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私はそのまま、自分の寝室へと運ばれた。
柔らかなベッドに横たえられ、布団がそっとかけられる。
視界の端には、見慣れた顔がずらりと並んでいた。
父と母。
ユリウスお兄様。
レオンハルト王子。
エリオス、セレス、カイ、ノア。
全員が、言葉少なに私を見つめている。
(……ごめんなさい)
そう思ったけれど、声にするほどの力は、まだ戻っていなかった。
ほどなくして、医師が部屋へと入ってくる。
「では、診察いたします」
慎重に私の様子を確認し、魔導具を使って魔力を測定する。
しばらくの沈黙の後、医師は静かに口を開いた。
「……結論から申し上げますと、命に別状はありません」
その言葉に、わずかに安堵の空気が広がる。
だが――
「ただし、原因ははっきりしています」
父が一歩前に出た。
「ルクシアは、大丈夫なのでしょうか」
医師は頷き、説明を続ける。
「ルクシア様は、並外れた魔力をお持ちです。
通常、魔力はその人の体の大きさや成長段階に見合った量が生成されます」
一度、言葉を区切り。
「しかし、ルクシア様は光属性であるがゆえに、生成される魔力そのものが非常に多い」
部屋の空気が、ぴんと張りつめた。
「小さな身体に、あまりにも大きな魔力。
体が溜め込みきれず、限界を迎えた結果が――今回の症状です」
母が胸元で手を組み、震える声で尋ねる。
「……今後も、同じことが起こるのですか」
「可能性は高いでしょう」
その答えに、ユリウスが思わず声を上げた。
「じゃあ……ルクシアは、また倒れるってことですか」
「適切な管理をしなければ、はい」
重たい沈黙が落ちる。
そのとき――
「失礼する」
低く、威厳のある声が部屋に響いた。
振り返ると、そこに立っていたのは王と王妃だった。
「ルクシアが倒れたと聞いてな」
「様子はどうですか」
急いで駆けつけたのが分かるほど、二人の表情は真剣だった。
父が簡潔に状況を説明すると、王は深く頷く。
「……光属性の負荷、か」
王妃はそっとベッドのそばに近づき、私の顔を覗き込んだ。
「小さな身体で……本当によく耐えましたね」
その声は、とても優しかった。
やがて、部屋の一角で自然と話し合いが始まる。
「今後、ルクシアをどう守るかが問題だ」
「王宮としても、全面的に支援しよう」
「無理な外出は控えるべきです」
「魔力を抑える術式の研究も必要でしょう」
大人たちの声が、次々と重なっていく。
レオンハルト王子は、私の手を離さずに言った。
「……ルクシアは、ボクが守る」
ユリウス、エリオス、セレス、カイ、ノア。
全員が、強く頷く。
「俺も。絶対に無理はさせない」
(……そんな)
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
私はただ、生まれてきただけなのに。
力を持ってしまっただけなのに。
それでも、こんなにも真剣に話し合われている。
――私の、未来のために。
そのとき、胸の奥で淡い光が、静かに脈打った。
それは不安と同時に、
確かに“守られている”という実感でもあった。
小さな身体に宿った、大きすぎる力。
それと共に生きていく未来が、
今、静かに動き出していた。