テラーノベル
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医師の診察から数日が経った。
私は無事に回復し、ベッドから起き上がれるようになったけれど――
周囲の様子は、以前とは明らかに違っていた。
(……視線、増えてない?)
部屋の隅には、常に誰かがいる。
兄――ユリウス。
レオンハルト王子。
エリオス、セレス、カイ、ノア。
まるで交代制かのように、誰かしらが私のそばを離れなかった。
「今日は魔法の練習だな」
父の声に、空気が少し引き締まる。
「無理は絶対にさせませんからね」
母は念を押すように言い、私の頭をそっと撫でた。
(……大ごとだ)
練習場所は、屋敷の中庭。
万が一に備え、魔力を抑える結界が張られている。
「ルクシア、少しだけでいい。光を出そうとしなくていいからな」
「できるところまででいいんだよ」
ユリウスとレオンハルト王子が、ほぼ同時に声をかけてくる。
(……近い)
二人とも、しゃがみこんで私と目線を合わせていた。
「体調が悪くなったらすぐ言うんだぞ」
「少しでも変だと思ったらやめようね」
後ろでは、友人たちもそわそわしている。
「……なんか、俺まで緊張してきた」
「大丈夫かな」
「何かあったらすぐ支えるよ」
(……そこまで?)
私は小さく息を吸い、手を前に伸ばした。
(出す、というより……流す感じ)
胸の奥を意識すると、淡い温かさが指先へと集まる。
――ぽう。
小さな光が、ふわりと浮かんだ。
「……出た」
「すごい……」
ざわ、と空気が揺れる。
けれど、今回は前のような苦しさはない。
(……大丈夫、かも)
「ルクシア、無理してない?」
レオンハルト王子が、すぐに顔を覗き込む。
「……だいじょうぶ」
そう答えると、全員がほっと息をついた。
「よかった……」
「本当によかった」
光はすぐに消えたけれど、体は安定している。
父が静かに頷いた。
「今後は、短時間で少しずつだな」
「付き添いは必須ですね」
(……付きっきり確定)
私は内心でそう思いながら、みんなを見回した。
不安そうで。
でも、優しくて。
(……守られすぎでは?)
そう思った瞬間。
「今日はここまでだ」
即座に練習終了の声がかかる。
「え、もう?」
「十分だろ」
「無理させないって決めたし」
(……私、なにもしてない気がする)
それでも。
光を扱う一歩を踏み出せたこと。
それを、こんなにも多くの人が見守ってくれていること。
胸の奥が、また少し温かくなった。
――魔法の練習は、
どうやら一人ではできないらしい。
少なくとも、
この人たちがいる限りは。
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