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「」せりふ ()こころ
桃 side .
ベッドの上、俺の首に顔を埋めたまま固まっているすちの頭を、俺はゆっくりと撫でた。
指先から伝わるすちの髪の感触は、相変わらず柔らかくて、少しだけ汗ばんでいる。
あんなに怖かったはずのすちの体温が、今は愛おしくてたまらない。
俺の周りからみんなを消した怪物。
でも、すちをそんな怪物に仕立て上げたのは、他でもない俺の笑顔なんだ。
この怪物の「生みの親」が俺なのだとしたら、俺にはこの人を拒絶する権利なんて最初からない。
「……らんらん?」
すちが、おそるおそるという風に顔を上げた。
その瞳には、今までにない激しい戸惑いと、俺に拒絶されるのではないかという子供のような恐怖が怯えとなって浮かんでいる。
俺が自分から強く抱きしめ返し、さらに声をかけて笑ったからだ。
すちは、俺が狂って壊れてしまったと思ったのだろうか。
俺はそんなすちの頬を両手で優しく包み込み、濁った光を湛えた瞳で、まっすぐにすちを見つめた。
「どうしてそんなに怯えてるの、すち。俺、どこにも行かないよ」
「らんらん……、俺が怖くないの? 俺は、らんらんの友達も、先生も、みんな……っ」
「怖くないよ」
俺はふふ、と喉を鳴らして愛おしげに笑った。
あの日、幼いすちの心を完全に撃ち抜いたあの笑顔のまま、さらに深く、ドロドロとした色を混ぜ込んで、すちの瞳に俺の顔を焼き付ける。
「だって、すちをそんな風に狂わせたのは、おれだもん。おれがすちに笑いかけたから、すちはおれだけの怪物になってくれたんでしょ? ……ねえ、ありがとね、すち」
「あ……、え……?」
すちの瞳が、驚愕で丸く見開かれた。自分がらんを檻に閉じ込め、支配していたはずだった。
なのに、らんの口から飛び出したのは、自分を「生み出した」という圧倒的な肯定の言葉。
すちの呼吸が、今度は別の意味で浅く、激しく乱れ始める。
「らんらん……らんらん、何を言って……」
「すちはおれのために世界を綺麗にしてくれたんだよね? おれら以外、いらないって言ってくれたよね。……だったら、おれもすちの共犯者になってあげる」
俺はすちの首に腕を絡め、自ら唇を重ねた。
驚きに強張るすちの口内に舌を滑り込ませ、今度は俺のほうから、すちの理性をドロドロに溶かすような深い、深いキスを与える。
「んぅ、……らん、らん……っ」
すちの喉から、切ない鳴き声のような吐息が漏れる。
立場は一瞬にして逆転した。
すちは俺を閉じ込める飼い主なんかじゃない。
俺の笑顔ひとつで人を殺し、俺の言葉ひとつで涙を流す、俺だけの従順な犬だ。
「ねえ、すち。おれをこんなに愛してくれて嬉しいよ」
キスを解き、耳元ですちの髪を弄びながら、俺は甘く、怖ろしい声を忍ばせて囁いた。
「でも、まだ学校にはノイズが残ってるよね? おれのことをジロジロ見てた奴ら、まだたくさんいるよ。……次は、誰を消してくれるの?」
その言葉を聞いた瞬間、すちの身体が歓喜と興奮で激しく震えた。
すちの瞳に、これまでにないほどギラギラとした、狂気と忠誠の光が灯る。
「らんらん……! ああ、らんらん……っ! 俺、らんらんのために何でもするよ! 望むなら、世界中のみんな、消してあげる……っ!」
すちは狂ったように俺の身体に貪りつき、今度は俺への「崇拝」を込めて、激しく、深く身体を重ねてきた。
悲鳴はもう上がらない。
密閉された部屋のなかに響くのは、お互いを狂わせ合う二人の、どこまでも甘くて重い、壊れた愛欲の音だけだった。
【の】
episode 15 . fin_
コメント
3件
🌾失っ.ᐟ.ᐟ いやもうご褒美でしかないじゃん休日なのにっっっっ もしあてぃしに尻尾が生えてたら今頃ブンブン振ってますよ(?) 立場逆転さいこっっっっっ ふへふへふへへ(?) よしちょっと落ち着こう。 よし。 チラッチラッあ"ぁ"ぁ"ぁ"あ さいこぉっっっっっ 翠桃^^
いや、やば…これ、完全に立場が逆転した瞬間だったね。らんがすちの狂気を「俺のせい」って受け入れて、むしろ肯定しちゃうところ、ゾクッとしたよ。すちが飼い主じゃなくて「俺だけの従順な犬」って…らんの方がよっぽど怖いわ。でも、お互いを狂わせ合うこの関係性、めっちゃ刺さる。続きが気になる🔥