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アメリカ西部、そこの中心部から少しだけ田舎の方へと入った場所にドイル家は大屋敷を構えていた。
ドイル家は一般家庭より少し裕福で、使用人を四人雇える程だった。
そこの一人息子のルーク・ドイルは、周りから「哲学家」と呼ばれている。なぜなら人生7年目とはおもえない程落ち着いているからだ。それなのに好きなテレビ番組はキャメライダーと言うのだから使用人はもれなくメロメロだ。
キャメライダーとは敵と戦う際、映画でよく見る撮影禁止を呼びかけるカメラ人間に変身するというヒーローものである。
ルークには一つの楽しみがある。
それは土曜日に、町の商店街へと出掛けてドイル家の運営している雑貨屋で売る予定の物を物色するということだった。
今日は土曜日である。急がないと開店して客に話し相手がとられてしまうから、ルークは母に「お店行ってくる!」と言いながら玄関を出た。
雑貨屋に着くとルークは奥の扉を二回ノックした。そうすると店長のケビン・スミスは「二回ノックはトイレのノック!」と微笑みながら言った。
この一連の動作は日常雑学戦隊ものの金字塔である日常知り隊炊飯ジャーのイエローの決めゼリフだ。
ちなみに子供向け番組には、全人類の髪の毛のカール度合いの平均を求めるという壮大な計画を遂行する番組「クルックルン」もマイナー的に人気がある。
ケビンは特にこれといって秀でたことはない平凡な黄色人種なのだが、ルークにとってはテレビ番組のネタが通じる唯一無二の友人のようなものだった。
「スミスさん、なにか面白いものはありますか?」
「んー、そうだね、ルーク君、好きな子はいるかい?」
「えっ、そ…な、なんで急にそんなこと!?」
「ふふん、ちなみにその子、何のキャラクターが好き?」
「だから!まだ答えていません!」
「これじゃない?」
「あっ!これは『蓋はプリクラ』だ!・・・でも今は『伝言ル~ジュ!プリクラ』なんですよ…」
「ほう?怪しいね、今まで女の子向けのテレビ番組にはとんと興味がなかったのに?」
「うっ、」
プリクラシリーズは、敵と戦う時、盛りに盛って戦う女の子向け番組である。変身の際、500円が必要な為、シリーズを通して主人公が金欠であるのも大きな特徴である。
「ふふふ、楽しみにしているよ。もう9時だ、僕は表に行くね。」
「はーい」
さてと。もう少しだけ物色するか、、プリクラは見ない見ない!
「なんだろ?これ」
それはビビッドカラーの玩具のような貯金箱だった。
「名前を書くと中に入った10円が日が経つごとに倍になる、、変な玩具だなぁ。」
それでもルークは気になってしまったので表に客が居ないことを確認してからケビンに話しかけた。
「ケビンさん、この貯金箱を僕に売ってくれませんか?」
「ふむ、それかー、よし!50$でどうだい?」
「う、高い、いいでしょう!これで!」
「はい、丁度確かに。」
普段いいヤツのケビンだが、金の事になると少しがめついところがあるので、学生時代に裏ではゲヒンと呼ばれていたこともあった。孤児院のでが影響しているのかもしれない。
「それじゃぁ今日は帰りますね」
「気をつけてー」
「・・・客来ないなぁ」
ケビンは軽くため息をついた。
12時の昼食が近づく中、ルークは帰路を急いでいた。が、その途中であることを思い出した。
「どうやってこれを部屋まで持ち込もう…」
ルークは一応御曹司にあたるので、外から持ち込むものは母による検閲が行われていた。こんな怪しさに満ち溢れた物を持ち込める筈がない。こういうのを仕入れるのは昼間会社にいる父なので、あの雑貨屋で買ったと言っても効果は無いに等しいだろう。
「うーむ。」
少し考えたがルークは一つの結論にたどり着いた。
「あの人達に手伝ってもらおう!」
あの人達、とはドイル家に雇われている四人の使用人のことである。
ルークの考えた作戦はこうだ。
まず庭で枯れ葉を掃いているであろうエブリン・パーカーに貯金箱を渡す。その後カミラ・ブラウンに母を事務所へ連れ出してもらい、その隙に僕が家に入る。だがその時に気を付けなければならないのがこの家唯一の男性使用人デイモン・クラークだ。彼は母寄りで、なおかつ感が鋭いもんだから、不用意に出会えば怪しまれるだろう。そこでアレッタ・ルイスに、どうやれば凌げるだろうか…色仕掛けでもしてもらおう。でも彼女の部屋をちらっと見た時、レッドブルが散乱していた。別の場所を作るのも面倒だし用事の伝言をしてもらおう。そうしたらパーカーさんに部屋まで持ってきてもらう。完璧な作戦だ。
「さて、決戦の時だ。」
ルークは一歩前に出た。
「パーカーさん、ちょっと頼みごとがあるのですが、」
「何なりと」
「このおもちゃを持っていてください。しばらくしたら僕の部屋からGoサインを出すので、そしたら僕の部屋まで持ってきてください。」
「承知しました」
次にブラウンのところに行くと、ルイスも一緒にいた。話をしていたようだ。二人に作戦を伝えた。
二人が動いたのを確認して、ルークは屋敷に入った。安全に部屋まで入ることができ、Goサインを出すとパーカーも来た。
「ありがとうございました。」
「また何かありましたらお申し付けください。それにしても、これ、ちゃんと増えるんですかね?」
「ははは…」
見たのかよ。と思ったが口には出さなかった。
今日はもう疲れたので寝ることにした。
「クー、クー、」
「ん、、ってもう昼か!」
鳩の鳴き声で目が覚めると、外はもう昼になっていた。
「貯金箱は…」
増えていた。
これに確信を持ったルークはクラークへと向かった。ルークが開けないように厳重に保管してもらい、成人した時に独立資金にするのだ。
これも含めて、四人の使用人を使う作戦である。
「クラークさん、ちょっといいですか?」
「なんでしょう…?」
こうして成人になったルークは、増えに増えた貯金箱の金で孤児院を設立した。また、長年の片想いの末結婚まで至った。
ルークにとってあの貯金箱はあってもなくてもいい存在だった。だがそれをプラスにできたのはきっと神の加護であろう。