ある日を境に、俺たちはある噂の真偽を確かめることにした。
その噂の主は、隣のクラスの鈴木という男。彼には「ゲイでビッチ」「名器持ち」などという妙な評判がついていた。
鈴木と同じ中学だったという男からは、
「1000円で一発ヤらせてくれるらしいぞ」
という話まで聞かされた。
俺は数人の友達と、今月のテストの合計点数で勝負し、負けたやつが『鈴木とヤる』という罰ゲームをすることになった。
そして数日後、運悪く俺が最下位となった。
(……もうどうにでもなれ)
覚悟を決め、俺は隣のクラスへ向かった。
勢いよく教室の扉を開けると、視線が一斉にこちらへ集まる。そんな中、俺は鈴木の前に立ち、
「おい」
とだけ言って、その腕を引いた。戸惑う鈴木を連れ、人目のない体育館裏の道具倉庫へと向かう。
倉庫に入り、俺は鈴木の目の前で1000円札をちらつかせた。
「やらせてくれんだろ?」
鈴木は顔を赤らめ、小さく頷いた。俺のズボンを下ろし、鈴木の柔らかい唇が俺を咥え込む。
そして、そのまま最後まで終えた。
噂が本当かどうかは、もう考えるまでもなかった。正直、想像以上だった。
翌日。友人たちに結果を聞かれ、俺は咄嗟に言った。
「あの噂、デタラメだったぞ」
けれど、その日の放課後。
「おい」
気づけば俺は、また鈴木に声をかけていた。
「……っ」
鈴木が、昨日と同じように顔を赤らめる。その瞬間、胸が強く高鳴った。
俺は再び鈴木の腕を掴み、倉庫へ走った。
倉庫に着くなり、財布から1000円を取り出し、鈴木に渡す。
「ヤらせろ」
鈴木は無言のまま、俺の指示に従った。
そうして、俺たちは数日間、何度も倉庫で身体を重ねるようになった。
しかし、毎回1000円を払うのはさすがに厳しい。今日はやめておこうと、財布を持ったまま帰ろうとした。
そのとき、
「上野くん……」
聞き覚えのある声が俺の名を呼ぶ。
振り返ると、そこにはまた顔を赤らめた鈴木がいた。
「……悪い、今持ち合わせがねぇんだ」
すると、鈴木は少し悲しそうな顔をして、俺の手を握った。
「これ……もういらないから……」
そう言って、鈴木は俺の手のひらに、今まで受け取っていた1000円札の束を押し戻してきた。
「は……? どういうことだよ……」
困惑する俺の腕を掴み、鈴木はまた倉庫へと走り出す。
「おい鈴木、いい加減にしてくれ!」
何が起こっているのか理解が追いつかず、思わず声を荒げ、力強く腕を振り払った。
すると、鈴木は少し息を切らしながら、淡々と言葉を発した。
「僕……ずっと、あの日から……上野くんとしたときの快感が……忘れられなくて……」
「だから……」
「上野くんとだったら、お金はいらないよ」
言葉が出なかった。
俺は、鈴木を好きになっていた。
それを、自分でもうすうす気づいていた。
「……俺も、鈴木がいい」
気づけば、そう答えていた。
すると、鈴木はまた顔を赤らめる。その表情に、俺は衝動を抑えきれず——
鈴木にキスをした。
強引で熱い口づけ。唇が離れると、鈴木は蕩けたような顔で俺を見つめていた。
「好きだ」
ずっと言いたかった言葉が、ようやく口から零れた。
こんな短期間で。
しかも、最悪な出会い方をしたはずなのに。
鈴木は驚いたように口を手で覆い、ポロポロと涙をこぼした。
「本当……?」
「ああ、鈴木が好きだ」
「僕も……僕も上野くんが好き……です……」
「……え?」
思わず、口が開いたまま閉じられなかった。
まさか、両想いだったとは。
「バレてるのかと思った」
涙を拭いながら笑う鈴木が、可愛くて仕方なかった。
「恋人セックス……したい、です」
慣れない敬語で、遠回しに告げる。
「お願いします……っ」
鈴木の返事を聞いた瞬間、俺は彼を抱き寄せ、もう一度、深くキスをした。
コメント
2件
最近読み始めたものがシリーズ化される…!嬉しすぎます最高です🥺次のノベルも見てきますεε=(((((ノ・ω・)ノスタタタタタタタタ