テラーノベル
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「りーぬってさ、そーゆー事した事あんの?」
俺ん家でさとりーぬ放送が終わった後、たまたま冷蔵庫にあったお酒を、2人でなんとなく飲んでいた時のこと。さっきまでは他愛もない会話が広がってたのに、不意に聞かれてびっくりした。きっと酔いが回っているのだろう。
とはいえこの活動を始めてからこんな事は聞かれた事が無かった。自分から話すこともないし。家族にも話したことない。
そもそも性別に悩んでる俺に、皆はそーゆー話題をそっと避けてくれてた。配信で際どい質問が飛んできても、俺だけに振らないでくれた。
そんなスタンスを貫いてきてたのに、さとみくんはなんの躊躇もなく聞いてくる。ほら、今も犬みたいに俺の答えを待ってる。
「教えないし」
「お願い。俺さ、りーぬのそういうとこ知りたくて」
向こうは全く動じない。さとみくんって気になることがあったら、引かないし、追求し続けちゃうとこあるよね。
…ただ、ずっとこの感じをするのはお断り。
「ある…..」
「え??ほんとに??」
「うるさいな。」
「ちょっとだけ詳しくくれない?」
「いやだね」
「お願い!中学ん時?高校ん時?」
胸の前で両手を合わせて、軽く頭を下げるさとみくん
「それも答えなきゃだめ?」
「うん。まだ沢山ききたいことあるけど」
「…中学」
「ええぇぇぇっ、早っ!そんな早かったの?」
「うるさい、うるさい。…誰にも言ったことないんだからね….」
俺はため息混じりにソファの背に身を預けた。
しばらくの沈黙。
さとみくんはそれを追い払うかのように一気にグラスの中身を飲み干して机にトン、と置く。
「…..嫌だった?」
さとみくんの声が、急に静かになった。
ふざけたテンションだったはずのさとみくんとは変わってて。
「なにが」
「その時、無理してたとかさ。…後悔とか」
「……..」
一瞬だけ、喉がつまった感じがする。
さっきまでの軽口とはまるで違う空気がそこにあった。
さとみくんは俺の「ある」が、ただの体験談じゃないって気付いてると思う。
「後悔とかは…別に.。そういうのじゃなかったし….ただ」
途中で言葉が折れちゃう
言っていいのか、まだ自分でも整理がついてないんだ
「….自分が誰なのか、分かんなくなった時期だったから
そういうことする度に、どんどんぐちゃぐちゃになってた」
さとみくんは何も言わなかった。
俺の言葉を、ただ静かに聞いてた。
それが何故だか分からないけどすごく救われた気がする。
「なんかすまん」
「もういいよ…そこまで嫌じゃないし」
「そっか….」
それだけ呟くとさとみくんは立ち上がって、キッチンの方へ歩いてった。コップに水を入れて戻ってくる。
無言で、俺にそのコップを差し出した
「飲んどけ。顔、赤いし」
「…ありがと」
グラスを受け取ると、さとみくんは俺の隣に腰を下ろす。
少し近くて、でも、何にも言わなかった。
俺たちはまたしばらく、黙ってた。
でも不思議と苦しくはなかった。
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謎 没
下手すぎて
凄い昔の下書き
コメント
2件
すきです