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ガヤガヤ……
「で、相談したいことって?」
類に突然相談したいことがあると言われた結衣は、居酒屋の個室で類に尋ねた。相談となればファミレスやバーなどよりも居酒屋の個室が手っ取り早い。
「あ、お酒何か飲む?飲んだ方が話しやすいなら飲んでもいいよ。私は飲まないけど」
相談される側が飲んでしまうと相談にならない、そんな気がして結衣は飲まない宣言をする。類はその間もずっと黙り込んだままだ。
「とりあえず、なんか頼んでおこうか。えっと、ビールでいい?」
「はい」
このまま何も頼まないままなのもお店に悪いので、とりあえず飲み物と軽く食べれそうなものを注文する。手早くお店のタブレットで注文すると、結衣は類に視線を戻した。
(なんだろうな、あの会場の入り口にいたことも驚いたけど、相談ってなんだろう。仕事のこと?佐伯君、なんでもそつなくこなしているから困ったことなさそうって思ってたけど、何か困ってたのかな)
何か困っていたのならそれに気づけなかった先輩である自分にも責任はある。最近はルシエル推しということを類に聞かれてしまったことを気にしすぎていたので、もしかしたら先輩として気づくべきことに気づけなかったのかもしれない。
「相談って仕事のことかな?何か困ってた?そうだったら気づけなくてごめんね。ここでなんでも話してくれて構わないから」
ね?と首を傾げて結衣が言うと、類は結衣の顔を見て眉を顰める。
「仕事、のことでは、ないです」
「……え、そうなの?」
仕事のことではないとなると、他に何があるのだろう。仕事以外のことで相談を受けるほど、類と親交を深めていたつもりはない。ますます不思議になって類をじっと見つめていると、類は静かに深呼吸してから徐に口を開いた。
「佐々木さん、あの乙女ゲームが好きなんですか」
「……えっ!?」
突然、乙女ゲームの話をされて、結衣は拍子抜けする。相談に、何か関係しているのだろうか?
「え、えーっと、乙女ゲームが好きというか、乙女ゲームはしてなくて、元々はシナリオ小説が好きなの。それからアニメにもハマったんだけど、って、このことが相談と何か関係があるの?」
結衣の疑問に類は一瞬表情を固くするが結衣から視線は逸らさない。いつもはポーカーフェイスで何事にも揺るがない類の瞳が不安げに揺れていて、何かとてつもないことがあるのではないかと思わせるほどだ。
「信じてもらえないと思うんですけど」
「?」
「……俺、ルシエルの生まれ変わりなんです」
「……うん?はい?」
(今なんていった?ルシエルの生まれ変わり?ルシエルって、あのルシエル様?はい?どゆこと?)
言われたことが理解できず、結衣は混乱して絶句する。そんな結衣を見て、類は諦めたような悲しそうな複雑そうな顔をした。
「失礼しまーす、ビールにウーロン茶、唐揚げでーす」
「あ、ありがとうございます」
会話の途中で店員が品物を持ってきた。店員が去っていくのを確認して、結衣はまた類の顔を見つめる。
「えっと、ルシエルって、あのルシエル?『終末のホーリーナイト』の?生まれ変わり?いや、あの、ルシエルってゲームのキャラだよね?その生まれ変わりってどういうこと?いや、確かにすごく似ててびっくりしたけどね!あ、もしかして新手の恋愛詐欺みたいなやつ?この間、私がルシエル様のファンって聞いてたもんね。いや、でも私なんかにわざわざ詐欺する必要ないか、佐伯君黙ってとてもモテるだろうし。いや、ごめん、ちょっとなんか混乱してて、正直わけがわからないや……」
早口で一気に喋ると、頭を抱えて結衣はうーんと唸る。
「まぁ、そうなりますよね。すみません。突然すぎました」
「いや、こちらこそなんかごめん。でもまだよく理解できない」
結衣は苦笑して類を見ると、類は眉を下げて少し微笑んでいる。その微笑みはあまりにも痛々しくて、結衣は苦しくなり思わず心臓が止まりそうになった。
「その反応が正常だと思います。佐々木さんは悪くないです。でも、これだったら信じてもらえますか?」
そう言って、類は片手を自分の目の前に出した。すると類の薄い茶色の瞳が突然青く光りだし、類の片手から青白い炎が出現する。
(は?え?待って、これって、ルシエル様の『蒼き炎の鎮魂歌レクイエム』……!)
ルシエルは特殊能力で蒼い炎を出せる、という設定になっている。その特殊能力の名前がゴリゴリの厨二病なのだが、それすらも愛おしいと思えるほどに結衣はルシエルを推していた。
「な、んで、それを……?」
「ルシエルが出せる特殊能力。佐々木さんなら、わかりますよね。俺はこれが出せます。ただの人間には出せないもの、ですよね」
フッと青白い炎は消えて、類の瞳の色もいつもの薄い茶色に戻った。類はふう、と小さく息を吐き、結衣を不安そうに見つめる。結衣は、唖然として類を見て口をパクパクさせてから、ゴクンと喉をならした。
「ほ、本当に、あなたは、ルシエル様、なの?」
結衣の問いかけに、類は困ったように眉を下げて頷いた。