テラーノベル
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「ねぇ、知ってる?」
桃色のふわふわした髪を揺らしながら、君が言う。
「人生って全部神様が決めてるんだよ。」
金木犀の香りが強くなってきた頃、テレビや新聞はこの話題で持ちきりだ。
『XXXX年 10月25日 月曜日
午後05時03分
符皇の者、逝きにけり。』
“符皇” というのは、この国で最も位の高い者のことである。
右手に 符 と呼ばれる文様が現れると、符皇になったことになるのだ。
ただ、それは代々一族が受け継いでるわけではない。
この広い世界の中から1人、無作為に選ばれるのだ。
符皇が亡くなって、次の符皇を探して……。
見つかるまでの間は子や親族が仮に務める。それがたとえ幼い子供だとしても。
「まぁそりゃそうか…。符皇さんももう年寄りだったからねぇ」
「それにしても、亡くなってからじゃないと次の符皇が分からないのって大変だよな。」
「そうだねぇ 。 」
いつもと変わらないゆったりとした、でも強い芯のある声で答えた。
中学生にとき初めてできた友達で、今では親友と呼べるほどになっている
そして同じ高校に入学し、見事同じクラスに。
彼は人見知りが強く、俺以外に話す友達がいないらしい。
「次は誰だろうな…。」
「くらちゃんだったりして」
「やめろよ、めんどくせぇ。」
“倉之助“という名前から、”くらちゃん”と呼ばれている。
俺は 璃隠と呼んでいる。
前までは苗字呼びだったが、璃隠は名前で呼べとうるさかった。
話の合間合間に名前を呼ぶたび、本当に嬉しそうに笑うもんだから、 名前を呼ばずにはいられなかった。
「まぁ…、可能性はあるけどな。 」
「やだなぁ、くらちゃんが符皇なんて」
「お前が言ったんだろーが」
「そーだけどさぁ」
女の子みたいに頬を膨らませ、目を背けた。
「僕だけのだもん」
なんて、自分で言ったくせに照れて、顔を隠す。
俺も恥ずかしくなって床を見るけど、
可愛いねなんて言って、さっきまでのことがないみたいにこっちをみている。
俺は符皇になれるほどの器じゃねーよ、と照れ隠しで言った。
それを聞いて、またふにゃと笑った。
「てかお前、ほぼ課題終わってねーじゃん」
「なんのためにおれんちまで来たんだよ」
「くらちゃんといると遊びたくなっちゃうんだもん」
俺は終わったワークを片付け、璃隠の見張りをする。
スマホをサッととりだしてヘッドフォンをつけた。
そしたら、璃隠がスマホを盗んだ。
シャーペンはかつんと机から落ちた。
「お前…、返せよ」
「ふふっ、したいことあるんだけど、いい?」
そう言って音楽アプリを開く。そしてアルバムをつくりだした。
“ Rionオススメセレクト “
「僕オススメの音楽アルバムだよ」
いつもの萌え袖を口に添えて笑う君は
触れると消えてしまいそうだった
「璃隠ってこんな曲聴くんだ」
「それってどういう意味?」
「いや、お前がこんなノリ系な曲…、イメージないなぁ、と。」
「ふーん、まぁいいか。あ、そろそろ帰るね、今日もありがと」
そういって、ほぼ終わっていないワークをカバンにしまい、そそくさと立った。
「じゃ、また明日ね。」
玄関から振り向かずに歩いていく璃隠の首元が
少し火照っていた。
「おはよ」
「くらちゃんおはよー」
いつもと同じように、学ランと少し破れたリュックサックをもって登校した。
璃隠はゆとりのあるカーディガンを指先まで覆っていた。
「相変わらずの冷え性だな」
「くらちゃんが強がりなだけだよ。ほら、温めてよ。」
冷たい左手を差し出しては、俺の手を掴んだ。
そのまま、手を繋いだ。
その2つの交わった手を見て、桜色の瞳が揺れた。
笑みが思わず零れたような、溢れたような表情だった。
「…もういい?俺、まだ準備終わってないから」
「あ、うん。ありがとね。」
その柔い笑顔は、手を解いても止まなかった。
「そういえば、お前ワーク終わったの?」
「あ…。」
「おいおい、何のために昨日俺んちに来たんだよ…、」
広い男子校の背にはまだ瑞々しい紅葉の葉。
授業が始まると、璃隠は筆箱の壊れたキーホルダーを弄る。
それをみて、俺も筆箱をみる。
おそろいだ。
昨日、璃隠が家に来てすぐのこと。
靴を丁寧に揃えて、2階へ上がる。
「あ、ねぇねぇくらちゃん、みてみて」
そう言って差し出したのは、さそりのキーホルダー。
「…さそり?」
「そう、さそり。守護の象徴?らしいよ」
「だから、くらちゃんをこの子が護ってくれるかなって。」
おそろいなんだよ、と言って色違いのキーホルダーを見せた。
控えめな桃色と、くすんだ緑。
お互いに、筆箱へつけあった。
璃隠は筆箱を持ち上げ、目を輝かせた。
「ほら、さっさとワーク終わらせるぞ」
「はーいっ、……、あぁっ」
璃隠が何かに気づいて、悲しむような声を出した
振り回していた時に、さそりのキーホルダーの足が一本折れたのだ。
「こ、こんなに脆いことってある…?」
「…、ふふ、ふはっ、壊すのはやすぎだろっ」
俺の笑い声とは裏腹に、璃隠は本気で悲しんでいるようだった。
だから、家のグルーガンを持ってきて無理やりくっつけた。
接着部分は白くなり、逆に目立ってしまった。
だが、璃隠はなぜか嬉しそうだった。
「んふ、ありがとぉ」
さっきとは違い、筆箱をふわっと抱きしめてそう言った。
外の小雨が、虹に変わって窓から璃隠を明るく照らした。
「さっきより好きになっちゃった。くらちゃんって器用なんだね」
「そりゃどうも、てかワークやれよ」
照れ隠しで強い言葉を放つのは、俺のクセだ。
言葉の節々まで柔らかい璃隠が、少し羨ましくなる時がある。
ワークをせっせと出す璃隠の手前で、
くすんだ緑のさそりのキーホルダーは、ひっくり返っていた。
コメント
4件
最近階段から落ちた乙葉です🙌 この頃はこれをちまちまと書いてました!実はもう最終話を書き進めている、、😎 高頻度で投稿できればいいなと思ってるのでしばしお待ちください💕
うわあ……すごく丁寧な空気感の話だったね……。金木犀の香りとか、放課後の部屋のぬるさとか、全部が映像みたいに浮かんできたよ🥀 璃隠の「僕だけのだもん」、ああいう甘さと脆さが混ざった言葉、すごく胸にくる……。それでいて照れて顔隠すところとか、萌え袖で口元隠しながら笑う仕草とか、細かい描写が「好き」って気持ちを静かに伝えてくる感じがたまらなかった。 壊れたキーホルダーをくらちゃんが直して、「さっきより好きになっちゃった」って言う璃隠……その瞬間の嬉しそうな表情が目に浮かぶよ。接着部分が白くなって逆に目立つところも、不器用な優しさみたいで素敵だなって思った。 符皇っていう世界観も気になるし、続きすごく楽しみにしてるね🌙
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花崎乙葉 ↻
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