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ちょい長です。
暴力暴言注意。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
校舎裏。
夕暮れの影が伸びて、
風が生ぬるく吹き抜ける。
「やっと来た」
先に待っていたこさめに、
なつが不機嫌そうな声を投げる。
「ッ…、なのねなつくん…、
ちゃんと話したくてッ」
「話?なんの?」
「今までしてきたこと、
謝罪してほしくて」
「は?なんで?」
「だってひどいことたくさんしてきた
じゃん…今日で終わらせたいからッッ」
「その言い方やめてね キモいから」
なつの眉がピクリと動く。
次の瞬間、吐き捨てるように
声を荒らげた。
「何お前。立場わかってんの?」
「それはこっちのセリフッ」
「は?ッ お前、」
こさめに近づき胸ぐらを掴んで
「だれのおかげで生きてると
思ってんだよッ!!全部の服も学校も
ご飯も、全部全部俺の父親から出てる
金なんだよッッ!!!」
「は?…そんなのしらッ」
その一言が、なつの逆鱗を踏んだ。
怒りと涙を混ぜた目で、吹っ飛ばしたあと
拳を振りかざす。
「お父さん返せよッ…!!俺の生活全部
返せよ!!お前のせいでッ!!!」
ドスッ、ドンッ、と乾いた音。
こさめの体に拳と足が何度も
叩きつけられる。
なつの嗚咽混じりの暴力。
「ッ……!」
こさめは血を滲ませながらも、
顔を上げる。
「ッハァハァ…、気…済んだ?死ねよお前ッ」
「……、ッいやだ」
こさめが今ある体力をすべて出すか
のようになつを押し倒す。
声が微妙に震えて
「チッ、やめろ…俺に勝てるわけないだろッ」
「それは……、どうかな?ッ──
らんくん!みこちゃんッ!!」
「はッ?」
背後から、足音が二つ。
校舎裏に現れる、らんとみことの影。
「なつッ!」
両肩と腕をがっちり掴まれ、
そのまま地面に押し倒される。
「離せッ!!おい離せって言ってんだろッ!!」
必死にもがくなつの声が、裏庭に響いた。
だが、らんもみことも力を抜かない。
「暴れんで、落ち落ち着いて」
「…俺らはもう、
お前にやられっぱなしじゃいねえんだよ」
強い力で押さえつけられた瞬間――
「やめッ…」
かすれた、震える声がこぼれた。
瞳の奥が遠い過去を映す。
――母親の姿。
押し付けられる腕の重さが、
支配と恐怖を 呼び覚ます。
体がこわばり、呼吸が浅くなる。
「やめ…やめてッ…」
涙が滲んだ視界の中、
必死に絞り出した声は弱々しく、
それでも地面に押さえつけられながら、
過去の恐怖と今が重なっていった。
ーーー
いるま視点――。
ー部活終わり
「……チッ、なんだよあいつ」
先輩の指示も片付け、ようやくなつを
迎えに行こうと教室を覗いた瞬間、
そこにいるはずの姿がなかった。
机の上には、
持ち物ひとつ置かれていない。
嫌な予感が、背中を冷たく這い上がる。
「おい、お前ら」
近くで騒いでいたモブ生徒の腕を
乱暴に掴む。
「なつ見てねぇか?」
睨みつけるように吐き捨てた声に、
モブはびくりと肩を揺らした。
「い、いや…知らないっすよ」
「ほんとに知らねぇんだな?」
刃物のような声で確認するが、
返事は震えているだけ。
歯ぎしりを噛み殺し、校舎を見渡す。
「……どうせ屋上だろ」
乱暴に扉を開け、屋上に飛び込む。
だが、風に揺れるフェンスの音だけが
響いていた。
「……っ、どこだよ」
苛立ち混じりに屋上のフェンスへ歩き、
視線を下ろす。
ぐるりと校舎の周囲を見渡して
――ふと、体育館の裏の影に、
不自然な人影が見えた。
「……ッ!」
その瞬間、胸がざわつく。
思考よりも先に体が動いた。
フェンスを蹴り返すように振り向き、
屋上から一気に出て階段を駆け下りる。
「なつ……ッ!!」
焦燥が脚を追い立てる。
心臓がうるさく鳴り、ただ一つの名前だけを胸に叫びながら――。
ーーー
「なつくんはいいよねッ…お母さん
家にいるだけで……、お父さん帰ってきて」
「はッ…?」
こさめの声は震え、目の奥には積年の
鬱憤がにじんでいた。
「こさめの家は、お父さんはもう…
こさの お父さんじゃなくなってたし……、
お母さんは全然帰ってこないしッッ!」
なつが苛立ちを隠さず睨み返す。
「俺だってッ…お前のせいでこんなに
苦しんでんのに」
「こさはなんもしてないッ!!!」
「ッ…、、そんな怒鳴んなッ…」
怯えて後ずさるなつに、こさめの声は
さらに鋭くなる。
「は?なんでそっちが怯えてるわけ?立場逆転しただけでそうなるの?……きっしょ」
「え……ポロポロ」
その一言に、なつの涙腺は一気に崩れ、
頬を涙が伝う。
「こさは耐えてたのに……こんなんにも
耐えられないんだ……?
みこちゃん、らんくんもいじめておいて
その態度はないんじゃない?」
「こさめは確かに……俺の意思かもしれなかったけどッ、、みことはッ…指示されててッ…」
「指示?……それって」
らんが眉をひそめて口を開いた瞬間――
「どちらにしろイジメはイジメでしょ?」と、こさめは冷たく切り捨てる。
「ッ…!こさの気持ちも考えてよッ!!!!!」
声を張り上げるこさめの嗚咽が、
狭い空気を震わせた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
わからせ大好き人です。
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