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「お~い!三郎〜早く来いよ~!」
丘の上から八華が手を振りながら私を呼ぶ。
「分かってる!ちょっと待て!」
慌てて丘を登ると、そこには9個の石が並んでいた。
八華は石の前に座っており、隣に座ると私の肩に頭をのせた。
「この石は?」
「‥‥‥家族の墓。十年前、私がここに埋めたの。」
八華はどこか遠くを見つめながら言った。
よく見ると、石には名前が刻まれていた。
「‥‥‥左から順に、一兄さん、二兄さん、三兄さん、父さん、母さん、よつ姉さん、いつ姉さん、りつ姉さん、七兄さん。」
静かにつむがれた言葉はとても弱々しかった。
「今日はね、命日なの。三郎と来たかったの。報告も兼ねて、まぁ三郎が来るの遅かったからもうすませたけど。」
柔らかく笑った八華は立ち上がった。
「さてと、行こうか。」
「あぁ。」
丘をおり始めた八華を確認した三郎は、石の前に跪いた。
「はじめまして。八華さんとお付き合いさせてもらってる鉢屋三郎です。挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。はじめてあった男にこんな事言われるのは嫌かもしれませんがいつか、八華さんと婚儀の挨拶に伺いますのでその時はよろしくお願いいたします。」
「三郎〜早く〜!」
「あぁ、今いくよ。」
八華の方へ行こうとしたとき、三郎の横を風がとおった。
ー八華を、よろしくね。ー
驚き振り向くと、9つの石の前に9人立っていた。全員身体は透けていて、どことなく八華と似ている気がする。
「‥‥‥必ず、幸せにします。」
気づいたらそう呟いていた。
真ん中に立つ黒髪の女性が優しく微笑んだ。