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あっやば尊い
置いていた場所を整理した為再投稿
* * * * * * * * *
「若井。」
「ん?」
「俺・・・。昔、若井のこと好きだったかも。」
元貴は昔を思い出しているのか、遠くを見るているように目を細めた。
ライブ打ち上げ、俺と元貴と涼ちゃんで軽く飲むことになった。
と言っても俺はジュースで乾杯。
俺の部屋で色々話しながら飲んでいると
「ごめん、僕ちょっと眠すぎるかも・・・。」
涼ちゃんは先に部屋に戻って行った。
「どうする?元貴も疲れたでしょ?」
「それは若井もでしょ。」
「そうだけど、俺まだアドレナリン出てて眠たくないんだよね。」
明日の為にも酒飲んでさっさと眠ってしまった方がいいかもしれない。
そう思っていると、元貴がビールを一気に飲み干した。
「若井。」
「ん?」
「俺・・・。昔、若井のこと好きだったかも。」
唐突に言われて目が点になる。
元貴はというと昔を思い出しているのか、遠くを見るように目を細めていた。
「・・・元貴酔っぱらってる?」
「・・・かもね。」
「・・・今、その話するんだ?」
「・・・。」
だって…
「昔俺が散々気持ち伝えた時、元貴は”はいはい”で済ませてたじゃん。」
俺の言葉に元貴は申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「大切な時期だったし、お互い余計な感情を持つのはよくないと思った。だって、勘違いかもしれないじゃん?」
「勘違いって・・・。」
こいつが簡単に人を信用できない性格なのは知ってる。だから伝えた。何度でも何度でも。その度、元貴にまともに取り合ってはもらえず、気持ちが伝わらない事に苛立ちを覚え、関係ない人に八つ当たりしたこともあった。
色んな事に疲れた俺は、彼の事を諦め自分の気持ちに嘘を吐く道を選んだのに・・・―――。
「若井。」
「・・・・。」
「今、幸せ?」
きっと数年前の俺なら何も考えずにただ自分の気持ちだけをぶつけていただろう。
けど、今は違う。
俺はいろんなものを背負い過ぎた。
「・・・幸せ、かな。」
少し逡巡しながらも“幸せ”だと告げると、元貴は優しく微笑んで頷いた。
「よかった・・・。」
自分の考えが間違ってなかったと満足しているようだった。
けど、1つだけ間違ってるよ
「ねぇ、元貴。」
「んー・・・?」
「俺、今でも元貴のこと・・・ーーー。」
「やめろ!!」
続く言葉は彼の拒絶の言葉で阻まれる。
「元貴、話しを聞いて。」
「そんな話聞きたくねぇし!それ以上口開くんじゃねぇ!!」
「元貴!」
「うるさいうるさいうるさいうるさい!!」
元貴は座ってたベッドから立ち上がろうとした。
このまま元貴が部屋に戻ってしまえばまた何もなかったことになってしまう。
「待って、元貴!」
反射的に元貴の腕を掴むと、バランスを崩した彼が俺の上へ倒れてきた。
「若井?!」
慌てて体を起こそうとする元貴に、片方の手でその首の後ろを掴んだ。
「?!」
頭が固定されて動けない元貴。
至近距離で視線が絡み合う。
あぁ、やっぱりこいつの瞳はめちゃくちゃ綺麗だな…。
「ずっと元貴の事が好きだったよ。ずっと、何年も前から。」
最初は才能に惚れた
そこから特別な存在になって
でも自覚した時はまだ幼すぎて
その気持ちをちゃん伝えることはできなかった
だからこんなにも遠回りをすることになってしまったんだろう
「俺はね、大森元貴にずっと恋してるんだよ。」
元貴の顔が苦しそうに歪み、目に涙が滲んできた。
それを見られたくないからか、俺の横にうつ伏せに倒れこむ。
「元貴。」
「・・・。」
「顔、見せて。」
「・・・。」
「ね?」
「・・・やだ。」
「元貴の顔が見たい。」
「・・・・。」
ゆっくりと顔を上げた元貴の瞳からは、大粒の涙が溢れていた。
人一倍強がりの彼は、きっと泣き方を忘れてしまったんだろう。
ただただ何かに耐えるように、静かに涙を流していた。
「元貴・・・。」
彼が頭を振る
まるで全てを拒絶するように
涙に濡れた彼の瞳が言外に告げる
―――『言わないで』―――
でも、俺もこのまま引き下がるわけにはいかない
「・・・・愛してる・・・・。」
静かに涙を流していた彼の唇から、耐えきれなくなった嗚咽が微かに零れる。
「長い間、待たせてごめん。」