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「あっ、修さんだ。透子、ちょっと一緒に行かない?」
「うん」
少し離れた場所に修さんたちを見つけ、透子に声をかけ修さんの元へと行く。
「修さん」
「おぉ。樹、透子ちゃん」
「修ちゃん、美咲。さっきはありがとね」
「嬉しいよ。オレたちが二人の立会人になれて」
「二人にはホント感謝してる。私たち一番知ってくれてる二人だもん」
「あんたたち最後まで見守るのは私たちの役目だからね」
「透子。これ。作ってくれたの修さん」
側に置いてあるケーキを指差して透子に伝える。
「えっ! このウエディングケーキ!? 修ちゃんが作ってくれたの!?」
やっぱり修さんが作ったのを知って驚く透子。
想像通りの反応で逆に嬉しいくらい。
「そうだよ~。樹と透子ちゃんの為に頑張りましたよ~。久々にここまでのケーキ作ったからちょっと大変だったけどね」
「うちの店で出してるのは最近は私がメインで作ってるけどさ。実は修の方がこっちも得意で、最初は修がメインで作ってたんだよね」
「確かに美咲は修ちゃんに教えてもらって作り出したもんね」
「オレ昔修さんと一緒にバイトやってた時さ、一度店で結婚式のパーティーするからってケーキも用意してくれって頼まれたことあって。その時に修さんが作ったことあるんだよね。簡単でいいって言われたんだけど、でも出来上がったケーキがすごくてさ。なんかその時の印象がずっと残ってたんだよね」
「樹。あの時、感動してくれてたもんな」
「だから今回どうしても修さんにケーキお願いしたくて」
あの時はただ単にすごさに感動しただけだったんだけど、でもその時の感動はなぜかオレには印象的で。
今回のパーティーでもそのケーキはどうしても修さんに作ってほしくてお願いした。
「そうだったんだ・・・」
「正直あの時以上にオレめちゃ張りきって作ったから、かなりの自信作! どうだ樹?」
「うん。あの時よりマジですげぇ感動してる。やっぱすげぇ修さん」
「まぁ大事な二人の為だからな。オレもたまには本気出さないとな」
「修さんありがとう。ホント」
「ありがとね、修ちゃん」
ホントあの時以上にすごいケーキで。
今回もこんなにすごいの用意してくれてホントあの時以上に感動した。
やっぱオレにとって修さんは昔から可愛がってくれた人で、ずっと透子の相談も乗ってくれて、ホントに兄貴みたいな存在の人。
正直修さんがいなければ、透子とこんな風に一緒になれてなかったかもしれない。
修さんがどんな時もオレの背中を押してくれたり、はっぱかけてくれたり、力くれたりしたから、オレはここまで頑張ることが出来た。
ずっとどうしようもなかったオレをここまで変えてくれたのは、修さんのおかげでもあるから。
そんな修さんがここまで作るのは絶対大変だったはずなのに、快く笑顔で引き受けてくれて、ここまでのモノを作ってくれて。
ホントその優しさに温かい気持ちになる。
修さん今までいろいろ支えてくれてありがとう。
「透子。最後にオレたちが挨拶しなきゃいけないとこ行こうか」
「うん」
そしてオレたちは一番大切な人への場所へと二人で向かう。
「お母さん。今日は来てくれてありがとう」
「透子。おめでとう」
「親父。母さん。今日はありがとう」
「樹。おめでとう」
「おめでとう」
透子のお義母さん、そしてうちの親父と母親。
三人一緒にいる場所で、オレたちはそれぞれの親へお礼を伝える。
「お母さん。今日ハルくんと料理作ってくれたみたいでありがとね」
「ほとんどはハルが張りきってやってくれたんだけどね。でもね、嬉しかったわ。あなたの結婚式で作ることが出来て。実はね。お父さん、あなたが結婚する時に自分の料理でお祝いしてあげるのが夢だったのよ」
「え? そんなの聞いたことないよ?」
「そりゃそうよ。あなたがホントに小さい時で、初恋もまだしてない頃の話だもの」
「そんな前の話?」
「そうよ。一般的な父親っていうのは娘を結婚させたくないっていうのが普通なのに、うちのお父さんはあなたが自分の料理を美味しく食べてるのをホントに喜んでて、そんなあなたを見るのがホントに大好きでね。いつかあなたが大好きな人と結婚する時は、オレの料理を透子も旦那さんも来てくれた人にも食べてもらって、もっとその瞬間幸せになってほしいって、ずっと言ってたわ」
「そうだったんだ・・・」
「だけど、あなたがどんどん大きくなっていくと、少しずつお嫁に出すのが惜しくなって、しばらくしたら何も言わなくなってたけどね」
「だからか。私がそんな話聞いたことなかったの」
透子とその話を聞いて胸が熱くなる。
そこまで透子が愛されていたこと、やっぱりずっと幸せだったこと。
温かい家族の話を知れて、嬉しくて少し切なくなる。