の未来だ。」
再び右手を上げる。
その瞬間。
「待てッ!!」
義一の叫び声が響いた。
一徳は舌打ちする。
「……早いな。」
義一は全力で駆け寄る。
一徳は後ろへ飛び退く。
「逃がすか!」
義一も追い掛ける。
路地。
塀。
狭い通路。
あと少し。
届かない。
一徳は振り返る。
「勘はいい。」
「でも。」
「もう止められない。」
右手を振る。
風の刃がゴミ箱を切り裂く。
その一瞬の隙。
一徳は闇へ消えた。
義一は追うのをやめる。
振り返る。
そこには。
血を流し倒れる詩織。
「詩織さん!!」
義一は駆け寄る。
震える手で傷口を押さえる。
「しっかりしてください!」
詩織は苦しそうに目を開ける。
「……義一さん。」
かすかな笑顔。
「ごめんなさい。」
義一は首を横に振る。
「しゃべらないでください!」
「必ず助かります!」
震える手で救急へ電話を掛ける。
「救急ですか!」
「女性が能力者に襲われました!」
「出血がひどい!」
「場所は――」
数分後。
救急車のサイレンが近付いてくる。
救急隊が詩織を担架へ乗せる。
義一は震える手で携帯を取り出した。
蓬萊へ電話を掛ける。
「蓬萊さん……!」
声が震える。
「詩織さんが……。」
「能力者に襲われました。」
「今、東理病院へ救急搬送されています!」
電話の向こう。
蓬萊は言葉を失う。
「……分かりました。」
「今すぐ向かいます。」
電話が切れる。
救急車の扉が閉まる。
サイレンが鳴り響く。
ピーポー……。
義一は、その救急車を見送ることしかできなかった。
ゆっくりと視線を落とす。
自分の両手。
そこには。
詩織の血がべっとりと付いていた。
義一は何も言えない。
ただ、
血に染まった自分の手を見つめ続けていた――。
第65話へ続く