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『アナタサマ』

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『アナタサマ』

1 - 『アナタサマ』

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2025年06月23日

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曲パロ(アナタサマ)







赤水




『アナタサマ』


──アナタサマ。

それは、どこから来たのかもわからない。

それは、誰が生んだのかもわからない。

ただひとつ確かなのは、

「世界は、もうアナタサマのものだ」

という現実だけだった。


「なあ、ほとけ。まだ、見たいか?」


りうらが振り返った。背後には、血塗れの街と、倒れた人類たちの屍。

その真ん中に、彼は立っていた。白い煙のような光が、背後から彼を照らしていた。

「……うん。見たい、もっと。終わるとこまで」


ほとけの声は、壊れたラジオみたいに微かだった。

泣いているのか、笑っているのか、もうわからない。

けれど、その目は澄んでいた。限りなく、空っぽで、美しかった。


かつてふたりは、人間だった。

友達だった。

ふざけて、笑って、朝までゲームして、

教室でバカな話をして、

──「普通に生きる」って、それだけでよかったはずだった。


でも、「アナタサマ」が現れた。

それは、願いを叶える存在だった。

人の望み、奥底に潜む欲望──それに“応える”だけの存在。


けれど、人間の欲望は醜くて、終わりがない。

「好きにしていい」

そう言われた瞬間、誰もが“壊した”。

他人を。家族を。自分自身を。


そして「アナタサマ」は、その全てを受け入れた。

反乱者は壊され、反感者は滅ぼされ、拒んだ者は沈黙した。

「人類類類は壊すわ、アナタサマ」

それはプログラムのように、繰り返された。


りうらは、その光景を見て、

ただひとつの結論に達した。


──なら、俺たちが最後まで見届けよう。

壊れるこの世界を、「美しい」と感じるまで。



***


「……あれが、“アナタサマ”だよ」

ほとけが指差した先、

巨大な黒い花のような構造体が、天に咲いていた。

金属のような、肉のような、目のような、脳のような……何か。

無限に広がる触手と、囁き声と、願いを嗅ぎ分ける嗅覚を持つそれ。

人類を「数多(あまた)」に還元する“神”だった。


「ねえ、りうら。もし“アナタサマ”が最初からこの星にいたとしたら、

人間が“間違い”だったのかな?」

「かもな」

りうらは頷いた。

「けど、最後まで見たいって言ったのは、お前だぜ。ほとけ」


──この世界が、どう終わるのか。

──“アナタサマ”が、どこまで壊してくれるのか。


彼らは、残された最後の「観測者」だった。

もはや人類ではなかった。

けれど、人類だった証明として──ふたりはまだ、笑っていられた。


***


アナタサマ、アナタサマ。

真っ逆サマ、あからサマ。


世界は崩壊する。

願望の数だけ、命は潰れる。

悦(えつ)に浸るように、快楽と破壊が渦を巻く。


「嗚呼……きれいだ」

ほとけの目から涙がこぼれる。

それは、感情ではなく、身体の反射反応。

もう感情など残っていない。


りうらは手を差し出す。

ほとけは、その手を取る。

「……このまま、アナタサマに喰われてもいい?」

「おう。全部、喰わせてやろうぜ。躯体も、願望も、全部」


そしてふたりは、アナタサマの中心へと歩いていった。

壊されるために。

願いを叶えるために。


最後の望みはただひとつ。

──「ねえ、好きにして。数多な俺たちを。馬鹿だから、好きにして」


壊れる音がした。

世界が、消えた。


残ったのは、

ただ一輪の徒花──

アナタサマの中に咲いた、美しい“願いの残骸”。

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コメント

4

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なんかかっけえ!(((

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