テラーノベル
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玲司が、元貴の部屋へと戻っていく。滉斗は、その背中を、ただ茫然と見つめていた。しかしその時、滉斗の脳裏に元貴が自分にだけ見せた、あの涙と震える肩が蘇る。
元貴は、若頭として強くなければならない。それは玲司が言う通り、間違いないことだ。
しかし、元貴は元貴として、弱さを受け止めてくれる場所を、誰よりも必要としていた。そして、その場所を自分は与えることができたのだ。
そのはずなのに、何故だろうか。玲司が元貴の肩を抱き寄せた時、胸が締め付けられるように苦しかった。それは、ただの苛立ちではなかった。
(俺は、なんでこんなに…イライラしてるんだ?)
玲司が話していた元貴の過去、自分には知りえない、彼らの二人だけの世界。その親密な空気が、どうしても気に食わなかった。
(アイツが元貴の昔を知ってるからって、何なんだよ。…俺は、今の元貴を知ってる…)
そう自分に言い聞かせても、胸の奥のモヤモヤは消えない。いやむしろ、より黒く、重くなっていくようだった。
そして、一つの恐ろしい考えが、滉斗の頭をよぎった。
(俺、元貴のこと…取られたくないって、思ってる…?)
玲司は、自分と元貴の絆を、簡単に壊せる力を持っているのかもしれない。元貴にとって、玲司は昔からずっと傍にいた、家族のような存在だ。そんな男に、「君は元貴の役に立たない」と言われ、このまま元貴が自分の前からいなくなってしまったら…。
その想像に、滉斗の全身から血の気が引いていく。
それは、友情とは違う。もっとドロドロとした、独占欲にも似た感情だった。元貴が、自分以外の誰かに甘えるのを見るのが、耐えられない。
滉斗は、自分の抱いていた感情の正体に気づき、愕然としながら、ただただその場で立ち尽くしていた。
翌日。土曜日の昼前。
滉斗は、いつもより少し早く、組の屋敷に足を運んでいた。胸の奥に渦巻く、昨日の夜に気づいた感情が、彼を突き動かしていた。
屋敷の門をくぐると、元貴が玲司と一緒に廊下を歩いてくるのが見えた。元貴は、いつもより少しだけ寝癖がついた髪を気にも留めず、玲司と楽しそうに話している。玲司は、元貴の肩を、当たり前のように抱き寄せていた。
(泊まったのか…)
その事実に、滉斗の心臓はドクンと嫌な音を立てる。自分には知る由もない、玲司と元貴の夜があった。二人の間に流れる空気が、まるで自分の知らない秘密を隠しているように感じられた。
「あ、滉斗!」
元貴は、滉斗に気づくと、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「ごめん、全然気づかなかったよ」
元貴の無邪気な言葉が、滉斗の心をさらに締め付ける。しかし滉斗は、その感情をぐっと堪え、真っ直ぐ玲司の目を見た。
玲司は、昨夜と同じように不敵な笑みを浮かべて、滉斗を見ていた。
「…玲司さん」
滉斗は、そう言って玲司の肩に手を置いた。そしてその手を元貴の肩へと滑らせる。
「玲司さんの知らない、今の元貴に寄り添えるのは、俺です」
コメント
7件
ひやぁ、、、、、 wkiさん、、、がんばってほしい、、 だんだん独占欲芽生えてきてるの好きだなぁ… いいぞ、もっとやれぇっっ……………
わお!!! 大胆だwkiさん!!! 続きが気になりすぎます…😖
滉斗ぉ、!泣 私はお前の味方だからな…… 負けんなよ!!