広瀬栞、スマホのLINEの文章は既読された。社員寮のその場しのぎの共同生活でのアンデッド・サーチャーを再起動してはパソコンのスイッチを入れる、遺された者の責任と末路……彼が凶悪の犯人ー
「生き残ったメンバーの定めって訳。二号ライダーを倒さなきゃ、しっかり朝食を」
「……」
カフェ・オ・レは喉を通らない、BOARDは滅んでしまった。剣崎は奥歯を噛んで自分への苛立ちを隠せないーブレイドとしての天命。現実の壁と倒すべき敵、弱々しき力と肩身にのし掛かる重荷。広瀬さんは手首の傷痕をガーゼにくるみスマホを取り出した。
「ただの時間稼ぎよ。仮面ライダーの先輩とバトル・ファイトの氷山の一角のね」
「……」
「悔しくないの? 男の子なら粋がりなさい、給与明細何度も見て思い出してよ。私だけのヒーロー」
「橘さんなのか? 何かの間違いじゃッ」
彼女は立ち上がり台所のシンクに立つ。寮は静観として人もまばらだった、窓の外は雪が降り頻るー
「今の内に御祈りしなさい。神様はアメンボから人類まで平等よ」
「カードが足りないんだ、武器が少なすぎる。アンデッドの能力を封印して自分の物として使えるんだろう? ラウズシステムは俺の十八番だ」
でも……? 広瀬さんは料理に取り掛かったー
「バイクで走らないなら手伝って。カレーライスくらい誰だって作れるでしょ?」
相川始は山奥に居た。
違和感の有る血液とAB型としての自分の特有なる存在。一線を脱したアンデッドとライダーとしての両立が闘いを喚ぶ者の未来を鼓舞していた、毛布を仕舞い白い息を深呼吸してはカリスに変身する。
「立ちはだかる仲間達、か」
林道を抜けた先にアンデッドが出現したーラウズせよ!
触手をつたいライダーバイクに絡まった白昼堂々の戦闘劇、カリスは急所を突いた。
「バトル・ファイトは俺が勝ち残る。生存本能のままに」
粒子状に成りカードの中にトランプのハート♥️として能力を行使出来る、新しいしもべ。
「きな臭いな。あれがブレイド」
組織は壊滅したー人間に戻った始は永遠の命を彷徨い流浪の身を生き続けている、己自身の存在価値と争いながら。
剣崎はライダーベルトを装着した、蒼穹の英雄はメシア(救世主)の叙事詩を物語に翔るHERO成し得た唯一無二のBOARDの夢。
「広瀬さんからのLINEだ、仕事仕事」
寮のロビーは恐ろしい程静かで宵闇に包まれていた、他意は完全に無い。ギャレンは今も何処かで匿っているー
「どうしてこんな非道い事を」
「おかえり。シャワーでも浴びて頭冷やしな、焦らない焦らない」
新世界のハッピーエンド。人々は未来永劫幸せを謳歌する、彼の人生と刹那の世界の中心にー
「全てのライダーを抹殺する! BOARDの仇討ちだ」
上級アンデッドに洗脳されて支配された橘は闇へ堕ちてゆく……伊坂は研究施設にて嗤う。
「面白い。これがニンゲン、ギャレンー仕事だ」
今は知る由も無い、仮面ライダーの運命である。
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