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「‥‥‥。」
どうやらあのあと寝てしまった私は、見覚えのある保健室の壁を見つめた。襖から盛れる光を見るに、丸一日眠ってしまったのだろう。
体を起こすと、綺麗に巻かれた包帯が目に入る。
「‥‥気配、バレバレですよ。学園長。」
静かに目を閉じ言うと、天井から学園長が降りてきた。
「ばれておったか。お主のその気配察知能力は他のものにも身につけてほしいものじゃの。」
「よく言いますよ。わざとでしょう?気配を完全に殺さなかったのは。」
「‥‥ここに来たのは、お主に言わなければいけないことがあるからじゃ。」
「無視ですか、」
学園長は私の隣に座った。
「竹谷八左ヱ門は強制退学じゃ。」
静かに告げられた言葉に、私は下を向く。
「‥‥‥ですよね。あんなことしてしまいましたし。明日には荷をまとめて出ていきます。」
「何を言っておる。お主が出ていく必要はない。」
「へ?」
思わず裏返った声を出してしまった。
「今この場に、お主の退学を望んでる者はおらんからの。」
「この場?」
今この場には自分と学園長先生しかいないはずだ。
バン!
首を傾げていると、襖が勢い良く開いた。
驚いてそちらを見ると、襖を開いたでのであろう三郎が立っており、三郎の横には雷蔵、勘右衛門、兵助が立っていた。後ろの方をを見ると、1から4年生、6年生がいる。
「へ?」
「竹谷八左ヱ門という男は、この学園のどこを探してもおらん。お主、名はなんというのじゃ?」
頬を、一筋の涙が流れた。
「‥‥はつかです。竹谷、八華といいます‥!」
涙声でそう言うと、学園長は満足そうに笑った。
「竹谷八華。お主を5年生に編入することを許そう。クラスは5年ろ組に入るといい。」
「ありがとうございます‥‥!」
頭を床につくくらい下げると、誰かに頭を撫でられた。
「言っただろ。お前は一人じゃないって。」
顔を上げると、仏頂面の三郎と目があった。
「さぶろ、」
「竹谷八華。」
私の言葉に被せて私の名前を読んだ三郎は、私の目の前に座り、見たことのある組紐を私に突きつけた。
それは、三郎が私にくれた組紐だった。
「私と、付き合ってくれ。」
一瞬、理由がわからなくなり目をパチクリさせると、三郎はいつになく真剣な顔で私を見ていた。
「‥‥‥何で、」
「君が好きだからだ。」
「私は、お前に相応しくないんだぞ。」
「私に相応しいかは私が決める。」
「沢山の人を殺して、」
「私だっていつかはそうなる。」
「お前たちを騙して、」
「誰だって知られたくないことくらいある。」
「こんな私でいいの?」
私がそう問うと、三郎は見たこともないくらい優しい顔で笑った。
「お前じゃないと駄目なんだ。」
「‥‥っ!」
頬を涙がつたう。
「ハハッ、お前泣き虫だな。」
「うるさい、」
「で?返事は?」
私は三郎の手から組紐を取り、髪に結んだ。
「勿論、はい。だ。」