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愛されたかった兄と、愛された弟の昔話
彼らは、双子で生まれました。
双子はとてもよく似ていて、よく間違われました。
そのため、ふたりは口調をそれぞれ変えました。
兄は、少し冷たく、男の子らしい口調。
弟は、元気で甘えん坊な口調。
弟は、才に恵まれていました。
人に好かれる才能です。
兄は交易や絵がとても上手でしたが、人に好かれる才はありませんでした。
兄は常に独りでした。
寂しくなんてありません。だって、それは仕方のないことなのですから……
しかし、心のどこかで、弟を羨んでいる自分がいました。
弟は、いつものように村の人々に甘やかされ、色んなものを持ち帰ってきました。
「お兄ちゃん!今日はね!こんなことがあったんだよ!」
弟は得意げに話します。
兄は、優しく弟の話を聞きました。
次第に、ふたりは大人になっていきました。
愛される、好かれる才の差も、広がっていきました。
兄は、静かに悲しみに暮れました。
「どうして俺は……」
そう、毎日、毎日毎日毎日……
自分を責めました。
兄は、ひらめきました。
「弟がいなくなれば、今度は俺が好かれる?」
ある日、親友にこう言いました。
「もし、弟がいなくなったら、俺はどうなるのだろう。」
親友は怒りました。
「なぜそんなことを言うんだ!!
弟が死んでも、お前の取り巻く環境は何も変わらないぞ。」
兄は驚きました。
「そうか……そうだよな。」
親友は尋ねました。
「まさか、お前……弟を手にかけようなんて思ってないよな?」
「まさか。そんなこと、兄である俺にできるわけがない。」
――――――――――――――
次の日、弟が泣きながら村人たちに訴えました。
「兄が死んでしまった……!」
弟は続けて、こう言いました。
「今日の朝、兄に部屋へ呼び出されて……
行ったら、兄がナイフを持ってたんだ!
それで、刺されそうになって、抵抗したら……
そのまま、兄に刺さってしまって……!」
弟は泣きながら、こう言いました。
「お兄ちゃん、最後にね、こう言ったんだ。
“こんな兄でごめんね”って……」
「僕ね、僕ね、
“お兄ちゃんがお兄ちゃんで本当に良かった”って言ったのに……
冷たくなっちゃってね……」
炎は、兄だったものを、灰に変えていく。
その前で、弟は――
いや、“弟の顔をした何か”は、
ずっと笑っていた。
親友は、少し違和感を覚えました。
弟よりも、身長が少し高いのです。
声も、少し低い。
……まさか。
親友は怖くなり、何も言わずに帰ってしまいました。
弟は、ただ火の前で笑っていました。
兄は、愛されずに死んだ。
ただ弟は――
この先も、永遠に愛される存在なのです。