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「今度、ブライダルスーツに参入することを考えていてな」


社内ビュッフェで彼とティータイムを過ごしながらのくつろいだおしゃべりに、「いいですね」と、笑顔で返した。


「ああ、もうファーストリリースの商品ラインナップはだいたい上がっているんだが、プレス広告・宣伝の前に一度また社内でコレクションを催そうかということになったんだ」


「そうなんですか」以前に見た華やかなファッションショーのステージングが思い出されると、ワクワクとする気持ちが湧き上がった。


──が、次に彼が発したセリフに、ワクワク感は一気に吹き飛んで、代わりに緊張がドッと押し寄せた。



「私と一緒に、結婚式のデモンストレーションをしてくれないか?」


「け、結婚式の……?」


驚きのあまり目を丸く見開く。


「ああ、ウェディングドレスはこちらで用意するんで、ぜひ私と挙式のデモをしてほしいんだ」


「えっと、でも、その……」あの煌びやかなステージ上に彼と共に自分が立つだなんて、信じられないような思いしかなかった。


「ブライダルスーツは、ウェディングドレス姿のパートナーがいてこそ、より映えるものだろう?」


「ええ、それは、その……そうだとは、思うんですが……」


誘っていただいたことはとても光栄なのだけれど、ステージでのお披露目は彼と並んでも引けを取らないモデルさんのような方が、やっぱり適しているようにも感じられて、それがましてウェディングドレスのような華々しい衣裳ならば、尚更のようにも思えた。

ダンディー・ダーリン「年上の彼と、甘い恋を夢見て」

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