「おめでとう。花嫁さん、気に入って頂けました?」
「あっ、北見さん」
「今回はいろいろありがとうございました。北見さんのおかげで助かりました」
声をかけてきた北見さんにすぐにお礼を伝える。
「いやいや、前の大阪支社にいた時こういうこと結構やってたこと多くてさ。無駄に知識も多くて。でも、今回二人の為に役に立ててよかったよ。オレも為になったし、やってて楽しかった」
前はあんなにこの人のこと憎かったはずなのに、今では一緒に飲みに行くほどの仲になったなんて変な感じするけど。
でも確かに同じ女性を好きになるだけ、腹を割って話せば実は気が合うことがわかって。
まぁ、透子の初めての相手でオレより前に透子が好きになったこととか、透子を傷つけて苦しめていたことは、正直まだ納得いかないところもあるけど。
だけど、それもまぁ昔の話だし、その時代があったからこそ、透子と今こうしていられるんだと思うし。
透子とはきっと運命で結ばれていたとしても、なかなか順調に幸せになれていたとは思えないから。
いろんな障害をお互い乗り越えたからこそ、オレたちは惹かれ合って支え合えて信じ合うことが出来ているんだと思うから。
まぁ北見さんも実際かなりの先輩でホントに仕事は出来るすごい人だから、今の副社長としていろいろな仕事を管理する立場の中でも、北見さんに任せることで確実に成功して上手く行くのも事実で。
それに気づいてからは、オレも無意味なプライドとか嫉妬とかそういう余計な気持ちは取り除いて、仕事相手として接するようになってからは、どんどんまぁ分かち合えるようになったというか。
今では逆に人生の先輩として、透子の前の彼氏として、勉強させてもらえることが多くて。
そんな不思議な関係になってるのが、自分でも少し笑える。
そして今回のの手作りの式のことも話したら、大阪支社にいた頃に、そういう経験があると聞いて、北見さんにもサポートやアイデアなどいろいろと協力してもらった。
実際、式にはオレも参加する側で透子には気付かれないようにしなきゃいけなかったから、全部が全部オレも準備出来なかったんだけど、その分北見さんがいろいろ手伝ってくれてここまでやってもらえて助かった。
「北見さん。ありがとうございます」
そしてそれを聞いて透子がお礼を伝える。
「いいね。こういう皆で作り上げる結婚式も。身近に皆が楽しんでる姿も感じられるし、オレもガーデンウエディングちょっとしたくなったよ」
「その時はぜひオレたちがさせてください。今回いろいろしてもらった分お返しします」
「おっ、いいね~。じゃあ、お願いしちゃおっかな~」
「北見さんは来年ですよね? じゃあ、その時は私もとびっきりのプラン考えさせてもらうんで」
北見さんもしばらくは透子のこと引きずってたみたいだけど、いつの間にかちゃんと別の人好きになったみたいで、その女性と来年結婚することが決まったそうだ。
大阪支社で元々取引相手だった彼氏のいる女性とまぁそういう仲になったらしいんだけど、彼氏とうまくいってなかったモノの相談を受けながらそれ以上関係を崩すのが怖かった北見さんは、そのまま東京に戻って来るタイミングで一度その仲も終わりにしたらしい。
その時にまぁ透子に再会して北見さんも何度かアプローチしたらしいんだけど。
実際はその当時もその女性のことが気になっていたらしく。
だからと言ってそこで透子にアプロ―チするのもどうかとは思うけど。
それで透子がなびいてたらどうしてたんだよ。
まぁそれもあってオレも透子との関係進められたのもあるから、実際はまぁ感謝しなきゃいけない部分もあるんだけど・・・。
だけど結局最終的にはその女性のが北見さんを忘れられなかったらしく、彼氏と別れて東京まで追いかけて来たっていうのを聞いた時は驚いた。
困ったフリをしていたけど、それ話していた時の北見さんが密かに嬉しそうだったのを憶えてる。
まぁ確かにそこまでするほどの魅力がこの人にはあるのかもだよな。
透子が惹かれただけの大人な男性で、オレにはない包容力があって。
でもまぁ、ホント北見さんもちゃんと大切にしたいと思える人が出来てよかった。
「よろしく。期待してるよ」
「はい」
そして北見さんは嬉しそうに笑ってオレたちにそう言った。