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再び交わろうとしているかつての仲間達。
涙で揺れる瞳、憎悪に染まり狂気へと堕ちていく瞳。
友を思い走る光、迷いを捨てた影。
──光と闇がぶつかり合うとき、絆が試される。
カカシの指示通り、サクラは傷ついた香燐を回復させていた。
「お……お前……」
「今はまだ喋らないで!もう少しだから……」
香燐は弱々しい瞳で、サクラに視線を送っている。
(敵の……お前の気持ちなんか、わかりたくもねーんだ……だから……ウチの前でそんな“悲しい顔”で泣くんじゃねーよ!……ちくしょう……)
彼女達の頬には、同じ想いが含まれた涙が伝い続けていたのだった。
── 峡谷の橋下。
かつての師弟が対峙している。
「写輪眼ってのはな、うちはの証だ……うちは一族でもねぇ低俗な忍がその目を見せびらかすな!!」
サスケは怒りに満ちた眼で睨みつけながら攻撃を仕掛けるも、カカシの万華鏡写輪眼で攻撃は消し飛ばされた。
「まさか、うちはでもないあんたが万華鏡を開眼してるとはな……助かったのはどうやらその眼の能力らしいな。うちはの力に感謝するんだな」
「サスケ……お前の中にあるのは一族だけじゃないはずだ。憎しみだけじゃないはずだ。もう一度、自分の心の奥底を見つめてみろ……お前は本当はわかっているはずだ」
「………」
サスケの脳裏にかつての里の情景がよぎる。
笑い合う仲間。温かな日常。
「全員……笑ってやがる……」
サスケの顔に、強い憎悪が滲んだ。
「イタチの命と引き換えに、何も知らずヘラヘラ笑ってやがる!!」
「今の俺にとってお前らの笑い声は軽蔑と嘲笑に聞こえる!!その笑いを悲鳴とうめきに変えてやる!!」
周りの空気がうねり、大地が震え、水飛沫が上がる。サスケの須佐能乎がさらに進化し、咆哮した。
(これはまずい……!)
カカシの頬に、一筋の汗が伝う。
その大きな力が渦巻く場所に息を切らしたランがたどり着いた。
急いで橋の上から身を乗り出すと、ランはサスケの姿に息を呑む。
瞳は狂気に濁り、かつての面影を完全に覆い隠していた。
(そんな……あれが、サスケ?)
須佐能乎は黒炎を纏い、攻撃を仕掛けようとしている。しかし、大きな力の代償は彼の眼に確実に現れ始めた。
「くっ……!くそっ!!」
サスケは血走った目を強く擦る。焦点が合わず、視界が滲んでいる。
(サスケ……瞳力を使いすぎて、目が見えなくなってきているんだ……!)
そのとき、サスケの背後から忍び寄る影。
サクラが震える手にクナイを握り、サスケの背へと迫っていた。
カカシは彼女に気がつき、止めようと動き出す。
(カカシ先生に重荷は背負わせない!!私が全部やらなきゃ……)
だが寸前で刃先が震え、サクラはどうしてもその背を刺すことができなかった。
(覚悟……したはずなのに……!!)
堪えきれず、サクラの目に涙が滲む。その気配をサスケは見逃さなかった。
素早く振り返り、サクラの首を掴み上げる。
「うっ……!」
喉が締まり、彼女の口から苦悶の声が漏れる。
サスケの瞳が冷たく光った。サクラから奪ったクナイを逆手に構え、彼女の首筋を目掛けて振り下ろす──。
「やめろサスケ!!」
カカシは万華鏡写輪眼の影響で足元がふらつく。
ランは印を結ぼうとするも、薬の影響でまだチャクラをうまく練ることができない。
「サクラちゃん!!」
直接助けようと、地面を蹴り上げて橋から飛び降りた。
その刹那──。
素早く風を切る光が間一髪、サクラを抱き抱えて救い出す。
「ナルト……!」
「ナルト君!」
サスケがナルトに気を取られているその隙に、カカシはサスケを殴り飛ばした。
「俺以上にいいタイミングだよナルト、助かったよ……しかもランまで……目が覚めたのか」
「あ、ありがとナルト……ランさん、あの……サイやキバは?」
「まだ眠ってる……起きたのは私だけ」
ランは静かに答え、すぐにサスケへと視線を戻す。
ナルトとサスケの視線がぶつかり合っていた。
「サスケ、サクラちゃんは同じ第七班のメンバーだぞ」
「元、第七班だ……俺はな」
彼は冷え切った笑みを浮かべている。
ナルトは一歩前へ進む。
「サスケ……イタチの真実ってのを、トビってやつから聞いた!嘘か本当かはよくわからねぇ。けど、どっちにしてもお前がやってることは……わかるってばよ」
「!?」
その場にいた全員が、驚きに息を呑んだ。
サスケは僅かに眉を上げるが、視線は刺すように鋭い。
「ナルト……前に言ったはずだ。親も兄弟もいねぇてめーに俺の何がわかるってな……他人は黙ってろ!!」
「さっきだ……さっきやっと一人だけイタチの敵を討てた。木ノ葉の上役をこの場で殺した……ダンゾウって奴だ」
ランたちは動揺を隠せず、顔をこわばらせた。
(ダンゾウを……殺した……?)
サスケは恍惚とした表情で話し続けている。
「今までにない感覚だ。汚されたうちはが浄化されていく感覚……腐れ切った忍世界からうちはを決別させる感覚。
ある意味、お前達木ノ葉がずっと望んできたことだ。
昔からうちはを否定し続けたお前達の望み通り、お前達の記憶からうちはを消してやる!」
「お前達を、木ノ葉の全てを殺すことでな!繋がりを全て断ち切る事こそが浄化!それこそが本当のうちは再興だ!」
悲しみ、憎しみ、怒り、幾つもの負の感情が彼を支配していた。
ランはそっと目を伏せる。
(サスケは……本当はすごく優しい。イタチお兄様の真実を知って…… 更に憎しみに囚われてしまったんだ)
迷って、苦しんで、傷ついて──。
それでも突き進むしかない姿は悲しくて、目の前にいるのにこんなにも遠い。
(お兄様が願っていた道から、サスケはどんどん離れている……だけど、お兄様はこうなる事も覚悟していたかもしれない)
ランが思考を重ねていると、印を結んだナルトを制止する声がした。
カカシが、皆にここから去るよう促す。
「ここにいれば見たくないものを見ることになる、今のうちに行け!」
サスケが左手に雷鳴を纏い、徐々に距離を詰めて来る。
「カカシ先生、それってば……サスケを殺すってことか?」
「……行け!」
その瞬間、ナルトは影分身でカカシを抑え込み、螺旋丸と共にサスケの元へと駆けていく。
「待てナルト!」
「ナルト!!」
(もしかしたらサスケ……お前と俺が、逆だったかもしれねぇ!)
──螺旋丸!!
──千鳥!!
二人の力がぶつかり合い、眩い光が弾ける。
その衝撃波に水が弾け飛び、地が激しく震えた。
ラン達は、両腕で衝撃から身を守る。
二人の技が押し合い、やがてその中心で精神が深く繋がっていった。
──精神世界。
光の空間に、ナルトとサスケだけが向かい合って立っている。
「サスケ、お前も知ってんだろ……俺が昔、里の皆に嫌われてたこと。その理由ってのが俺ん中の九尾だ。俺も昔は里のみんなを恨んでた。復讐してやろうと思ったこともあるし……一歩間違えばお前みたいに恐ろしい事まで考えたかもしれねェ……」
「俺には、誰とも繋がりなんてないと思ってた。お前やイルカ先生に会うまでは。お前が、いつも一人なのは知ってた。同じような奴がいるって安心した……!すぐに話しかけたかった。なんだか嬉しくてよ!けどそりゃやめた……なんでもできるお前がうらやましくて、俺のライバルに決めた!お前は、俺の目標になった。何にもなかった俺が繋がりをもてた。お前みたいになりたくてずっと後を追いかけてた……」
サスケは何も語らず、ただナルトの声に耳を傾けている。
「俺は、お前と会えてほんとによかった!」
ナルトは満面の笑みでそう伝えた。
「ナルト……お前が今さら俺に何を言おうと俺は変わらねぇ!俺はお前も、里の奴らも一人残らず全員殺す!」
サスケの声は低く、燃えるような憎悪を帯びていた。
彼は吐き捨てるように続ける。
「お前の選択は俺を殺して里の英雄になるか、俺に殺されてただの負け犬になるかだ!!」
ナルトは曇りのない瞳で、サスケを真っ直ぐに見つめた。
「負け犬になんかならねーし、お前を殺した英雄なんかにもならねェ!そのどっちでもねーよ!!」
──ガッ!!!!
轟音と共に余波が渦巻き、ナルトとサスケが衝撃で吹き飛ばされる。
カカシがナルトを庇い、サスケについていたゼツが彼を守った。
「これで、はっきりした」
ナルトの声が響く。サスケは膝をつき激しく肩を上下させながら、虚な瞳でナルトを捉える。
二人の視線が再び交わった瞬間、闇を裂くように声が降りてきた。
「帰って休めと言ったはずだが」
空間が渦を巻いて揺らぎ、仮面の男“うちはマダラ”が姿を現した。
「九尾か……」
緊張が走る。カカシの表情が引き締まり、ランの瞳が鋭く細められた。
(マダラ……!)
「こいつらとはちゃんとした場をもうけてやる……今は退くぞ」
すると、ナルトが前へと歩み出す。
「サスケに……ちゃんと言葉で言っときてー事がある」
「……行くぞサスケ」
「待て……」
サスケが立ち上がると、ナルトは自分とサスケが戦えば二人とも死ぬ。サスケが里に攻めてくれば戦わなければならない。憎しみは全て自分にぶつけろ、サスケの憎しみを受ける役目は自分しかできないと訴えた。
そして──。
「俺も、お前の憎しみ背負って一緒に死んでやる!」
真っ直ぐ、偽りのない瞳で宣言するナルトへ、サスケはなぜ自分にこだわるのか、一体何がしたいのかと問う。
ナルトの答えは昔から何も変わらない。
“友達だから“
行き着くところまで行き、何も背負わなくなればあの世で本当に分かり合える。
仲間一人救えないやつが火影にはなれない。サスケとは自分がやる──。
ナルトの答えを聞いたサスケは、何かを否定したいかのように、お前を一番に殺してやると苛立ちを滲ませた。
二人の姿をランは見届け、静かに瞳を閉じる。
(ナルト君……ありがとう)
「わかった……サスケはお前に任せるナルト。だか……マダラはここで俺が処理する!」
カカシが万華鏡に光を灯した。
「やめておけカカシ。そんな術は俺にはきかない。行くぞサスケ」
マダラがサスケの肩を掴む。
闇に引き込もうとした、その時──。
「待て!!!」
ランの大きな声が響き渡る。
決意、覚悟と共に顔を上げた。
ゆっくりと開いた瞳には赤い光を放つ瞳が浮かび上がり、両手で素早く印を結ぶ。
「火遁、豪火球の術!!!」
巨大な炎がマダラに向かっていくが、そのまま彼の身体をすり抜けていった。
仮面の奥から、微かな動揺を含んだ声が漏れ出す。
「お前は……」
カカシ、ナルトやサクラ、サスケさえも驚愕に目を見張った。
「ラン……?」
「ランさん?」
視線が一斉に彼女に吸い寄せられる。
ランは視線を受け止めながら、毅然とした表情で口を開いた。
「マダラ……あなたのしていることは、うちは一族を侮辱している」
彼はその言葉に、皮肉めいた声を発する。
「……侮辱だと?うちはを侮辱していたのは里の方だろう」
じっと彼女を見つめ、マダラは低い声で問う。
「その写輪眼……お前は一体何者だ」
ランはゆっくりと手を上げ、頭のフードを外すと金色の髪がさらりと揺れる。
彼女の両手が静かに印を結び、白煙と共に偽りの姿を解放した。
「……!?」
サスケの顔色がみるみる変わり始め、瞳が大きく見開かれていった。
長く伸びた深い茶色の髪、見覚えのある眼差し。
そこに立っていたのは──幼い日の面影が残る幼馴染の少女。
張りつめた空気の中、記憶の扉が軋みをあげて開き、サスケの心に波紋が広がっていく。
カカシ、ナルト、サクラは想像を絶する事態に言葉を発することすら出来ず、立ちすくんでいた。
「サスケ……あなたがこれ以上憎しみに飲み込まれていくのを見たくない。イタチお兄様は“それ”を望んでない」
マダラは肩を揺らして低く笑った。
「まさか……まだ“うちは”の生き残りがいたとはな」
喜びとも侮蔑ともつかぬ声。
ミズノは凛とした眼差しで、彼を真正面から捉えた。
「復讐なんて何も生まない。残るのは憎しみと絶望だけ」
「フッ……綺麗事だな。お前は同じうちはでも、我々とは思想が違うようだ……ならばその瞳、もらっていく」
すると、ゼツがニヤニヤと笑いながら前に出る。
「俺がやろうか?すぐに済ませるよ」
その声が合図のように、無数のゼツが地面から立ち現れた。
警戒を強めたナルト、サクラ、カカシは即座に構えをとる。
しかし、ミズノが静かに歩み出し三人の前に手を伸ばす。
「動かないで」
短い一言に、自然と従わせるだけの気配が漂う。
三人の動きが止まった。
彼女の赤い瞳が、万華鏡の紋様へと変化する。
地が波打ち、辺りに圧が走った。
「寂滅陣!」
低く放たれた言葉と同時に、黒い円陣が地面に滲み広がる。
底の見えない奈落のごとき闇が、抗う間もなく一瞬で何体ものゼツを闇に飲み込んでいった。
「なっ……!?」
サクラとナルトが目を見開く。カカシの視線は静かな驚きを湛えて闇の中心に向けられた。
(一瞬でこれだけの数を……)
残されたゼツ一体だけが素早く後ろに後退し、ぎりぎり地に踏みとどまる。
「万華鏡を開眼してるのか……もう少しで飲み込まれるところだった……」
ゼツも驚きに苛まれていた。
しかし次の瞬間──彼女の足元から力が抜け、水音と共に崩れ落ちた。
右目からは鮮血が流れ落ち、呼吸が乱れている。
その姿を見たマダラは、仮面の中で目を細めた。
「お前の万華鏡に宿るその術……良い能力だが、チャクラの消費が激しいようだな。万華鏡写輪眼を開眼しているとなると、少々厄介だ。ここで始末しておくか……」
マダラが距離を瞬時に縮め、拳を突き出す。その軌道は殺気に満ち、寸分の迷いもない。
──瞬間、誰よりも早くミズノの前に立ち、拳を受け止めたのはサスケだった。
ミズノは眉を曇らせながら、彼の背を見上げる。
彼は自分でも説明できない衝動に、身体が突き動かされているように見えた。
胸の奥が、熱く締め付けられる。けれどそれは、喜びではない。
むしろ、どうしようもなく悲しかった。
その光景を見たサクラの心が大きく揺らぐ。自分を迷いなく切り捨てようとした彼が、今は彼女を庇っている。
(サスケ君は私を……)
複雑な感情が溢れそうだった。
ミズノに背を向けたまま、サスケの瞳はマダラを射抜いている。
「お前に話がある……早くしろ」
マダラは殺気に満ちた拳を静かに下ろし、仮面の奥で低く呟いた。
「……まさか、木ノ葉の奴を庇うとはな」
一拍置き、静かに言い添える。
「まだお前の中には“情”が残っているようだ」
「へぇ……さっきは迷わず切り捨てようとしたのに、今度は庇うなんて、同じ“うちは”だから?それとも……その女と何か訳あり?」
ゼツはからかうような口調で愉快そうにしている。サスケは二人を睨みつけると、苦々しく吐き捨てた。
「無駄口を叩くな……殺すぞ」
彼らの皮肉を切り捨て、そのまま振り返る事なく歩み出す。
「サスケ……!!」
ミズノの声は彼には届かず、マダラ達と共に時空の渦に呑まれて消えていった。
残されたのは、水のせせらぎと静寂──。
しばし誰も声を発さない。ただ風が吹き抜け、戦いの残滓を運んでいく。
サクラは胸に手を当て、俯いていた。
自分の決意の弱さ、サスケを救えなかった悔しさを噛み締めると同時に、彼が彼女を庇ったその光景が頭から離れない。
しかしそれを振り払い、膝をついているミズノの元へ駆け寄った。
「大丈夫ですか……?」
ミズノはサクラに支えられて立ち上がる。
「大丈夫……ありがとう、サクラちゃん」
カカシはその姿を真剣に見据えていた。
「……ラン……で合っているのか?とりあえず、一度里に戻る。そこでゆっくり話しを聞こうか」
ミズノは小さく頷く。胸の奥で覚悟した。
「はい……わかりました……」
──バシャン!!
「!?」
「ぎゃー!ナルト!!」
突然の水音と共に、ナルトが仰向けに倒れた。泡を吹き、白目をむいている。
カカシが急いで駆け寄り、彼の様子を確認した。
「頬の傷、これだな……サクラ、すぐ解毒してくれ」
「これって……あの時、私の毒付きクナイで?」
サクラはあたふたしながらも、瞬時に解毒する。
やがて──。
「うー……なんかまだ……気持ち悪いってばよ……」
ふらりと身を起こしたナルトが、ぼんやりとした目で唸った。
「ナルト……だ、大丈夫?」
サクラは気まずそうにナルトを支えている。
「さて……みんな戻るぞ。その子も連れて、まずはキバとサイのところへ」
カカシは香燐を背に担ぎ、戦いの余韻が残るその場を後にした。
キバとサイのもとへ戻ると、二人はすでに目を覚ましていた。
キバは不満げに腕を組み、少しふてくされた表情をしている。
「ふん!望み聞いてやって、サスケまで見つけてやったのによ。一人でカッコつけてんじゃねーってんだよ!サイはナルトにベラベラ喋っちまってるし、サスケには逃げられてんじゃねーかよ……ってかランはどこだよ!!それに、そいつら誰なんだよ!?」
キバは苛立ちをあらわにし、腕を振り上げながらミズノと香燐を勢いよく指差した。
表情には怒りだけでなく、状況を飲み込めない困惑の色も滲んでいる。
「里に戻ってからゆっくり話……」
カカシが言い終える前に、ナルトがさえぎるように叫んだ。
「キバ!でかい声で、だらだらぐちぐちうるせーってばよ!!!」
「あ!?ずっとぐちぐちしてたのはてめーの方だろナルト!!」
「あ!……それは言えてますね、単純で頭が悪いわりに考えすぎてましたからね」
サイは、ハハッと声を出して笑っている。
「サイ!!てめー随分といい顔で笑うようになったじゃねーか!!あ!?」
「ありがとう」
「褒めてねぇー!!!」
ミズノは彼らのやりとりを見て、自然と口元が緩む。重苦しかった空気がどんどん和やかになっていった。
ふと空を見上げると、まるで何事もなかったかのように青く澄んだ空が広がっている。
彼女はあの日から隠してきた全てを背負って、里へと帰っていく。
──物語は次なる幕を上げようとしていた。