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無蛇野ver.
「む、ムダ先!!」
極度の緊張で冷たくなった手を伸ばせばゆっくりと近づきしっかりと握ってくれた。
伝わる体温はあったかくて、優しくて羅刹の時から変わんねぇから、それまでの焦りも緊張もじんわりと溶けて消えていった。
「落ち着いたようだな」
「うん。もう大丈夫そう!」
「ありがと、ムダ先!!」
スーツのムダ先をギュッと抱きしめる。香水の香りもしないムダ先だけの変わんない匂いを目一杯に吸う。
体を離せばすぐ横で不自然な高さでムダ先の腕が止まってた。
「…ムダ先、なんかあった?」
「俺、似合ってない!?」
問いかけようと少し眉を上げて気難しい顔のまま動くことをしなくなったムダ先に聞いても答えは返ってこないし、ずっと硬直したままで似合ってないのかと不安が出てくる。
やっぱり和服の方が良かったかな?
それともミニの方が好みだったのかな…なんて無蛇野にとっては見当違いの考えで頭を埋め尽くした四季。
「…いや、頭を撫でようと思ったが髪が崩れると思ってやめただけだ。」
安心しろドレスは似合っていると、軽く頬を撫でられた。ベールがかけられた顔を緩やかに抱えきれないほどの愛情を込めて撫でられる。
その感覚はこそばゆくて、ふと口からは笑みが溢れる。似合ってる…真っ直ぐで無駄のない度直球な褒めに四季は更に顔を綻ばせる。
「ありがと、ムダ先…」
「…何ことだ」
「んー…ほらムダ先って、無駄なこと嫌いじゃん…?」
「なのにさ、こーやって俺と式開いてくれて。」
「俺めっちゃ嬉しい。」
ベールで隔たれていても分かるほど四季は心底嬉しそうの笑った。手の中の愛おしいものを無蛇野は大切そうに撫でて薄らと笑みを浮かべる。
「四季が喜ぶなら、俺は無駄だとは思わない。」
「!…そっか」
「ありがとう…ムダ先」
その顔は幸福に包まれていて、細めた目の端には感涙が浮かんでいて無蛇野は持参していたハンカチで軽く拭う。
『あぁ、なんと幸福な事だろうか』
コメント
2件
むだしき幸せになってね!😭