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コメント
12件
あ😭😭😭😭
200回ほどいいねしたのでちょうど4桁にしときました🙂
待って、なんか、胸がぐわってなった、ほんとに最高すぎます😭
滉斗の言葉は静かだったが、その中に込められた決意は、まるで岩のように固かった。元貴は、驚いたように目を見開いている。玲司は、その表情から笑みが消え、少し悔しそうに滉斗を睨みつける。
滉斗の言葉に、元貴は胸がいっぱいになっていた。それは、自分でもまだ言葉にできていなかった気持ちを、滉斗が代わりに言ってくれたかのような感覚だった。
元貴は、滉斗に抱き寄せられたまま、彼の服を小さく掴んだ。そして、玲司の方へとゆっくりと顔を向ける。
「…ね、玲司。ちょっと、滉斗と話してくるね」
元貴は、少し気まずそうにそう言うと、不思議そうにしている滉斗の手を引いて、部屋の外へと出た。
玲司は、その様子を悔しそうに眺めることしかできなかった。
廊下を歩き、二人が到着したのは、静かな中庭。太陽の光が優しく降り注ぎ、鳥のさえずりが聞こえる穏やかな空間に、二人の呼吸だけが響く。
「…あのさ、滉斗」
元貴が先に口を開いた。彼の頬は、うっすらと赤く染まっている。元貴は、視線を地面に落とし、恥ずかしそうに口をもごもごさせた。
「昨日のこと、ごめん…」
元貴の言葉に、滉斗は心臓が跳ねるのを感じた。
「玲司が隣にいるから…その、上手く話せなくて…滉斗が部屋を出ていった時も、本当は引き止めたかったんだ…」
元貴は、そう言って、下を向いたまま、ぽつりぽつりと話す。
「…朝、滉斗が来てくれた時、本当に嬉しかった。玲司といても、心の中ではずっと滉斗と話したいって思ってた、」
元貴の素直な言葉に、滉斗の胸は、言いようのない安堵で満たされていく。自分の勘違いじゃなかった。元貴も、自分と同じ気持ちでいてくれたんだ。
「…僕と玲司が話してるの見て…嫌な気持ちに、なっちゃったよね…?」
元貴が、不安そうに滉斗の顔を覗き込む。
滉斗はその顔を見て、堪らなく愛おしい気持ちになった。自分のために、こんなにも悩んで、そしてこんなにも素直に気持ちを伝えてくれる元貴。
「……うん、ごめん。ちょっとだけ、嫌だった」
滉斗はそう言って、元貴の頬に優しく触れた。元貴は、その温かい感触にピクリと肩を震わせる。
「でも…元貴が、俺にこんな風に話してくれるって分かったから、もう、大丈夫」
滉斗は、元貴を安心させるように優しく微笑んだ。元貴は、その言葉にみるみるうちに顔を赤く染め、今度こそ恥ずかしさで俯いてしまった。
滉斗は、心の中で深くため息をついた。玲司に言われた一言で、冷静さを失い、元貴を困らせてしまった。
それは玲司が言ったように、元貴のためなんかじゃない。ただの、自分の嫉妬心だった。
滉斗は、俯いている元貴の手をそっと引いた。そして、中庭の真ん中にあるベンチに二人で腰掛けた。
「あのさ、元貴…」
滉斗はそう言って空を仰いだ。
「昨日の夜、俺、玲司さんに『元貴から離れるべきだ』って言われたんだ」
その言葉に、元貴は、はっと顔を上げた。
「…知ってるよ、全部…聞こえてた」
元貴の声は、静かだった。
「僕が、玲司から離れて、滉斗に話しかけに行けば良かったんだよね…本当にごめん」
元貴はそう言って再び下を向いた。
「…違う。」
滉斗は、元貴の言葉を遮った。
「俺は、玲司さんの言葉に、頭にきて、元貴を困らせようとしたんじゃない。ただ…不安になったんだ」
滉斗は自分の心の内を、正直に話す。
「玲司さんと話してる時の、元貴の顔が、すごく幸せそうで…俺の知らない、元貴の顔だった。その顔を見てたら、なんか…元貴を玲司さんに取られるような気がして…それが嫌だった。」
滉斗は、自分の手を元貴の手にそっと重ねた。
「……俺は、元貴の傍に居たいって思うよ。元貴の強いところも弱いところも、意地悪なところも、可愛いところも…全部俺だけが見てたい」
滉斗の言葉に、元貴は何も言えなかった。ただ、滉斗の言葉を静かに、そして真剣に聞いている。
元貴は震える声で、その言葉の真意を問う。
「……っえ、そ、それ…って」
元貴の瞳は、みるみるうちに潤んでいく。滉斗は、元貴の潤んだ瞳を見て、自分の気持ちをもうこれ以上隠すことはできないと悟った。
滉斗は、元貴の手を優しく、しかし力強く握りしめた。
「うん、……好きだよ、元貴のこと。
玲司さんみたいに、過去を共有することはできないかもしれないけど…元貴のこれからを、俺と一緒に歩いて欲しい」
滉斗の告白に、元貴の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。それは、嬉し涙だった。