君が言う、透き通る声。
「わぁ、素敵なシトラス。今日も看に来てくれたんだね。」
その声が、また聴きたい。
「…あい、してたよ…。今迄でありが…と…。」
君が最期に放った言葉。鈍色の折れ線は、徐々に弱まって…最期には、君と同じ様に、ぱたりと息をしない。淑やかな病室に滞った、シトラスリボンの良く似合う君。しとしとと長雨が、梅雨の匂いを運ぶ。そんな一刻。重すぎる一刻。少しばかり蒸し暑い梅雨が、君の体の冷たさを…実感させる。
エクリュのフレームに、斑点滴る。君は最初から、居なかったみたいだね。僕の思いも…今となっては淡い、この恋心も…無かったんだ…忘れなきゃいけないんだ…。でも、ずぅっと脳裏に蘇る。君の微笑む姿が、一寸鬱陶しいくらいに蘇る。だからこそ、忘れられないんだ。無かったことにできないんだ。失くなっちゃいけないんだ。硬い、空から降る銀線に打ち砕かれながら、今日という日を生きていく。傘なんて、持てない。
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