テラーノベル
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「えっちなこと期待しとったん?」
🤪は、恋人をちょっと揶揄うみたいに、ライトな口調で、そう言った。
親しみとフェロモンの混じった声であった。
太った少女が夢に見る、ちょっぴり危険な、あまあまサディスティックセックスの空気感。
…しかし🦁は、キュートな反応を見せるのでは無く。
本気で焦り倒して、背中にじっとり冷たい汗をかいて…指先までガッチガチに硬直してしまった。
何故か。
🤪が、微塵も笑っちゃいなかったから。
ブルーシートで包まれた巨大な何かを踏みつけて、呼吸を乱すこともなく、こっちを見ていたからである。
「今日はそういうんじゃないんよね」
そう言いながら、🤪は🦁に歩み寄った。
足音はしなかった。
【経緯】
『これる?』
深夜一時、突然、🤪からラインが来た。
二人にとって、これは別に珍しいことでは無い。
割とよくあることだった。
だから🦁は特に驚きもせず、シャワーを浴び、適当なスウェットを頭から被って、出掛けたのだ。
お洒落は必要なかった。
ゴツゴツした指輪も、ネックレスも、しなかった。
どうせ外すから。
🤪が夜中に🦁を呼んだとき、二人はいつもそういうことをするから…
…そのつもりで、🤪の家にやってきたのはいいものの。
🤪は全く笑っちゃいなかった、というわけである。
これはエマージェンシーだった。
🤪は、不機嫌なとき、すごくすごく恐ろしいから。
得体の知れない影の形をしているから。
「ひと殺しちゃった」
🤪はドライな表情のまま、甘い声で言った。
吹き替え映画を見ているようだった。
「ぇあ」
「誰かわかるでしょ」
🤪は、床についた右足と、ブルーシートの上に乗せた左足に、交互に重心を移動させていた。
彼にとって、それは貧乏揺すりと変わらないらしかった。
そして、中に入っているものが生きているとは到底思えないほど、凹むのだ。
足が、めり込んだブルーシートの、奥の方まで入るのだ。
静かに。
「…」
🦁は味の無い汗を飲み込んだ。
それから、花瓶を置くみたいに、慎重に。
「…しかたなぃ、よ」と言った。
よく、よく、🤪の顔を見て。
間違えないように。
🤪は眉を下げて、「…かわいいね」と言った。
鼓膜を舐め回すウィスパーボイス。
脳の内壁をバウンドして駆け巡るような立体音響。
「車準備してくる」
「ぇ、」
「駐車場まで、このひと持ってきて。このひとより俺のこと選んでくれるなら」
いっぱい見比べて、いっぱい考えていいよ、と言って、🤪はいなくなった。
🦁は、僅かに開いた口から、はくはく息を吸って考えた。
一ミリも動けず、暫くそうしていた。…
◼️
黒い車が高速道路を走っていた。
🦁は助手席に座っていた。
「…」
「…🤪、」
「なになに」
赤信号。
🦁は上目遣いで🤪の横顔を見た。
🤪の薄い肌は、前の車の赤いランプに染まって、深みどり色の影が落ちていた。
「…これ今、どこ、向かってんの」
🦁の声は震えていた。
半笑いみたいに。
「🦁はかわいいね」
「…」
「…」
🤪は何も教えてくれない。
まるで頭を撫で回しながら、こっそり耳も塞ぐみたいに。
🦁は、自分は今、本当の「ばぶ扱い」をされていると思った。
🤪は今、ひとつひとつ、教えるか教えないか選んで、俺を形作っている気になっている。
「…」
「…このひとが好きだった?」
ブルーシートの塊は、後部座席に転がっている。
🤪は、何も答えてほしくなさそうに、口を殆ど動かさずに、そう言った。
「…」
「このひとと一緒に埋められたい?」
「ゃ、…」
「会わせてあげよっか」
「…ぉれ、っ」
「俺🦁の頼みなら何でもするって決めてンの。こいつが良ンなら俺が埋まるよ🦁が埋めて。そんでこいつ持ち帰って玄関でシックスナインでもしてろよ」
「…🤪、」
「…」
「🤪、お前しかおらんよ、」
「…」
「…🤪しか、」
「…」
「…」
「…えへ、かわいいね、🦁は」
「…」
「もう着くよー」
「…そ、」
「…」
「…」
◼️
「共犯やね」
「同じにおいがこびりついてる」
「だいじょうぶ、逃げる場所は確保してる」
「かわいいねゆうすけ」
…などと、🤪は言った。
新品のスコップで🦁が大きな穴を掘るのを、嬉しそうに眺めながら。
「…じゃ、入れてあげて」
「っ…ぅん、」
🦁はブルーシートに近づいた。
そのとき。
🦁の手首につけていた髪ゴムが、するりと落ちて。
ブルーシートの上に、のった。
不自然に。
まるで何かに吸い付けられるように。
何かに。
… 愛の力に。
🦁が求められているみたいに。…
瞬間。
🤪は、思いっきり振りかぶって。
シャベルを、ブルーシートの中身に突き刺した。
「あっ、ぁ…!」
「糞ッ。こいつ、この」
「ぁ…」
「しんだ、これでしんだかな」
「…ゃ…」
「…」
「…」
「…🦁の中にまだ生きとるんかな」
「、ひっ…!」
「今ここでセックスとかする?ほら…お清めセックスってやつ(笑)」
「っ、」
「それか土ン中であいつと乳繰り合いたい?」
「っやだぁ、🤪、だいすきだからぁ、っ」
「…」
「…ね…っ?」
「…」
「…」
「うそうそ。嘘だよ」
「…ひ、」
「全部うそだよ、帰ろ🦁」
ブルーシートが破れたところから、米がポロポロ出てきていた。
死体なんてどこにも無かった。
🦁「そんなん持った感じで分かるわ」・完
🤪…🦁としたいお片付けごっこがしたかっただけ。 ブルーシートの中身が米ってことはバレてもバレなくてもどうでもよくて、とにかく🦁と遊びたかった。やばい人。
🦁…駐車場まで持ってく段階で気付いてるけど、かわいいねって言ってもらうために怯えてるふりをしてる。やばい人。
コメント
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ずっと見ながら「わかった!、?わからん…」ってなってたけど説明?自己紹介?見てめっちゃ理解した、 狂い🦁?がやっぱいい…