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#2
side wki
放課後、部活に行くための準備をしていると、大森が隣でイヤホンをして、プリントの問題を解いていた。
普段は、HRが終わるとすぐに帰っていたので、珍しいなと思った。
wki「大森っていつも1人でいるよな」
話しかけるつもりはなかったが、ポロッと声に出てしまった。
もちろん、返事が返ってくるとは思わなかった。
omr「…1人が楽だから」
か細い声だった。
だけど、確かに聞こえた。
wki「え……?今、喋った?」
驚いて大森の方を見ると、彼はプリントと向き合っていた。
けれど、イヤホンは片耳だけ外れている。
無愛想な感じだったが、俺と会話をするためにイヤホンを外してくれたのかと思うと、嬉しくなった。
wki「…っなんで、返事してくれたの?」
少しテンションが上がって、変な事を聞いてしまった。
omr「……それは」
大森が少しだけこっちを見た。
いつもだったら目が合わないのに。
その一瞬が妙に長く感じた。
omr「若井が、俺の名前を呼んだから」
心臓が、少しだけ跳ねた。
別に、意識して呼んだわけじゃない。
けど、「大森」って言ったのはたしかに_
wki「へぇ、意外と聞いてんだな、俺の声」
omr「聞こえてたから、返しただけ」
大森は、すぐに視線を外して、またイヤホンを耳に戻した。
そこで会話は終わった。
それ以上、踏み込める気がしなかった。
でも、なんだろう。
心の奥に、何が残った気がした。
興味? 好奇心? それとも__
ボーっと考えていると部活の時間が迫ってきていた。
wki「じゃ、俺部活行ってくる」
誰に届くでもない言葉を投げて、俺は教室を出た。
足取りが、少しだけ軽くなっていたことに、自分では気がつかなかった。
side omr
放課後の教室。
数学のプリントが再提出になってしまったので、音楽を聴きながら問題に取り組んでいた。
窓の外はオレンジ色に染まっていて、まだ帰らない生徒たちの声が、遠くからかすかに聞こえる。
その声に混ざって、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
声の正体は隣の席の、若井滉斗だった。
彼は、いわゆる陽キャという存在で、話しかけられたことなど一度もなかった。
wki「大森っていつも1人でいるよな」
一瞬、皮肉にも聞こえたが、その声に悪い気はしなかった。
聞こえていながら返事をしないのも失礼だと思い、イヤホンを外して、いつも1人でいる理由を説明した。
wki「え……?今、喋った?」
返事が返ってこないと思われていたのか、喋った?と失礼なことを言われる。
俺だって、それくらいは出来る。
すると今度は、なぜ返事をしたのかと聞かれた。
なぜ?…それは
omr「若井が、俺の名前を呼んだから」
若井の方を見ながら、そう言った。
嘘、ではないが、どうしてこの答えが出てきたのか自分でも分からなかった。
wki「へぇ、意外と聞いてんだな、俺の声」
omr「聞こえてたから、返しただけ」
なんだか恥ずかしくなってきて、プリントの方に視線を向けた。
問題を解くふりをしていたが、頭の中はさっきの会話のことでいっぱいだった。
そもそも、なぜクラスの中心にいるような人が自分に話しかけてきたのだろう。
変なことは言ってなかっただろうか。
明日笑い者にされたらどうしよう。
ぐるぐる考えていると、隣の彼が部活行ってくると背中を向けて言い、教室を出ていった。
少しスキップしそうな足取りだったことに、彼は気づいているのだろうか。
ノベル書くの難しいですね
上手い人ホント尊敬します…
私の学校では帰る前の先生のお話の時間をHRって言うんですけど
みなさんの学校では何て言うんでしょうか??
コメント
4件
書くのうますぎですよ???!!! 構成とかめっちゃすきです参考になります...😖💗