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Crow of darkness

6 - 第6話 「パーティー」

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2023年06月30日

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1.招待状

都内某所。見下ろす位置にある道路では自動車が激しく行き交っている。

「絶ッッッ対に嫌だ」

「なんでよ!?」

ミスティアの住むタワーマンションの一室。そこでは何やら論争が繰り広げられていた。

「お願い!今回ばかりは任されて!」

両手の平を合わせて懇願するミスティア。しかしソライアは頑なに拒んでいる。

「今回の任務はコンピュータ会社の記念パーティーに潜入して情報を盗むこと。色仕掛けが必要なら私の出番はないはずだ」

ソライアは色仕掛けを使った戦法が大の苦手である。理由は言わずもがな。赤の他人と喋る必要があるから。よく知りもしない相手に笑顔を向けるなんてことはしたくないし、それによって好意を持たれたと相手に勘違いをされることも嫌なのである。

「そこをなんとか!出来ることならなんでもするわ!」

「じゃあこの仕事を引き受けてくれ」

ミスティアがうっと言葉に詰まる。ソライアはため息を吐いた。なんだかんだでもう1時間もずっと話し続けている。

「大体どうして私にこだわる?私じゃなくても代わりに引き受けてくれそうな奴はいるだろ?」

「そりゃあ…あなたのドレス姿が見たいもの…」

ソライアから目を逸らし、とてつもない小声で呟いて口を尖らせるミスティア。ソライアは頭を抱えた。

「ハァ〜〜〜〜〜……お前なぁ…仕事に私情を持ち込んでいいと思ってるのか…?」

「ダメだけど…でもあなた、こういう任務はいっつもそう言ってやってくれないじゃない…たまには私の苦労も分かってよね…?」

普段やらない仕事に挑戦するのもいいことよ、とミスティアはそれらしく説く。ドレスの件を聞いてしまった後では説得力も何もない。

「とにかく、私はそんなのやるつもりないからな」

「見たかったわぁ…ソライアのドレス…」

大人げなく瞳をうるうるとさせるミスティアに、ソライアはついに根負けした。

「じゃあ、これならどうだ?」

2.計画実行

次の日の夜、2人はパーティー会場となっているビルに向かった。末端の構成員が運転する車が到着した頃には、既に招待客が何人か来ていた。

ソライアがドレス姿でミスティアの前に現れた時、それはそれは大変だった。ミスティアからすれば、普段絶対に着ないドレスを着たソライアは目が潰れるほど美しく見えるようだ。「キャー!!♡」と黄色い声をあげて何十枚も写真を撮っていた。

「こちらにお名前をお願いします」

案内係に名簿とペンを渡され、ミスティアがさらさらと名前を書く。

『佐倉 雅』

当たり前だが、これは偽名である。後に続いてソライアも偽名を書いた。

『由良 七彩』

「ありがとうございます、ではどうぞ」

2人は会場へと潜り込んだ。

3.ターゲットは何処に

招待されていた客がほぼ全員集まったようで、会場内が次第にザワついてきた。テレビでよく観るような大手企業のお偉いさんが、皿やグラスを持って談笑している。ミスティアはその光景を見つめながら、自身のコードネームにもなっているマスカットリキュール”ミスティア”を一口飲んだ。

「あら、あなたは飲まなくていいの?」

隣でただ突っ立っているソライアに近づき、小声で囁く。ソライアは渋い顔をして首を横に振った。

「酒は弱いからダメだ。任務に支障が出る」

そういえば、とミスティアは思う。記憶の限りでは、ソライアの亡き兄・バレンシアも何かの都合で酒を飲んだ時、顔を真っ赤にしていた。兄妹揃ってアルコール耐性がないようだ。

「ジャスミン茶であればあっちにあったわよ。それならいいんじゃない?」

「ジャスミン茶…取ってくる」

そう言い、ソライアはミスティアの元を離れていった。

(さて、いつまでもこんなところで時間を使っていられないわ。早くターゲットを見つけないと…)

ターゲットと言っても、今回の目的はこのパーティーを主催している会社の情報収集であるため、言わばその社員であれば誰だっていいのだが…。

ミスティアが持っていたシャンパングラスをテーブルに置き、辺りをキョロキョロ見回していたその時だった。

「お一人ですか?」

「!」

突然誰かに声をかけられ、後ろを振り返ると、そこには黒髪のスーツを着た男が立っていた。

「よければ一緒に飲みません?」

ロシア人である母親譲りの整った顔立ちをしたミスティアは、このように任務中にナンパされることも少なくない。だが、そのナンパを良く思っているかどうかはまた別の話だ。

「どちら様ですか?」

ミスティアは滲み出る不愉快さを隠すように薄い笑みを浮かべた。

「あ、失礼。私はこういう者です」

胸ポケットから取り出した名刺を渡され、まじまじと見る。

「あ…」

名刺にはその男の名前。そして会社の名前とロゴマーク。

男はこのパーティーを主催している会社の社員だった。

ミスティアは「決めた」と心の中で呟き、口の端を歪めてニヤリと笑った。

(今夜のターゲットは、この男─)

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コメント

2

ユーザー

わあー!!!新作楽しみにしてたんよね✨ ミスちゃんのうるうる攻撃採用ありがとう!笑 ほんとに写真フォルダすべてソラちゃんになってそう笑 口の端を歪めて笑うのドストライクすぎる!最高!! 次回も楽しみにしてます♡

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