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*・゜゚・*:.。..。.:*・’
ありがたいことに、それぞれに個別の仕事をもらい、集まれるのは音楽番組出演前の数時間だけ、という日が何日も続いている。
誰より忙しい、ピンクを冠する最年長様は、珍しくぐったりとソファに体を預けて目を閉じている。
「はやと、おつかれ」
その様子に休日の父親を連想し、苦笑しながら俺はコーヒーをあまり好まない彼のため、温かいほうじ茶を紙カップに注ぎ、差し出した。
ほうじ茶の香ばしい湯気が立ち上る。
「……ん」
カップを受け取るため、緩慢な動作で起き上がる。のそり、とでもいうのか、肉食獣を思い浮かべるような彼にしては荒い動作。よっぽどだな、とため息をつきそうになるのをなんとか堪える。
しんどいのは、勇斗のほうだ。
投稿用の動画を撮るために集まってなにやら笑っている年下組を眺める。
適温に覚まされたほうじ茶のカップを受け取った勇斗の隣に、腰を下ろす。
上等なソファは勇斗の体重で少し傾き、自然と身体が寄ってしまう。
あまり至近距離に寄られることを好まないのはわかっているため、不自然にならないように反対側のひじ掛けに少し身体を寄せた。
あんま騒ぎすぎんな、と3人に声をかけるとめいめいに適当な返答が返ってくる。
絶対言うことを聞かないときの返事だ。
2人掛けのソファの上、無理矢理に3人で座りながらあーでもない、こーでもないととりとめのない会話を楽しんでいる様子を眺め、そっと目を細める。
マネージャー陣に怒られない程度にしてくれよ、と内心祈りながら自分に淹れたコーヒーに口をつけた時、ずしりと肩に重さを感じる。
驚き、視線を向ければ、自分の肩に頭を預ける勇斗が居る。
寄られるのは嫌いなくせに、こういうことをするからずるい、と跳ねはじめた自分の心臓をうらめしく思う。なんでもない、触れ合いだ。これは。
「親子の縁は一世、夫婦の縁は二世って知ってる?」
ぼそり、とテレビではおよそ出さない低い声で問いかけられる。
「ことわざにあるやつ?夫婦は生まれ変わってもまた一緒になるって」
たしか、と聞いたことがあると思いながら視線を向けると、三人に向けた目線はそのままに勇斗が頷く。
夫婦と自分で口に出し、気恥ずかしさを感じるが、他意はないだろうと思いなおす。
近い距離に思考が上手くまとまらない。
今より若い頃は、本当にいろいろあり、何度も話し合いをしながら進んできた。移り変わりながらも、リーダーと最年長、という不思議な関係性の元、お互いを支えながらここまで来た。
そう考えれば、夫婦というのは、言い得て妙だ。
「昔からさ、俺がくたびれた時はお前が声かけてくれて、横になんとなくいてくれる。で、あいつらの声聞きながら『うるせー』って笑うのが、やっぱ一番落ち着くんだよなあ」
言いながら勇斗が眩しそうに目を細める。
「いきなりどうしたんですか?さのさん」
しんみりとした空気に耐えられず、少しからかうような声音で答えると、彼は少し照れくさそうに頭を掻いた。先ほどより、いくらか顔色は良くなっている。
最初から売れていたわけではない。何をやってもダメな時が続いて、苦しいときのほうが多かった。
そんな中、いつでも前に立って歩いていく姿を俺はいつもそばで見ていた。お互いの嫌なところも、情けない姿も、すべてを等身大で受け入れながら、気づけば十年という歳月を重ねていた。
「俺さ、来世ってやつがあるなら、またお前を見つけたいよ」
勇斗の言葉は静かだったけれど、騒がしい室内でも、まっすぐに俺の元へ届いた。
「今世だけじゃ、お前と過ごす時間が全然足りないんだ」
じわりと預けられた肩と同じように、俺の胸にも温かいものが広がっていく。
熱を含んだ声に、再度他意はないと、赤くなるな、と必死にポーカーフェイスを装う。
「っ…ばーか。俺だけじゃなくて、あいつらも見つけないと、だろ。生まれ変わっても、なんだかんだだ一緒にいるよ」
ここまで一緒に歩んでこられたのは、太智と、柔太朗と、舜太がいたからだ。
あんな騒がしい奴ら、生まれ変わっても見逃せるわけがない。
そう言って顔を覗き込みながら笑えば、一瞬の間の後、「そうだな」と勇斗も柔らかく頷いてくれた。
預けられたままの頭に、そっと自分の頭を寄せてみる。
嫌がられるかな、と少し緊張したが、そのまま受け入れられてホッと息を吐いた。
「あーーー! またいちゃいちゃしてるぅ!!」
話がまとまったのか、あるいは空中分解したのか。
隣同士で寄り添う俺たちに気づいた舜太が、大騒ぎしながら間に飛び込んできた。
それを見て笑う柔太朗と、呆れた視線を寄越してくる太智。
騒ぎの中で離れてしまった勇斗の体温に、少しだけ寂しさを感じながらも、こんな愛おしい日々が、どうか永遠に続けばいいと思うのだ。
素晴らしきかな、ゴールデンデイズ
#ご本人様とは一切関係ありません
笑う門には福来る
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