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「なあ、おっさ」
「ちょっと待ってくれ、ナホヤ」
俺じゃダメだって分かってるよ
でも好きなんだって
声が枯れるぐらい、
あんたの好きなとこ言えるよ
誰よりも、好きだった
けど__
あんたは俺の事見てくれない
ずっと他の奴らを見てる。
隣には、頼れる副隊長
尊敬する総長
で、裏切った先にいる本命
あーあ
俺ずっとあんたのこと好きだったんだぜ?
あんたがトーマンに入隊して
話しかけてみたら意外とノリよくて
隣にいると居心地が良くて
ぶっきらぼうで、不器用で
でも人のこと良く見てて
あんたの何気ない一言が好き
あんたの鼻歌が好き
雨の日に上着を被せてくれたのも
捨て猫に傘をかけてやってたのも見てた
全部覚えてる
優しくしてくれたあんたとの思い出が
全部全部のしかかってくる様な気がした
あんたが裏切ってから
息が止まりそうだったよ 。
なんで?
裏切りを嫌ってたくせに。
俺が1番あんたのこと知ってると思ったら
なんも知らなかったんだな
思い知らされたよ
好きで好きで仕方なかった
でもあんたは違う
どうせ俺は都合のいい関係だった
「ん、おっさん、長ぇ」
「あぁ、すまん、大丈夫か?」
キスしてくれたあの日
あいつの唇の厚さを知って
あんたの温かさを知った気がする
あいつが苦しくないか心配してくれる度
「あーこいつ、俺のこと好きすぎだろ、笑」
って、思ってた
俺はただ
遊ばれてた?
初恋を取られて
ファーストキスも取られて
…
違う
違う違う違う__!!
あいつはそんなんじゃない
あいつがそんなことするわけない
悪意なんて無かったはずだ
裏切ったのもなんか大事な理由があって
分かってるんだろ?
違う
違う
違う
分かりたくない
分からなくてよかったんだ
やめてください
お願いします
神様
もし願いが叶うなら
あいつと初めてあった日に戻って欲しい
そしたら俺はもう関わらない
関わったからダメだったんだ
も う ダ メ だ 、 全 部 、全 部 忘 れ よ う
_____
2007年 〇月〇日 天気は晴天__
__そして、2年がたった
何も起こらない。
平穏な日々
罪悪感と嫌悪感だけが
日々日々薄れていく
そして
あいつはぽっくり死んだ
「東京湾に白骨化した死体が沈んでいました。身元確認を急ぐと共に___」
ニュースで流れてきた
あの日の抗争場所の海周辺に
白骨化した死体が海に沈んでいたんだと
そして後日
またニュースが流れて
身元確認したって
やっぱりアイツだった
なんとも思えない。
涙も
汗も
何も出なかった
ただ嘔吐いた
だけど
なんだか体が軽くなったような気がした。
ああ、俺って最低だな
俺は人の死を喜んだのか?
好きを裏返すと嫌いになるんだな
好きと嫌いは紙一重
好きを拗らせすぎると嫌いになる
そんなの
初めっからわかってたのに
_____
そして12年が経ってしまった
好きを拗らせた28歳、か
「らっしゃーい!注文は?おすすめはスマイリーだぜ!」
客の前だから笑える。
ソウヤの前だから笑える
本当は
笑い方なんて、
忘れた癖に。
____
ピピピピピピピッピピピピピッ
?
このアラーム、いつも使ってるやつじゃない..
あれ、なんか部屋も違う…
ここ、昔の俺の部屋か…?
ピロン
通知?メールか?
今日トーマンの集会あるから来いよ
??
は?
トーマン?もう解散はずじゃ…
と、とりあえず外行くか、!
______
記憶が刷り変わったように
記憶が上書きされたように
何もかもが変わっていた。
今あいつは目の前にいて
微笑みながら俺と話してる
隣にはソウヤもいて
ソウヤも楽しそうに喋ってる
でも、本当にあったんだよ
あの裏切りも
あいつの死も
でも、ここじゃ
”なかったこと”
にされてる
全部、夢?
いや、違う
あの感触、キスの熱
あれが夢のはずない
だけど今
目の前の現実は
あまりにも綺麗すぎた
綺麗な現実と
汚い夢との温度差で
汗が止まらない。
でも
夢だったなら
それでいい、かな。