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けっこう前に書いたやつ
【眠気】
「っは、……は、はぁっ……」
いやな夢を見た。ベッドの横に置いたスマホをつけると、まだ3時。眠たいのに目を閉じるのさえ怖くて、さっきまでの景色がフラッシュバックしそうでこわくなった。
肺が上手く膨らまない。呼吸ができない。どんどん浅く荒くなっていく息が更に不安を煽る。いやだ。こんなにも空気を欲しているのに喉の奥が閉じてしまって、息が出来なくて、暗い部屋には自分の呼吸音と時計の音だけが響く。こわい。しんじゃうかも。やだ。どうしよう。時計の針の音が煽るように反響して、焦れば焦るほどに恐怖が増幅して、視界は滲んでいってしまう。
もう、ダメだ。
意を決してベッドから抜け出して、ふらつく足を黙らせてどうにかなつくんの部屋までたどり着く。ベッドの中で大人しく寝息を立てるなつくんの横に潜り込んだ。ごめんなさい。自分ではもうどうにもできない。弱くてごめんなさい。怖い夢を見たくらいで、ちょっと寝れないからって。
なつくんにくっついてると心做しか呼吸はすこし落ち着いて、怖さも薄らいだ、気がする。でもまだこわい。眠れない。
「よしよーし……怖かったねえ……」
こさめが来て起きてしまっていたらしいなつくんの手が、頭をゆっくり撫でてくれた。微睡んだ眠たげな声。申し訳ないな。せっかく寝てたのにこさめのせいで起きちゃった。こんな子守りみたいなことさせてる自分がいやだ。
「おれんとこ来れてえらいね」
えらいよ、って繰り返して言う。えらくなんかないのに。迷惑かけてるだけなのに。寝てたの邪魔しちゃったのに。でもなつくんの心地いい声で言われたら、認めてもらえてる気がした。ちょっとだけだけど。怖さも更に遠のいている感じがする。
「大丈夫だよ」
低くてやさしい、頭の奥でじんわり響く声。だいじょうぶ、だいじょうぶ、って頭を撫でられて、抱きしめられて、さっきまで冷たかった体があったまっていく。頭がぼんやり霞んでいく感じがしたけど、怖くはなかった。いつのまにか呼吸もちゃんとできてる。
あったかいなつくんの腕の中で、今度はやさしい夢を見た。